『笑顔のままで 認知症と長寿社会』を読んだ、安心して暮らせる老後を
「世界でも類のない速さで日本の高齢化が進む。65歳以上の高齢者は2872万人、人口の22.8パーセント。この10年で750万人、6.1ポイント増えた。その足下で静かに、だが確実に増えている病がある。認知症だ。(中略)国の推計だと、患者数は200万人を超え、30年後には385万人に達すると予測されている。それは日本人の3人に1人が高齢者で、9人に1人が認知しようという時代だ」この文章は、信濃毎日新聞取材班『笑顔のままで 認知症と長寿社会』(2010年11月発行、講談社現代文庫)の「プロローグ」の一節だ。
私はこれまで「PPK(ピンピンコロリ)=家族や他人に頼らず、死ぬ時には迷惑をかけず、苦しまず」を願ってきたが、この本を読んで、それがどれだけ難しいことかを改めて実感している。
認知症は「高齢者にありふれた病気」であり、「周囲が受け入れると笑顔が戻る」と、この本は強調している。「認知症であっても、喜びも悲しみも、安心も不安も、つながりも孤独も感じている」とも書かれている。
そして、この本は訴えている。「『誰かの世話になって生きていく』。この当たり前の覚悟を受け入れたとき、長き老いを支え合う仕組みや社会的資源がもっと必要だ、ということにも気づく。(中略)私たちはまだ、家族や友人、地域の人たち、施設といった周囲の力を借りて生きることの価値を、その術を学んでない。老いを否定しない世の中へ、かじを切ろう--」と。
この本を読んで、お世話になっている竜操サブセンターのSさんが「お世話され上手になろう」、「お世話やきになろう」と常々語られていることを思い出した。そして、私がお役をいただている「岡山医療生協」が「高齢者に優しいまちづくり」を掲げて努力を重ねていることも、とても意義あることと改めて実感した。
さて、最後にこの本は、「認知症対応社会に向けた8つの提言」を提起している。①隠さずに済む社会へ踏み出そう、②断る施設をゼロに、③要介護認定を大幅に見直せ、④情報提供や支援の地域拠点を、⑤介護職に教育と支援を、⑥かかりつけ医にもっと対応力を、⑦社会とつながり続ける環境を整えよう、⑧介護の公費負担引き上げの議論を、の8項目だ。
私は文字通り「笑顔のままで暮らせる長寿社会」の実現は、政治の責任であると考える。政治の力を発揮して、国民に豊かで笑顔で安心して暮らせる老後を保障して欲しいと願う。そして同時に、この本を読んで、私たちも「長き老いを支え合うまちづくり」へ、一人一人が役割を果たしていき、「笑顔のままで」暮らせる地域を作りたいものと心から思った。