2022年12月12日、中国は「アメリカによる半導体などの対中輸出規制が不当だ」としてWTO(世界貿易機関)に提訴した。その後、15日には提訴が受理されて手続きを介したいうことだ。今回はこの件について数量政策学者の高橋洋一氏の解説を基調に記してゆく。
日本のマスコミはアメリカ嫌いで中国大好きである。その報道にも角度が付けられて(*1)いる。
「中国がWTOに提訴した」として「中国に意地悪するアメリカはけしからん」という立場で報道しているのだ。(蔑笑)
そして、マスコミの報道内容にも誤りがある。
そもそも「半導体の輸出規制」ではない。
「半導体製造装置の輸出規制」である。
ここをきちんと伝えていない点でマスコミ報道には嘘がある、と言えよう。「半導体」と「半導体製造装置」では全く違うからだ。
それで、この製造装置を輸出してもらえないから、それで中国は怒っているのだ。
なぜ怒っているのか?
最新鋭の半導体製造装置が無いと、中国がアメリカや日本を攻撃する為の最新兵器が作れないからである。
お分かりと思うが、これは貿易問題ではない。
「安全保障」の問題なのである。
アメリカが「中国がアメリカを攻撃する為の兵器作り」に協力する訳がないだろう。中国のみっともなさといったらない。出川哲朗から「おまえはバカか?」と言われるくらい自明の理だ。
中国が欲しがる最新技術・ハイテク技術は全て中国の軍事目的に使われる。これは100%確実なことだ。狂気の国家主席様は中華思想の実現(世界支配)、世界を支配下に置く覇権の拡大に余念がない。その目的に向けて軍事力を強化拡大することにしか関心がないのである。これは厳然たる事実だ。
話を戻すが、中国が欲しがる半導体製造装置のメーカーは全て自由主義陣営の国家にある。しかも最新鋭の半導体製造装置メーカーはたった5社であり、これでシェアの8割を占めているのだ。その内訳は下記の通りである。
**********
半導体製造装置業界の市場シェア(2021年)
1位:アプライドマテリアルズ(アメリカ) 22.5%
2位:ASML(オランダ) 20.5%
3位:東京エレクトロン(日本) 17.0%
4位:ラムリサーチ(アメリカ) 14.2%
5位:KLA(アメリカ) 6.7%
**********
ご覧の通り、アメリカ・日本・オランダのメーカーだけで占められている。
半導体製造装置のキモはどれだけ回路の線幅細く出来るかにかかっている。線幅が細い方が回路を小型化でき、消費電力は少なくて済み、高速動作が可能になるのだ。中国には今回のような最先端の半導体製造装置を作るスキルは無いのである。(*2)
この回路の線幅の細さは、もはや人間の目に見えないレベルの闘いである。集積回路が誕生した頃は回路の最小線幅は10μm(ミクロン=1/100mm)程度だったが、今では14nm(ナノメーター=10のマイナス9乗メートル (m) = 10億分の1メートル)レベルが主流で、更に細くする開発が行われているのである。
ここまで微細な領域になると普通の製造方法では到底製作不可能だ。
なら、どうするのか?
光学技術・写真技術の応用で作るのである。従って、本来この分野は光学技術に優れる日本メーカーは元来有利である筈だ。これは中国には無いハイテク技術である、だから中国は何としても欲しいのだ。盗んででも手に入れたい技術なのである。アメリカや日本を攻撃する兵器開発に必要だからだ。
このような先端技術を持つメーカーに対して、アメリカはそれを中国に輸出する事を規制している。中国はこのアメリカの輸出規制が嫌だということでWTOに提訴したのだ。
「中国がWTOに提訴した」と言うと日本の左派系マスメディアは大喜びである。「中国万歳!アメリカけしからん!」という姿勢での報道になる。マスコミが左翼の情報工作機関であることがよく分かる実態だ。
だが、WTOとはそもそもどんな国際機関なのだろうか?
多くの国が加盟しており、貿易のルールもここで処理される、そんな組織である。(*3)
WTOの大きな原則としては
「安全保障に関わる話はしない」
ということだ。
これは当然のことである。WTOは貿易に関する問題だけを扱うのであって、安全保障に関わる話はそれぞれの国が独自に対応することだからだ。
アメリカ政府の言い分はこうだ。
「先端的な半導体の製造装置を輸出したら、それは中国に流れるであろう事は確実である。半導体の技術は軍事技術の塊でもある。従って、それを中国には絶対に流してはいけない」・・・その意味で輸出規制をしているのである。
中国が提訴して手続きが開始されようと、「WTOは安全保障に関わる話を議論する場じゃない」という大原則をアメリカは主張するであろうし、既に言っているのだ。
もう一つある。
WTOには紛争処理委員会がある。しかし、ここで審議される内容は、いつも中国よりで、あまりにも偏向しているのである。なので、先進国では紛争処理の機関の委員を3年前くらいから出していないのが実態だ。下手に委員を出すと変な圧力がかかったりして妙ちきりんな裁定の結果ばかりが出てくるハメになる。
紛争処理は2段階で行われる。日本で言えば地裁と最高裁のようなものだ。先進国では上のレベルには人を出さないのが普通になっている事は前述した通りだ。
その意味ではWTO提訴しても、提訴を受けて普通に処理する部署は無いのである。それでも中国は提訴しているしWTOで手続きが開始された。或いは、中国はWTO自体を乗っ取る意思があるのかもしれない。その可能性はある。
WTOは多くの国が加盟しており、一カ国につき一票の投票権がある。だから中国の息がかかった人を多くすれば…ということだ。
仮に、だ。
中国がWTOを乗っ取ってしまえば、そんな組織に公平なジャッジは出来る筈もない。先進国は皆脱退して別の組織を作る事になるだろう。現在でもWTOはきちんと機能していないことは明らかであり、先進諸国は懸念を抱いているのである。
つまり、WTOでは安全保障の話も議論できないのだし、紛争処理機関の部署にも人が居ないので紛争処理も満足に対応できない状況なのである。
これでお分かりと思うが、マスコミの「中国がWTO提訴」記事は上述の内容を踏まえてお読みになった方がよろしいのである。
日本のマスメディアは親中故に、このような核心部分を絶対に報道しないで、「中国がWTO提訴した」「これに応じないアメリカけしからん」というこの角度の報道しかしないのだ。
上述のように、実態としては貿易云々ではなく安全保障の話なのである
真実はこのような事なので、中国に有利になるような判決が出される可能性は無いと言って過言ではない。世界各国は逆にアメリカの先端半導体製造装置輸出規制を支持する方向になっている事も重要なポイントだ。
上の方で掲げたシェアの資料でオランダと日本の企業がカギを握っている事がお分かりであろう。オランダ&日本のメーカーだけでシェアは4割近いのである。アメリカはこの輸出規制の話をオランダと日本にも持ちかけてきており、当然ながらオランダと日本はアメリカと歩調を合わせる。従って、中国は先端的な半導体は作れない→最新鋭兵器の製造はできない、ということになるのだ。
ちなみに、ここまで韓国や台湾のメーカーの話が出ていない事に気付かれた方もおられると思う。韓国や台湾は先端的な半導体製造装置を使って半導体を作る立場なので、今回の件では直接の当事者ではない。両国とも先端技術に優れたメーカーはあるが、流石に製造装置のところまでは出来ていないようだ。
こうした先端技術分野はアメリカやオランダなどとの協力体制が重要であり、中国のWTO提訴だけ見ていたのでは真実は何も見えないのである。
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(*1)
「角度をつける」:親中極左の広報機関としておなじみの朝日新聞社、その編集部で使われる用語である。左翼流の偏向処理を施す、という意味だ。新聞などのマスメディアは本来事実をそのまま客観的に報道すべき筈である。しかし朝日新聞は左翼の情報工作機関なので、どんな記事も左翼のプロパガンダになっていなければ気が済まないのである。実際に朝日新聞社員は「事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」と証言している。これが「角度をつける」ということなのであり、事実を捻じ曲げて(角度をつけて)プロパガンダにしてから記事にする…そういうことなのである。従って、何の問題もない事案も、あたかも大問題であるかのように書いて大騒ぎする癖が朝日をはじめとするマスメディアにはある。その典型は無実の安倍晋三元総理をモリカケなどであたかも犯罪者であるかのように仕立て上げ、ついに暗殺されるところまで追い込んでしまったところにこの「角度をつける」という偏向姿勢の根深い病理が見られるのである。
(*2)
厳密に説明すると、回路の線幅がもう少し太い物であれば輸出は今でもOKである。先端技術ではないからだ。
(*3)
WTOは、昔はGATT(ガット:General Agreement on Tariffs and Trade)「関税および貿易に関する一般協定」と呼ばれる組織だった。1947年にスタートしている。これが、1986年-94年に行われたGATTの第8回目の多角的貿易交渉(ウルグアイラウンド)に於いて交渉分野が拡大したことで、GATTの枠内に収まらない新しい分野におけるルール策定等の必要性が高まってきたことから、1995年発効のWTO協定に基づき設立された国際機関…それがWTOなのである。
☆
日本のマスコミはアメリカ嫌いで中国大好きである。その報道にも角度が付けられて(*1)いる。
「中国がWTOに提訴した」として「中国に意地悪するアメリカはけしからん」という立場で報道しているのだ。(蔑笑)
そして、マスコミの報道内容にも誤りがある。
そもそも「半導体の輸出規制」ではない。
「半導体製造装置の輸出規制」である。
ここをきちんと伝えていない点でマスコミ報道には嘘がある、と言えよう。「半導体」と「半導体製造装置」では全く違うからだ。
それで、この製造装置を輸出してもらえないから、それで中国は怒っているのだ。
なぜ怒っているのか?
最新鋭の半導体製造装置が無いと、中国がアメリカや日本を攻撃する為の最新兵器が作れないからである。
お分かりと思うが、これは貿易問題ではない。
「安全保障」の問題なのである。
アメリカが「中国がアメリカを攻撃する為の兵器作り」に協力する訳がないだろう。中国のみっともなさといったらない。出川哲朗から「おまえはバカか?」と言われるくらい自明の理だ。
中国が欲しがる最新技術・ハイテク技術は全て中国の軍事目的に使われる。これは100%確実なことだ。狂気の国家主席様は中華思想の実現(世界支配)、世界を支配下に置く覇権の拡大に余念がない。その目的に向けて軍事力を強化拡大することにしか関心がないのである。これは厳然たる事実だ。
話を戻すが、中国が欲しがる半導体製造装置のメーカーは全て自由主義陣営の国家にある。しかも最新鋭の半導体製造装置メーカーはたった5社であり、これでシェアの8割を占めているのだ。その内訳は下記の通りである。
**********
半導体製造装置業界の市場シェア(2021年)
1位:アプライドマテリアルズ(アメリカ) 22.5%
2位:ASML(オランダ) 20.5%
3位:東京エレクトロン(日本) 17.0%
4位:ラムリサーチ(アメリカ) 14.2%
5位:KLA(アメリカ) 6.7%
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ご覧の通り、アメリカ・日本・オランダのメーカーだけで占められている。
半導体製造装置のキモはどれだけ回路の線幅細く出来るかにかかっている。線幅が細い方が回路を小型化でき、消費電力は少なくて済み、高速動作が可能になるのだ。中国には今回のような最先端の半導体製造装置を作るスキルは無いのである。(*2)
この回路の線幅の細さは、もはや人間の目に見えないレベルの闘いである。集積回路が誕生した頃は回路の最小線幅は10μm(ミクロン=1/100mm)程度だったが、今では14nm(ナノメーター=10のマイナス9乗メートル (m) = 10億分の1メートル)レベルが主流で、更に細くする開発が行われているのである。
ここまで微細な領域になると普通の製造方法では到底製作不可能だ。
なら、どうするのか?
光学技術・写真技術の応用で作るのである。従って、本来この分野は光学技術に優れる日本メーカーは元来有利である筈だ。これは中国には無いハイテク技術である、だから中国は何としても欲しいのだ。盗んででも手に入れたい技術なのである。アメリカや日本を攻撃する兵器開発に必要だからだ。
このような先端技術を持つメーカーに対して、アメリカはそれを中国に輸出する事を規制している。中国はこのアメリカの輸出規制が嫌だということでWTOに提訴したのだ。
「中国がWTOに提訴した」と言うと日本の左派系マスメディアは大喜びである。「中国万歳!アメリカけしからん!」という姿勢での報道になる。マスコミが左翼の情報工作機関であることがよく分かる実態だ。
だが、WTOとはそもそもどんな国際機関なのだろうか?
多くの国が加盟しており、貿易のルールもここで処理される、そんな組織である。(*3)
WTOの大きな原則としては
「安全保障に関わる話はしない」
ということだ。
これは当然のことである。WTOは貿易に関する問題だけを扱うのであって、安全保障に関わる話はそれぞれの国が独自に対応することだからだ。
アメリカ政府の言い分はこうだ。
「先端的な半導体の製造装置を輸出したら、それは中国に流れるであろう事は確実である。半導体の技術は軍事技術の塊でもある。従って、それを中国には絶対に流してはいけない」・・・その意味で輸出規制をしているのである。
中国が提訴して手続きが開始されようと、「WTOは安全保障に関わる話を議論する場じゃない」という大原則をアメリカは主張するであろうし、既に言っているのだ。
もう一つある。
WTOには紛争処理委員会がある。しかし、ここで審議される内容は、いつも中国よりで、あまりにも偏向しているのである。なので、先進国では紛争処理の機関の委員を3年前くらいから出していないのが実態だ。下手に委員を出すと変な圧力がかかったりして妙ちきりんな裁定の結果ばかりが出てくるハメになる。
紛争処理は2段階で行われる。日本で言えば地裁と最高裁のようなものだ。先進国では上のレベルには人を出さないのが普通になっている事は前述した通りだ。
その意味ではWTO提訴しても、提訴を受けて普通に処理する部署は無いのである。それでも中国は提訴しているしWTOで手続きが開始された。或いは、中国はWTO自体を乗っ取る意思があるのかもしれない。その可能性はある。
WTOは多くの国が加盟しており、一カ国につき一票の投票権がある。だから中国の息がかかった人を多くすれば…ということだ。
仮に、だ。
中国がWTOを乗っ取ってしまえば、そんな組織に公平なジャッジは出来る筈もない。先進国は皆脱退して別の組織を作る事になるだろう。現在でもWTOはきちんと機能していないことは明らかであり、先進諸国は懸念を抱いているのである。
つまり、WTOでは安全保障の話も議論できないのだし、紛争処理機関の部署にも人が居ないので紛争処理も満足に対応できない状況なのである。
これでお分かりと思うが、マスコミの「中国がWTO提訴」記事は上述の内容を踏まえてお読みになった方がよろしいのである。
日本のマスメディアは親中故に、このような核心部分を絶対に報道しないで、「中国がWTO提訴した」「これに応じないアメリカけしからん」というこの角度の報道しかしないのだ。
上述のように、実態としては貿易云々ではなく安全保障の話なのである
真実はこのような事なので、中国に有利になるような判決が出される可能性は無いと言って過言ではない。世界各国は逆にアメリカの先端半導体製造装置輸出規制を支持する方向になっている事も重要なポイントだ。
上の方で掲げたシェアの資料でオランダと日本の企業がカギを握っている事がお分かりであろう。オランダ&日本のメーカーだけでシェアは4割近いのである。アメリカはこの輸出規制の話をオランダと日本にも持ちかけてきており、当然ながらオランダと日本はアメリカと歩調を合わせる。従って、中国は先端的な半導体は作れない→最新鋭兵器の製造はできない、ということになるのだ。
ちなみに、ここまで韓国や台湾のメーカーの話が出ていない事に気付かれた方もおられると思う。韓国や台湾は先端的な半導体製造装置を使って半導体を作る立場なので、今回の件では直接の当事者ではない。両国とも先端技術に優れたメーカーはあるが、流石に製造装置のところまでは出来ていないようだ。
こうした先端技術分野はアメリカやオランダなどとの協力体制が重要であり、中国のWTO提訴だけ見ていたのでは真実は何も見えないのである。
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(*1)
「角度をつける」:親中極左の広報機関としておなじみの朝日新聞社、その編集部で使われる用語である。左翼流の偏向処理を施す、という意味だ。新聞などのマスメディアは本来事実をそのまま客観的に報道すべき筈である。しかし朝日新聞は左翼の情報工作機関なので、どんな記事も左翼のプロパガンダになっていなければ気が済まないのである。実際に朝日新聞社員は「事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」と証言している。これが「角度をつける」ということなのであり、事実を捻じ曲げて(角度をつけて)プロパガンダにしてから記事にする…そういうことなのである。従って、何の問題もない事案も、あたかも大問題であるかのように書いて大騒ぎする癖が朝日をはじめとするマスメディアにはある。その典型は無実の安倍晋三元総理をモリカケなどであたかも犯罪者であるかのように仕立て上げ、ついに暗殺されるところまで追い込んでしまったところにこの「角度をつける」という偏向姿勢の根深い病理が見られるのである。
(*2)
厳密に説明すると、回路の線幅がもう少し太い物であれば輸出は今でもOKである。先端技術ではないからだ。
(*3)
WTOは、昔はGATT(ガット:General Agreement on Tariffs and Trade)「関税および貿易に関する一般協定」と呼ばれる組織だった。1947年にスタートしている。これが、1986年-94年に行われたGATTの第8回目の多角的貿易交渉(ウルグアイラウンド)に於いて交渉分野が拡大したことで、GATTの枠内に収まらない新しい分野におけるルール策定等の必要性が高まってきたことから、1995年発効のWTO協定に基づき設立された国際機関…それがWTOなのである。
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