Altered Notes

Something New.

表現者たちの発散と解放

2022-12-22 15:15:55 | 社会・政治
2022年12月11日と18日の深夜に放送された「そこ曲がったら、櫻坂?」(テレビ東京)に於いて、 「櫻坂46ヒット番付」と題してグループ内で流行った事を番付形式で発表する、という企画があった。

あくまでグループの内々で流行した遊びなどであり、メンバー自身が楽しむだけのものである。だが、その内容は彼女たちのようないわゆる芸能人、或いはステージでパフォーマンス(表現)する生業の人々にとっては必然的に必要となるものであることが分かったので、ある意味で興味深かった。

その内容は、例えば下記のようなものである。

・静かな場所で突然大声を出す
・特定メンバーの喋り方を模倣する
・MOMIAGEゲーム(日本語の単語を英語のように発音し、何を言っているか当てる)
・先輩メンバーに「キモい」と言ってもらって大喜びする
・バレバレかくれんぼ(全員すぐそばに居てじっとしているのに、鬼は一生懸命探す演技をする)
・どんな事象もポジティブに変換して受け止める
・ハム語(ハム太郎のように「~なのだ」と付けて会話する)
・求愛ダンス(目が合ったメンバー同士が互いに求愛のダンスを即興で踊る)

…といったものである。

一見、何をやっとるんだ…な内容だが、内輪でやっているものなので他愛ないものが多く、シュールで意味不明なものもあるが、例えばこんなことを真剣にやって遊ぶのである。

何の為に?

ここが重要だ。つまり、彼女たちのようなステージで全力で表現行為(パフォーマンス)を披露する立場の人たちは、ライブ直後などは精神が高揚したままであり、若さもあって、余剰エネルギーの発散場所が必要だ、ということ。もう一つは、どうしても蓄積される各種のストレスを発散する機会が必要であること。…こうした必然性があって自然と上述したような遊びが生まれてくるのである。「大声を出す」などは最も端的な形であろう。メンバーはそうした遊びを全力でやりきることで魂の中に蓄積された一種の澱を解消し、自分の魂を解放するのである。魂とは心の無意識領域を意味している。言葉にすると大袈裟のように聞こえるかもしれないが、実際にそういうことなのであり、彼女たちの行動には普遍妥当性が感じられのである。

こうした傾向は表現活動に携わる人々の間で古くから存在しており、例えばジャズミュージシャンなども羽目を外したような遊びに興ずる事がある。その昔、山下洋輔トリオが福岡でのコンサートを終えて、ホテルの部屋でデタラメ歌舞伎を舞うなど、どんちゃん騒ぎをしていた話は有名だ。余談だが、この時に当時は無名だった森田一義氏(タモリ)がその部屋に突然乱入したことで、山下洋輔氏がタモリを発見するきっかけになった事も今ではよく知られている。

話を戻す。

恐らくミュージシャン、役者、ダンサー、アイドル等々、ステージで全力を捧げて表現活動をする人々には共通して、このような魂の浄化と言うか、自分を標準の状態に保つ為にストレス等の発散が必要とされるのである。その手段・方法が大きな意味に於いて、今と昔で「同じ」であり、普遍妥当性のあるものになっていることに関心を持った次第である。