中島諒人講演「劇場という名の社会装置 ~演劇が地域資源に資する~」
NPO法人アートファームが、創立20周年プレ事業として連続講演シリーズ「舞台芸術 -地域との対話」を開催している。とても魅力的な講師陣であり、私は全五回の通し券を購入している。
そして、昨日はその第4回目であり、「鳥の劇場」を主宰する中島諒人の「劇場という名の社会装置 ~演劇が地域資源に資する~」と題した講演があり聞きに行った。この連続講演シリーズでは、前回・第3回は欠席したが、これまでに通算では3/4は参加しており、横着な私にしては真面目に参加していると言っていいだろう。
ところで講師の中島諒人さんは演出家であり、2006年より「鳥の劇場」を主宰し、「鳥取市鹿野町で廃校になった小学校と幼稚園をリノベーションし、意欲的な演劇活動を全国に向けて発信」している。そして、今年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している。
実は私は「鳥の劇場」を知らなかったのだが、津山在住のご縁があった方のブログで、「鳥の演劇祭」や「鳥の劇場」を観に行ったことを報告されていたので私も興味を持っていて、もっと詳しく知りたいと考えていた。
今日は、その中島さんが主宰している「鳥の劇場」の4年間の歩みを、豊富な写真を使って、とても具体的にお話しいただいた。そして、「劇場」をただ単に演劇好きの人たちのみでなく、芸術集団「鳥の劇場」のものだけでなくすために、「創る、招く、いっしょにやる、試みる、考える」の5つのプログラムを展開したその歩みを語りながら、とても大切なメッセージを届けていただいた。ワクワクしながら聞いた。
そしてお話しの中では、「芸術に対する投資についての社会的な議論」について、芸術の公共性が理解されているとする外国の例も引きながら、日本の場合には人間の社会にとって、すぐに採算が議論になり、何が大切なのかという成熟した議論がなされていないのを残念がられていた。
また、鳥取にある「菜の花診療所」の徳永進医師とのトークで、ターミナルケア・医療の役割と演劇の役割の共通点が語られたことなど、とても興味深く聞かせてもらった。
そして知の遺産を保存している図書館や行政などの資料を保存している公文書館、それらに比して劇場で何が貢献できるのかを考えると、文字に出来ない人間の感情、そう怒り、感動、喜び等がストック、蓄積できるのではと語られた。なるほど、まさに生の人間と向かい合っているのが、劇場、舞台芸術であり、それが私が惹かれ続けている要員なのだと理解できた。
そんなお話しを聞いていて、今年で三回目となっている「鳥の演劇祭」(この内容も昨日は写真で詳しく紹介していただいた、今年の場合は9月3日~26日まで開催)に、来年こそは行ってみたいという気になった。
それにしても、こうした魅力的な企画で学び・楽しめるのは、「アートファーム」を主宰する大森誠一さんが岡山にいればこそだ。これまで長く素敵な企画で楽しませてもらってきた。いくら感謝しても尽きない。その大森さんの次なる企画は、12月17日の竹下景子主演の劇団燐光群の舞台だ。これまた、楽しみにしている。