「ゼロの呪い」またの名は「テクムセの呪い」
ケネディの死は、それ自体アメリカ合衆国史に特筆される大きな悲劇であるが、それはまた、歴代アメリカ合衆国大統領にかけられた恐ろしい「呪い」の連鎖につながっていると考える人もいる。
今の時代に「呪い」など非科学的な迷信だと笑い捨てるのが常識だろうが、歴史に現れた不気味な大統領の悲運の死をつぶさに見てくると、そこに特別な意味があるような気にもなってくる。
それは「ゼロ年の呪い」またの名を「テクムセの呪い」といわれている。
「ゼロ年の呪い」とは、ゼロの付く年に当選を果たした大統領はすべて在職中に暗殺などで死去し、4年の在職期間を全うできないというのである。
アメリカの大統領選挙はご存じのとおり4年に1回行われる。だからゼロの付く選挙年は20年に一回まわってくる。
ケネディの当選も1960年だが、ケネディはもとより、彼を含めてゼロ年当選の歴代アメリカ大統領はすべて在職中に死亡しているのである。これは単なる偶然だろうかと思う人がおってもおかしくない。「呪い」の存在を一概には退けられないところである。
話は、最初に暗殺された16代大統領リンカーより20年前の9代大統領ハリソンから始まっている。
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ウイリアム・ハリソンは1840年の選挙で大統領に当選したが、1841年3月、就任わずか1月にして肺炎で死去している。
「ゼロ年の呪い」または「テクムセの呪い」の始まりである。
インディアナ準州長官だったウイリアム・ハリソンは、1811年、軍を率いてインディアンの領土とされた土地を次々と侵略していき、多くのインディアンを殺害した。
これに立ち向かったインディアン、ショーニー族の酋長テクムセは呪術にたけた預言者としても知られていたが、勝敗を決する「テムズの戦い」でハリソン軍に敗れ、戦闘中に殺された。
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酋長テクムセは死ぬ間際に次の呪いの言葉を残したという。
「敵将ハリソンは次期大統領になるが就任中に死ぬ。その後の20年ごとに選ばれる偉大な白人の酋長も死ぬ」と。
その言葉どおりにハリソンは死んだが、それから20年経ち1860年に16代大統領のリンカーンは当選したが、その2期目の1865年にフォード劇場内で南部独立主義者だった俳優ジョン・ウイルクス・ブースの拳銃により射殺された。
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次の20年が経って1880年に選挙に当選した20代大統領ジェイムス・ガーフィールドは、同じ年に政治的論功行賞を巡って対立した弁護士ギトウの拳銃で銃撃されて11週間後に死亡している。
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25代大統領ウイリアム・マッキンリーは、1900年、2期目の当選を果たしたが、翌1901年にニューヨーク州バファローで開かれたパン・アメリカン博覧会の会場で無政府主義者チョルゴッシュの拳銃で銃撃され、6日後に死亡した。
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1920年当選の29代大統領ウオレン・ハーディングは在職中の1923年に心臓発作で病死した。
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32代大統領フランクリン・ルーズベルトは、アメリカ史上唯一の4選を果たした大統領(現在は憲法改正で2期まで)であるが、その3期目の当選が1940年で、4期目の1945年、対日戦争が続いている中、脳溢血で急死している。
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そして1960年当選が35代大統領ジョン・ケネディである。
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なお、ついでながら、ゼロ年当選の歴代アメリカ大統領は在職中に暗殺にせよ病死にせよ7人全員(ケネディまで)が死亡しているのに、ゼロ年当選者でない大統領が多数いる中、在職中死亡したのはたった一人、12代大統領ザカリー・テイラー(1848年当選し1850年に死亡)のみである。
大統領の死を予言した「テクムセの呪い」は、ケネディを最後にして終わったとされている。
その後のゼロ年当選はレーガンとブッシュだが、いずれも任期を全うしている。
だが、より詳しくみてみると完全に終わったといいきれるのかどうか?
呪いの余波は完全に消え去ったとは言えないところがあるようだ。
40代大統領ロナルド・レーガンは1980年に当選し、2期の在職期間を無事に過ごしている。
しかし、大統領就任から2か月余の1981年3月、ワシントンのヒルトンホテルでの講演が終わって出たところをジョン・ヒンクリー(裁判では精神異常として無罪)から6発の銃弾を浴びせられている。
銃弾はレーガンのほか2名にも傷を負わせているが、レーガンに当たった銃弾は心臓をわずかにかすめ肺の奥にとまった。これは緊急手術で摘出され、危うく一命を取りとめ、3週間後には公務に復帰している。
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最後のゼロ年当選大統領は2000年の43代ジョージ・ブッシュである。
彼もご存じのように2期の在職期間を全うしているが、「呪い」の洗礼と全く無縁だったといえるかどうか。。
2005年5月10日、グルジアを訪問し首都トビリシの広場で演説中に赤い布に巻かれた手榴弾が投げ込まれた。
手榴弾は幸い不発であったが、ブッシュから18mのところに落ちた。(殺傷能力は20-30m内だったという)。
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なお、2008年バクダッドで記者会見中にイラク記者から靴を投げつけられたということもあったが、すくなくとも、これは呪いとは関係なかろう。
いずれにせよ、レーガンもブッシュも暗殺を免れているので、現在は「ゼロ年の呪い」「テクムセの呪い」は破られたと考えるひとは多い。
これに関連してアメリカのいくつかのキリスト教団体は「ゼロ年の呪い」の呪縛を解き、レーガン、ブッシュがその災厄から守られることを懸命に祈願し、その祈りが成就したと信じており、その成果をその宗教団体の教勢の拡大に利用しているとかいう話も伝えられている。
このように偶然が重なるとなると単なる偶然とだけでは言い切れないような気がしないでもない。
次のゼロ年当選大統領は2020年になるが、誰であろうか?そして大丈夫だろうか?