Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

四月の雪

2010-05-04 | 映画(さ行)

■「四月の雪/April Snow」(2005年・韓国)

監督=ホ・ジノ
主演=ペ・ヨンジュン ソン・イェジン イム・サンヒョ ル・スンス

(ネタバレあります)
 今年(2010年)は4月におっそろしく寒い日があって関東では雪が降ったようだ。そんなにある事じゃないけれど、季節外れの雪は降り積もった。だから・・・って訳じゃないけれど、今回観たのはペ・ヨンジュン主演の「四月の雪」。ネットで感想をあれこれ読むと決して評価は高くない。台詞が極端に少なくて感情がわかりにくい、ペ・ヨンジュンのPVみたいな映画だ・・・だの好意的な意見は残念ながら見あたらなかった。確かにペ・ヨンジュンの為に作られたような映画に思えた。「僕は冬が好きです。」・・・思わず吹き出しそうになった。優しそうな役柄だし、パブリックイメージを全く損なわないし、ファンサービス映画として企画されたのかもしれない。

 いろんな意見はあるようだが、僕はこの映画が好きだ。台詞は少なめだし、確かに唐突に感じられる演出もある。いわゆる説明くさい場面は一切ない。だから観る側としては主人公の感情を察するしかないだろう。だが、映画は映像で語るものである。それにこの物語のように罪悪感と裏腹な切ない恋愛には、説明くさい台詞もナレーションも一切必要ない。例えばソン・イェジンが下着姿で鏡に向かい、彼が触れた腰のあたりにそっと手をもっていく。「逢いたいわ」とも言わないし彼の名をつぶやくわけでもない。でもそれだけで気持ちは十分に伝わってくるじゃない。その説明くさくない演出はクライマックスに向かってますますエスカレート。ホテルの部屋に残された彼女の手紙を読むペ・ヨンジュン。それを向かいの店から黙って見つめるソン・イェジン。彼女の頬を伝う涙。不倫していた妻に、病室でペ・ヨンジュンが伝える言葉はたった一言だけ。たったひとことだけど、それは強烈な一言。その直後に引っ越し中と思われる雑然とした部屋で、ペ・ヨンジュンが一人無言で食事をとるカットへ突然切り替わる。確かに手紙の内容もわからないし、切り替わった場面はちょっと考えさせられるかもしれないけど、それだけで十分。一人で荷物まとめながらぺらぺら喋る必要もないしね。監督は、後でディレクターズカット版をリリースしており、そちらで追加された30分ではより二人の感情の動きが表現されているらしい。僕はそちらは未見だが、この台詞を極端に減らした演出はそのままであって欲しいなぁ。

 ラストがまた素晴らしい。タイトルにある雪が降る場面。降り始めた雪空を見上げる二人が映し出される。彼はコンサートの仕事の後だが、彼女はどこで何をしているのかまったくわからない。ふたりの表情を黙ってカメラは撮り続ける。見上げる空、二人は同じ空の下でつながっている・・・。唐突に切り替わる場面。雪をかけ分けるワイパーが車中から撮られ、そこに短い二人の会話が添えられる。
「どこに行くんですか?」「どこに行きましょうか」
それは二人が初めて結ばれる場面の前に交わされた会話。その一言ですべてを暗示させる見事な見事なラストシーン。好きな恋愛映画は何?と尋ねられると、僕はそのひとつにクロード・ルルーシュの「男と女」をついつい挙げてしまう。これも台詞が極端に少ない恋愛映画。「四月の雪」は、僕をフランスの恋愛映画をみているような気持ちにさせてくれた。

 「私の頭の中の消しゴム」以来、僕はソン・イェジンがお気に入り。ドラマ「スポットライト」も素敵だった。この映画での不安そうな表情と、時折見せる笑顔がすごくいいんだよね。ペ・ヨンジュンとのベッドシーン(この場面も顔のアップが多くって「男と女」を彷彿とさせる)にはちょいと妬けますが・・・とっても綺麗。他の主演作観てみよう。この映画の結末が新たな愛の始まりであることを望んでやまない。



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