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AKB48襲撃事件:背景にある社会要因

2014-05-27 22:32:55 | 社会・政治
5月25日の夕方、岩手県の握手会会場で発生したAKB48襲撃事件。
取り調べで、犯人は襲撃対象について
「誰でもよかった」
と述べている。

「誰でもよかった」という言葉はこの24歳の男性独自の言葉ではない。これまで過去に数々の無差別殺傷事件が発生しているが、そこで犯行に及んだ人たちがほぼ必ず言っている台詞である。(*1)(*2)


過去に発生した無差別殺傷事件を調べてみると、実はある連関性が見えてくる。
それについて説明する。

1980年代(1970年代の終り頃)からこうした事件が起き始めている。
ところが景気が良くなる80年代から90年代の後半までは発生がぱったり止んでいるのだ。
そして、また金融恐慌が起きた1997年以降に再びどっと増えてくる。さらに激増するのが2008年、つまりリーマン・ショックの時である。
このように無差別殺傷事件の発生はその時代の経済動向と非常にパラレルな関係にあることがわかる。

経済や社会全体が冷え込むと、末端で働いていて報われない状態にある人はとりわけそういう影響を受けやすい。
先行きの不透明感もあるし、雇用が不安定であったりもする。そういう諸々の影響を受けているであろうことがうっすら見えてくるのである。

例えば2008年6月に発生した秋葉原の無差別殺傷事件。
この事件の加藤智大被告は多くの言葉を残している人物である。本人の書き込みが多く、手がかりが多いことが特徴である。

彼が書き込んだ言葉の中に
「人と親しくなると怨恨で殺す
 孤立が深まれば無差別に殺す」

という言葉がある。
恐らくこの、無差別に「誰でもいいから殺したい」と発言した人はみんな孤立をしていた人たちである。本人が具体的にどのような状況に置かれていたかは千差万別かもしれないが、やはり人との関わりが充分に持てなかった、ということが見て取れるのである。
その時に考えなければいけないのは、”雇用環境が不安定”というのは、やはり社会を非常に流動化させてしまう、ということ。


ここで関連する政治の動きを紹介しておく。
昨年の7月から政府がやっている規制改革会議というものがある。政府の諮問機関である雇用ワーキンググループというところで、そこの委員になっている東大のセンセイが
「これからの日本社会は9割を非正規雇用にしよう。1割だけ正社員で、後は全部非正規にして全部流動化していけばいい」
という趣旨の発言をしている。
それはすなわち、不安定な気持ちを持った人たちを大量生産する社会となるであろう。

こうした”ただ単に企業にとって使い勝手の良い人材であればそれでよい”とするドライな考え方だけではなくて、そうすることによって一人一人の個々の人間にどのような不安をもたらすのか、どんな孤立をもたらすのか、そして時にどんな捨鉢な行動をとらせるのか、といったことを上の人間がきちんと考えなければいけない。


今回の事件を犯人の個人的な問題として片付けるのは間違いである。




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(*1)
ちなみに犯人が言う「誰でもよかった」は厳密には嘘である。
犯人は必ず”自分より弱そうな人間しか狙わない”からである。

(*2)
無差別殺傷事件を引き起こす人間が必ずこの台詞を発する事は心理学的に意味のあることだと考えられる。つまり、こうしたアクションを起こす人間の無意識内に普遍的に存在する心的要素が関係しているのだ。問題の根っこの部分に「個人」を超えた普遍的な要因を考えなくてはならない、ということだ。





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