京都国立近代美術館の2019年度 第3回コレクション展の撮影可能作品です。
「彼が研究するのはたった一茎の草だ。」
かつて画家のファン・ゴッホが、江戸時代の絵師の植物画に感銘をうけて残した言葉です。
植物は芸術家にとって身近なモチーフであり、さまざまな表現が生み出されました。
日本画家の千種掃雲による色鮮やかな図案集『洋草花譜』からは、当時西洋から流入した珍しい花々を熱心に観察・研究する画家の好奇心を読み取ることができます。
マックス・エルンストは版画集《博物誌》で、葉脈や床の木目、糸、金網などをフロッタージュで写し取り、その抽象的なかたちを自然現象や植物、生物モチーフへと転換させています。
版画家の長谷川潔は、あるとき散歩中に一本の老樹が"ボンジュール!"と語りかけてきたように感じたといい、何気ない風景や草花にそれぞれの「神」の存在を見いだす独自の自然観へと至ります。
同じ一本の花でも、工藤哲巳のプラスチック製の造花が示すのは、現代社会における植物(自然)と人間のアイロニカルな関係です。
1960年代以降ヨーロッパを拠点に活躍した工藤は、環境汚染を引き起こす人間の高度なテクノロジーや文明社会、そしてその背後にある人間中心主義を一貫して批判し続けました。
ローター・バウムガルテンもまた、自然と人間(人工物)の関わりを民族誌の手法で作品化し、博物館における制度化されたまなざしや「自然」・「文化」といった概念自体が人間の作り出したものであることを指摘しています。
今振り返ると、アーティストたちはいずれ来たる人新世(=人間の活動が地球環境に大きな影響を及ぼすようになった地質時代)の到来を鋭く見抜いていたのかもしれません。 以上京都国立近代美術館HPより
ボタニカルガーデン:植物スケッチから工藤哲巳
ウォーレス・ナッティング 1861 - 1941 ラークスパーの庭 1900 プラチナ・プリント、手彩色
ヴェリナ・ウォーレン 1946 - 丈高く青い夏草の中にむらさきのジキタリスの花が育つ 1981
ヴェリナ・ウォーレン 1946 - 乳色の朝が白みはじめ銀色に風景が輝く 1982
インゲル・パーション 1936 - 花の陶彫 1968頃 陶器
ビルイエル・カイピアイネン 1915 - 1988 陶板 1970頃 陶器、釉薬
長谷川 潔 1891 - 1980 アカシヤの老樹 1954 オー・フォルト
長谷川 潔 1891 - 1980 一樹(ニレの木) 1941 ポアント・セーシュ
長谷川 潔 1891 - 1980 再生したる林檎樹 1956 オー・フォルト
長谷川 潔 1891 - 1980 種子草写生 1935 墨
長谷川 潔 1891 - 1980 根の付きたる種子草 1953 青墨
長谷川 潔 1891 - 1980 灌木の一枝 1956 墨、淡彩
長谷川 潔 1891 - 1980 草花写生 A 1935-36 墨、淡彩
長谷川 潔 1891 - 1980 草花写生 B 1935-36 墨、淡彩
長谷川 潔 1891 - 1980 種子草写生 1935 墨
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:14歳以下のひらめき 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:魅惑的な糸杉 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:菩提樹は従順 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:栗の樹の出発 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:打ち明け話 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:偶像 1926
マックス・エルンスト 1891 - 1976 博物誌:葉の習性 1926
1934 川西英手製「竹久夢二木版貼り交ぜ 千代紙」 大正-昭和初期 木版
千種掃雲 1873 - 1944 「洋草花譜」第拾三輯(ホリホック、カンナ、ダイアンサス) 1929 木版、紙
千種掃雲 1873 - 1944 「洋草花譜」第拾四輯(ペチュニア、カラデューム、スパイダープラント) 1929 木版、紙
千種掃雲 1873 - 1944 「洋草花譜」第拾輯(ソブラリア・ヴィーチー、エピデンドラム) 1929 木版、紙
千種掃雲 1873 - 1944 「洋草花譜」第拾二輯(ウオーターリリー、フォクスグロブ、バスケットフラワー) 1929 木版、紙
工藤哲巳 1935 - 1990 イヨネスコの肖像 1970-71 椅子、造花、バケツ、木、金属、プラスチック他