伊豆高原シニア・ライフ日記

「老い」を受容しながら自然の恵みに感謝しつつ「残躯天所許不楽復如何」の心境で綴る80老の身辺雑記 

老夫婦の変身物語「ピレモンとバキウス」

2018年03月20日 | 雑文

3月20日(火)

終日雨。

書斎に隣接する納戸で古い書類の廃棄作業中、黄ばんだペーパーが目にとまった。ギリシャ・ローマの神話「変身物語」の「ピレモンとバキウス」に関する古い記事である。

古代ローマの詩人オウィディウスが記したという「変身物語」。

既に「高齢化社会」を意識しはじめていた頃だとすれば、このペーパーは60歳代の初め頃のものだったか。


貧しい旅人に身をやつしたジュピターとマーキュリーの2神がプリューギアの町で一夜の宿を乞うたところ町の各戸は冷たくこれを拒んだが、町はずれの陋屋に住む老夫婦ピレモンとバキウスだけが二人を暖かく迎い入れ、心を込めた接待をしてくれた。(接待の様子が詳細に語られている。)

(中略)

やがて、2神は二人の前に姿を現し「敬虔な老夫婦よ。二人の望みをかなえてやるからなんなりと申せ」と言った。夫ピレモンと妻バキウスは少し相談してから「夫婦二人してここまで生きてきました。死ぬときには二人同時に死にたい。私が妻の墓をみたり、妻が私を葬うことがないようしていただきた」と答えた。

やがてさらに年月を経て、老い衰えた二人が階段の前で過去を語り合っていると二人の身体から芽がでて葉が茂りはじめるのに気付いた。最後の時が来たことを悟った二人は、口が動く限り感謝と別れの言葉を交わし、ものいわぬ木へと次第に変身して、ピレモンは樫の木にバキウスは菩提樹となった。


仲睦まじい老夫婦が持つ普遍的な願望、それは「死ぬときは二人同時に」。老い衰えたとき二人の身体が時を同じくして樹に変身するというこの話、なにか心にじーんと沁みる話だ。

だが、待てよ。もの言わぬにせよ互いにその息遣いを感じあえる樹に変身したとしてもこの二人はその後どうなったか?大木もやがていつか枯れ倒れる。地に伏し朽ち果て土に返って地中で混じりあうのか……。

 

今年5月に子や孫が東京で結婚60周年「ダイヤモンド婚」を祝ってくれる。我々夫婦もこの変身神話にあやかりたいもの。

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1 コメント

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Unknown (エイジング)
2018-03-22 18:39:39
綴られた文に込められた思いが、深く心に迫ってきました。
そしてお幸せなこと!と思いました…
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