麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

あの、場所、あめ。

2024年06月11日 | 身辺雑記

あの場所に行く日は雨が多い。

墓地なので晴れ渡るよりも

気分としては合っている気はする。

ただ南武線という渋い路線の、

中でも地味な駅で降りて、

霊園だから、そんな町でも尚

寂しい方角にある丘陵を

少し息を切らせて上るのは、

やや重い心持ちにはなる。

 

加えて情けないことに、

墓を買う力がなく、

「父」を納骨堂に預けたままだ。

そんな後ろめたさを雨が押す。

 

……「まま」と言っているうち、

墓に関する世の中の考えに変化があり、

「永代納骨」も視野に入っている。

口うるさかった親類も亡くなり、

私より年の若い従弟妹の中には

「無理しなくても…」と言う者もある。

 

亡き父に会いに行く日は雨が多い。

仕事柄、土日に働くことが多く、

本番がはねた月曜日だの、

休演日だのの平日に休みを貰い、

多摩川をまたいで川崎へ……。

 

春には桜、今の季節なら紫陽花。

昔は公害のイメージが強かった街だが

臨海部以外は緑に恵まれている市だ。

桜や他の草花もだが、

やはり八仙花とも呼ばれる

梅雨の季節に君臨する花と

天の恵みは相性が良い。

 

 

霊園は回遊できる作りで、

その中の枝道の何本かは行き止まる。

お気に入りの場所は、

行き止まりのうちの一本で、

大きなクヌギの脇が急にひらける。

唐突に空。

道はそこから左に少し下って、

どんつくになる。

丘のてっぺんではないが

突き出た場所で切株がふたつ

ベンチのようにある。

 

雨でなければ、そこに座り、

空だの遠見のまちを眺める。

納骨堂ではなく、ここにこそ

父がいるような気がする。

 

津田山に行く日はだけれど雨が多い。

コメント
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