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りゅうちぇる タトゥー問題の構造

2018-08-27 00:37:02 | 社会・政治
タレントのりゅうちぇるが子供の名前のタトゥーを入れた事をSNS上で発表したところ、一般社会から激しい批判を受けた。りゅうちぇるはその批判を「偏見」として捉えた上で批判される事自体に喫驚した。彼はなぜ批判されるのか理解できなかったのだし、世間はタトゥーを入れる事自体を否定的に見ていたのだ。

ここには大きく分けて2つの問題がある。

最初の問題は「異なる文化圏」という価値観に関する問題である。
りゅうちぇる自身は親が普通にタトゥーを入れていた家庭で育ったことでタトゥーへの抵抗感など微塵も無い文化圏で育っている。一方で彼を批判している一般社会はタトゥー(入れ墨)がそもそも極道(やくざ)の世界で使われることが多く否定的な感情を持つ人が多い、という認識を持つ文化圏からものを言っているのである。背景となる文化圏が大きく異なる状態のまま同じ土俵の上で議論しても埒が明かないのは当然である。双方の間には天と地ほどに乖離した相違が存在しているのである。タトゥーの是非を議論するならば、まず双方が背にしている「文化圏の違い」をお互いに認識するところから始めなければならない。

次の問題は「SNSへの姿勢と覚悟」である。
この問題についてはHKT48の指原莉乃が良いコメントをしている。指原はまず「ファッション的なタトゥーが最近増えているのが分かるので、入れるのは別にいいと思うんです。(SNSに)載せるのもいいんです」とした上で、「でも、それって批判の声があるのもあたり前、あるものだと思っていますし。その批判の声に対して(りゅうちぇるが)『こんなに偏見がある社会ってどうなんだろう』と言っていることが、気になりました」とりゅうちぇる自身の批判の受け取り方に疑問を呈した。さらに続けて「それって当たり前じゃない?って。見せるんだったら、そういう意見も受け入れて(タトゥーを)入れるぐらいの覚悟がないと。タレントさんだし、見られる人だし、応援される人だから、それは言わなくても良かったんじゃないかなと思います」と述べている。
(2018年8月26日 CX「ワイドナショー」での発言)

一般社会には多様な価値観を持つ人々が存在するので、SNSで何かを発信するということは、それに対して否定的な価値観を持つ人の反応をも想定していなければならない、ということなのだ。恐らくりゅうちぇるは育った環境から今回のような批判が来るとは想定していなかったのであろうが、それはいささか彼の勉強不足であると共に世間を知らなすぎた、という事なのだろう。


現代はいわゆる共通の一般常識(コモンセンス)というものが成立しにくい世の中になっている。異なる価値観は数多存在し、パラダイムの相違と言えるほどの考え方の乖離はそこかしこに見られ、それらが社会における様々な混乱を生み出している。いわば異なる大小様々の文化圏があちこちに存在している訳で、一つの文化圏では常識的な事柄が別の文化圏ではとんでもない非常識として捉えられるのは現代では日常茶飯事である。

このような社会状況に於いては情報発信についてもその表現方法やプレゼンテーションの仕方を慎重に整える必要がある。タトゥーのように社会的に否定的な捉え方をされる可能性が高い事についてはなおさら慎重に行う必要がある。

さらに言うなら、一般社会がこのように異なる文化圏が混在している実状をもっともっと意識し自覚しなければならない。多くの一般人は価値観は一つだけであり自分の価値観が唯一正しいものだと思いこんで生活しているからである。一般社会がもっと「客観的視点」を持って価値観の相対化ができるようになることが重要であり、それが価値観の相違や文化圏の相違に端を発する混乱を回避する為の必須条件と言えるのだ。



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<2023年7月12日:追記>
タレントの「ryuchell(りゅうちぇる)」氏は7月12日午後に亡くなられた事が判明した。現場の状況から自殺と見られている。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。





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