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Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ブレット・トレイン

2022-09-18 | 映画(は行)

◼️「ブレット・トレイン/Bullet Train」(2022年・アメリカ)

監督=デビッド・リーチ
主演=ブラッド・ピット ジョーイ・キング アーロン・テイラー・ジョンソン ブライアン・テイリー・ヘイリー 真田広之

自分の小説がハリウッド映画化されるのが夢だった、と原作者伊坂幸太郎はインタビューで答えている。長編「マリアビートル」がブラッド・ピット主演で映画化された本作。夢の実現だ。伊坂文学特有のテンポの良さ、伏線回収の面白さ、ディティールへのこだわり。彼の作品はまさに"活字のエンターテイメント"だ。これまで映像化された作品ではそれらがうまく再現されているものもあれば、都合のいい話になってしまっているものもある。じゃあ、この「ブレットトレイン」はどうなのか?。答えは「楽しい!」このひと言に尽きる。

極彩色で登場するトンデモニッポンの世界。 インパクトのあるビジュアルの登場人物たち。みんなヤバい人ばっかりで、それぞれの美学を持ち持論を語り続ける。例えば、レモンが語る「きかんしゃトーマス」論。これが面白くって。「お前は若手だからパーシーだ」とか言いながら緑色の機関車のシールを貼り付ける。悪役キャラのディーゼルについて語っているのが、後で伏線になる。ヤバい、楽しい。子供が小さい頃にトーマス一緒に見ておいてよかったww。イギリスのお子様番組ネタ、アメリカでもウケるのかな。

多くの方が感想で述べてるように、タランティーノ映画のテイストがある。「キル・ビル vol.1」(ここ大事!あくまでもvol.1ね!)めいた残酷描写も容赦なく出てくる。飛び交う血しぶき、銃弾、仕込み刀。唐突に流れる日本語楽曲。カルメン・マキをバックに列車にしがみつくアクション(バスター・キートンみたい!)、まさかの麻倉未稀、坂本九!😳。持論押し付けで延々続くお喋り、レモンとミカンの黒服コンビは「パルプ・フィクション」を思わせるところ。まあ、演出でのタランティーノ風味は意図したところかもしれないけど、キャラクターは原作あってのものだから、似てると言っても後付けの理屈でしかない。

ここまで悪ノリ覚悟で振り切った作風にしたことで、伊坂文学のエンタメ色という一面は活かしきっていると思う。でも、さんざん楽しませてくれながら、どこかハートに訴えかけてくる情緒があるのも伊坂文学のの面白さ。本作はエンタメに全振りしてるから、つべこべ言わず楽しんだが勝ちってことね。

スマートトイレ🚽、外国人から見たら異質ですごいもんなんだな。タイトルバックもエンドクレジットも凝っていて好印象。



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プレデター

2022-09-05 | 映画(は行)

◼️「プレデター/Predator」(1987年・アメリカ)

監督=ジョン・マクティアナン
主演=アーノルド・シュワルツェネッガー カール・ウェザース ビル・デューク

長男が高校生の頃、アーノルド・シュワルツェネッガーにハマったことがある。きっかけは「コマンドー」で、主演作を観るシュワ祭りを二人で連日やった。僕がやたら80年代の主演作をプッシュしたせいか、「プレデター」をやたら気に入ってしまい、その後「プレデター」祭りが展開されることになった。こんなはずじゃなかったのに、と父親は思う😓。

僕が初めて観たのは社会人になってすぐの時期。劇場公開時はスルーしていて、ビデオを借りて観た。アクションスターの大作なんてあの頃あまり観なかったのだが、「ダイ・ハード」があまりにも面白かったので他のジョン・マクティアナン監督作に挑んだ次第だ。

政府要人救出のためにジャングルに降り立った特殊部隊。しかしそこに正体不明の生命体がいて、狩猟のように人間を襲い、殺した人間の頭蓋骨を愛でる。透明になって視覚から消え、腕から銃撃。次々に屈強な男たちは倒されていく。追い詰められるシュワちゃん演ずる主人公は、肉体と知恵でやつらに立ち向かう。

熱反応でターゲットを検知し、攻撃するプレデターたちを、サーモグラフィーの画面で表現する斬新さは今観ても面白い。あの頃は、「ターミネーター」「ロボコップ」など主観ショットに面白い工夫をした映画がいろいろあったよな。何よりもプレデターのデザインのカッコよさがいい。鎧のような外見と、そこに仕掛けられた兵器の数々。そしてマスクの下の“ugly“な素顔。でもそれを倒すのは生身の肉体で戦う人間という面白さ。男しか出てこない血まみれのSFホラーを観るなんてほんとに自分には珍しいのだが、泥まみれになって挑む姿にハラハラ。

テクノロジーと人間という生真面目な視点もあるかもしれないけど、そんな堅いこと考えちゃダメ。目の前にせまる危険に理屈なんてない。大事なことは、事態を把握して、分析して、対策を考える力だ。それをこの上ない分かりやすさで示してくれる映画。しかも後半は台詞が極端に少なくなる。映像で語り尽くす面白さ。

初めて観てからウン10年経つ。僕らが日々戦う仕事だって、手取り足取り教えてくれる人なんていない。正体不明の相手に立ち向かうのは、自分で考えることと経験値しかない。社会人として現実世界をサバイバルするのにも、事態を把握して、分析して、対策を考えることは「プレデター」と何も変わらない。そう言う意味じゃ、シュワちゃんの映画は落ち込んだ時のカンフル剤になってくれるのだろう。でも、嫌な上司だからって、面と向かって“ugly“って言わないでね。




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バニー・レークは行方不明

2022-08-23 | 映画(は行)


◼️「バニー・レークは行方不明/Bunny Lake Is Missing」(1965年・アメリカ)

監督=オットー・プレミンジャー
主演=ローレンス・オリヴィエ キャロル・リンレー ケア・デュリア ノエル・カワード

シングルマザーの主人公アンは引越しの間保育園に娘バニーを預けたが、迎えに行くと姿がない。兄スティーブンが駆けつけ、園の関係者に尋ねるが誰もバニーを見ていない。警察の捜索が始まり、入園の記録がないこと、アンには妄想癖があり架空の友人をバニーと呼んでいたことなど次々に新たな事実が浮かび上がり、捜査官はバニーの存在自体を疑い始める。引退した園の責任者、その日に辞めた園の職員、しつこくアンに付きまとう家主など怪しげな人物も現れて、事件は複雑な様相へ。バニーはどこへ行ったのか?

なるほど。同じく娘が行方不明になるジョディ・フォスター主演の「フライト・プラン」って、これがやりたかったのか。映画のルーツやつながりを感じると、長く映画ファンやってきてよかったと思える。まあ、勝手に関連づけすることもあるけど。「フライト・プラン」との決定的な違いは娘の姿を観客に見せないことだ。「お一人で乗ったじゃないですか」といくらアテンダントが言ったとしても、観客は子供と一緒にいるジョディを最初に観ているんだもの。説得力がない。ところが「バニーレイク」で観客に与えられるのは、捜索をする警察が持つ情報と大差ない。だからアンを取り巻く人々と同じくバニーの不在を疑ってしまう。だから引き込まれる。

ソール・バスがデザインを手がけたタイトルバックがいい。紙を破るとクレジットが表示される趣向なのだが、本編を貫く情報のチラ見せを予感させているようだ。冒頭示されるのは、揺れるブランコとそばに落ちているおもちゃ一つ。子供の存在を示しているようだが、決して子供の姿はない。イギリスに引っ越したばかりで不安なアンを、さらに不安にさせることが続く。でも不安になるのは観客も同じなのだ。

クライマックスで結末が示される場面。何が起こったのか戸惑ってしまい、僕らはひたすら映像を追いかけるしかできない。その裏側にある心理に気づく時に、怖さと切なさが入り乱れる不思議な感覚になる。

60年代の英国バンド、ゾンビーズの楽曲が使用されているが、これも何かの示唆があるのかな。ゾンビーズって、「ふたりのシーズン」と日本語カバー「好きさ好きさ好きさ」の原曲くらいしか知らないからなぁ。「2001年宇宙の旅」以外でケア・デュリアを観るのは初めてかも。

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ハイジ

2022-07-23 | 映画(は行)


◼️「ハイジ/Heidi」(2005年・イギリス)

監督=ポール・マーカス
主演=エマ・ボルジャー マックス・フォン・シドー ジェラルディン・チャップリン ダイアナ・リグ

ヨハンナ・スピリの原作の実写映画化。アルムおんじは名優マックス・フォン・シドー、ロッテンマイヤーさんはジェラルディン・チャップリン、クララのおばあさまが元ボンドガールのダイアナ・リグという大物を配したキャスティング。ハイジ、クララを演じたお嬢様方もイメージ損なうことなく好演しており、堅実なつくりの実写化になっている。

されど2時間弱の尺に、デーテおばさんに連れてこられるところから、歩けるようになったクララが父親と抱き合うクライマックスまでが、ギュッと詰め込まれている感はどうしてもあるので、じっくり見てきた高畑勲ハイジ世代には、駆け足でストーリーを追っているように思えて仕方ない。

だが、アルプスやデルフリ村の様子はハイジの物語の世界に観ている僕らを引き込んでくれるし、夢遊病になってしまうハイジの痛々しさ、アルムおんじの素性やフランクフルトから戻ってきたハイジにも冷たく接する頑なさは、実に丁寧に描かれていて好印象。

全体としては期待どおりで、それ以上ではない映画かもしれない。「クララが…立ってる!」はおんじが言ってはいけないと思うし、乳しぼりはしないし、ペーターがやたら暗いのがちょっと残念。だけど、おんじが自分の死後を口にするところには現実味があるし、ハイジが「おじいさん、愛してるわ!」と言うラストシーンは成長を感じてなかなか素敵。

スピリの原作の後日談を他の作家が書いた続編があるようだ。その映画化でチャーリー・シーンがペーターを演じた「アルプスを越えて」を観てみたい。

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ハイ・フィデリティ

2022-05-21 | 映画(は行)

◼️「ハイ・フィデリティ/High Fidelity」(2000年・アメリカ)

監督=スティーブン・フリアーズ
主演=ジョン・キューザック ジャック・ブラック リサ・ボネット ジョエル・カーター キャサリン・ゼダ・ジョーンズ

音楽オタクの中古レコード店主の一方的な自己分析と失恋遍歴を延々聞かされる映画。終始カメラ目線のジョン・キューザックが観客に語りかけ、大失恋トップ5をランキングつけて紹介する。ところどころウザっ!と感じて、「でもさ、彼女側の気持ちはどーなん?」と画面に向かってジョンを諭してやりたい気持ちになりつつ(それって、映画に引き込まれているってことでもあるのだけど・笑)、ことの成り行きを見守る113分。

長く映画ファンやってると、こうした観客に語りかけてくる映画にも何本か出くわしている。一方的な解説付きでストーリーを追うのはウディ・アレン作品みたいだし、80年代育ち組は偏った持論を押しつけてくる主人公に「フェリスはある朝突然に」あたりを思い浮かべるのではないだろか。この両方がミックスされてる感覚。過去に失恋した5人に会いに行く展開は、往年の名作「舞踏会の手帖」?いや、それは考えすぎだww

個性的な登場人物たち、何よりもジャック・ブラックの芸達者ぶりが素晴らしい。冒頭いきなり店に現れて、カトリーナ&ウェイブスのWalking On Sunshineを流して踊り狂う姿に心を持っていかれた🤣。レコード店で踊るおバカに心くすぐられるのは、ジョン・クライヤー(「プリティ・イン・ピンク」)以来やぞ。ラストでマービン・ゲイのLet's Get It Onを歌う姿にまたやられました。

スティービー・ワンダーのI Just Called To Say I Love You(心の愛)を買い求めに来た客に、「駄作だ」と言い放つ最悪の(でもサイコーな)接客に笑い転げる。昔友達としレンタルビデオ屋になるなら、どんな店主になる?と話してたことがあって、僕の答えは、
「タイタニック観るようなヤツはうちの客じゃねえ!って言ってみたい!」
あー、まさにこれだよ。ジャックありがとう。ディスっておきながら、映画の最後はスティービーの楽曲で締めくくる選曲がなんとも粋じゃん。これこそ音楽への敬意。

トップ5をいろいろ選出する場面が出てくる。製作当時なら、音楽オタクが知識をバトルさせてるウザさがあったんだろうけど、今やこうした偏った持論はTwitterで日々絶え間なく、しかも一方的に流れてくる。でも映画に出てくる彼らは、それを面と向かって語り合えてるところがいいし、音楽の趣味を切り口にリアルで人とつながっていく感覚が、コロナ禍の今だからか、妙に羨ましくも見える。そして自分で選曲したカセットを作る姿がなんとも懐かしくて。今はプレイリストが作れても、それを手渡しする場面なんてない。それでも、今も昔も音楽は人をつないでくれる大切なものなのだ。それは変わらない。

製作資本はアメリカだけど、製作会社は英国ワーキングタイトル社。この会社の映画はフェバリット作が多い。この映画も全体的にはかなり好きなんだけど、音楽ネタの楽しさが心に残って、主題のラブコメ部分は、モテない男のひがみ根性なのか(笑)ちょっとノレなかったんでしたw。




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ベルファスト

2022-04-05 | 映画(は行)

◼️「ベルファスト/Belfast」(2021年・イギリス)

監督=ケネス・ブラナー
主演=ジュード・ヒル カトリーナ・バルフ ジュディ・デンチ ジェイミー・ドーナン

元来シェイクスピア俳優であるケネス・ブラナーは、英国文化の継承者の役割がある。近年アガサ・クリスティ作品の映画化を続けているのもそうした姿勢の表れだと思うのだ。ケネス・ブラナーが次に撮ったこの「ベルファスト」は、自身の少年時代を基に、北アイルランドの街で宗教対立を発端にした暴動とそこで暮らす人々が描かれる。これまでブラナーが手がけてきた文学作品の継承でなく、忘れてはならない歴史の継承であり、これからへのメッセージが込められている。

紛争についてもっと悲惨な内容を予想していた。厳しい状況は描かれながらも、この映画は少年バディ視点の庶民生活を中心に据える。日に日に悪化する街の様子、ギクシャクする両親の様子も目にするけれど、家族で映画を観たり、学校で好きな女の子に認められたいと願ったり、悪友の万引きに巻き込まれたり、家族で映画「チキチキバンバン」を観て盛り上がったり。変わらない日常がそこにある。

挿入される映画やグッズの数々に思わずニヤリとしてしまう。チラッと映すアガサ・クリスティの本や「マイティ・ソー」の雑誌は、ケネス・ブラナーのフィルモグラフィーに直結する小道具だし、アストンマーチンのミニカーやサンダーバードのおもちゃは60年代の英国を感じさせる。感激したのは、フレッド・ジンネマン監督の異色西部劇「真昼の決闘」とフランキー・レーンの主題歌High Noonを挿入したこと。これが暴動の中で息子と妻を救おうとするバディの父親の行動に重なる描写は実に見事。祖母が好きだった映画として「失はれた地平線」が挙げられるのもいい。理想郷シャングリラが登場するクラシック。そして祖母は「ベルファストから行けはしないわ」とつぶやく。さりげなく目の前の荒廃したベルファストと対比させてみせる。なんて巧い。

バディとその家族に向けられる祖父母の愛ある言葉の一つ一つも胸に残るいい場面。「イングランドに行ったら言葉が通じないらしい」というバディに、「ばあさんとは50年一緒にいるが何を言ってるのか今でもわからん」と言って笑わせる。「大事なのは自分が誰かを忘れないことだ」とのひと言も響いた。そしてラスト、家族に向けられた祖母の短い台詞も忘れがたい。祖父母の仲の良さも素敵だなと思うポイントだが、ギクシャクしていた両親が歌いながら踊るラスト近くもいい。四分打ちスネアがカッコいい、Love AffairのEverlasting Love(余談:U2のカバーもナイスなんです)が流れる素敵なシーンになっている。

戦乱の中で街に住み続ける人々。連日報道されるウクライナの様子とどうしても重なってしまう。何故争わなければならないのか。この映画を観るとますますその疑問と虚しさを感じずにはいられない。

家族愛と郷土愛、そしてポップカルチャーへの愛情を添えた物語。オスカー脚本賞は納得だ。個人的に、アイルランドが舞台となる映画と相性がいいのかな。これまであんまりハズレと思ったことがないし、むしろお気に入りの映画が多い。この作品もその一つとなるだろう。



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バックドラフト

2022-03-17 | 映画(は行)

◼️「バックドラフト/Backdraft」(1991年・アメリカ)

監督=ロン・ハワード
主演=カート・ラッセル ウィリアム・ボールドゥィン ロバート・デ・ニーロ スコット・グレン ジェニファー・ジェーソン・リー

80年代後半から90年代の僕は、一部を除いてハリウッドのヒット作を避けていた時代。今もその傾向はあるのだが、そんな中で見逃していた「バックドラフト」。多分ロバート・デ・ニーロを除く出演者がどうも苦手な人ぞろいで敬遠したんだろうな。世間で評価されてるヒット作に今さらだけど、エンターテイメントとして全く飽きさせないのは見事。ロン・ハワード監督ってやっぱり見せ方が上手い。「アポロ13」や「ラッシュ プライドと友情」では、ヘルメット被って俳優の表情が全て映せないのに気持ちが伝わる名演出だった。あ、これも防火服という被り物がある映画だなw

消防士の父が少年の目の前で亡くなる衝撃的な冒頭。その彼が大人になり、職を転々とした上で消防士として働くことになる。配属されたのは兄がいる17分署。現場で活躍する兄との確執。頑張れど空回りして現場の消防士を辞め、議員秘書をしている元カノの口利きで火災調査官となる。新たな上司となる調査官は、連続して起こっているバックドラフト現象による火災と死亡事案に共通点があることに気づく。

兄弟をめぐる濃密な人間ドラマである前半から、事件の真実に迫るサスペンス色が濃くなっていく。疑惑で観客を揺さぶって、真相のショウダウン、そして再び兄弟の感動ドラマへ。男くさいドラマだけに止まらず、消防士をとりまく女たちの抱える気持ちを描くことも忘れず、ズルいと思うくらいに映画的に面白いと思わせる要素を次々に示してくる。食わず嫌いだったな、これ。

死んだ父や兄、そして上司となる調査官は火の特徴やクセを知り尽くしている。主人公が父を奪った火を憎み恐れ、理解することを拒んでいるのとは対照的。それだけにクライマックスへ向けて行動が変わっていく様は、成長物語としての感動もくれる。なるほど、支持されている理由がわかった気がする。生きているかのような炎の見事な視覚効果。崩れ落ちる火災現場を時にローアングルで、時に大掛かりなセットでアドベンチャー映画のように撮る映像の迫力。

誰が苦手なのかというと、カート・ラッセルとウィリアム・ボールドゥィン。カート・ラッセルは、いつも熱量過多の演技をすげえなと思うのだけど、いい場面で泣き出しそうな忌野清志郎に似た表情するのがなんか苦手(ごめんなさい)。ボールドゥィン兄弟は長男を除いて、チャラいイメージしかなくてw。消防車の上でイチャイチャする場面に、ほらやっぱり!と思ったのでしたw

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劇場版 Fate/keleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い

2022-03-12 | 映画(は行)


◼️「劇場版Fate/keleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い」(2017年・日本)

監督=大沼心
声の出演=杉山紀彰 名塚佳織 門脇舞以 花江夏樹

Fateシリーズはけっこう好きなのだが、「プリズマ☆イリヤ」は未見。だがこの劇場版「雪下の誓い」は、衛宮士郎好きな僕なら予備知識なくても大丈夫とアドバイスをもらったので挑んでみた。

美遊がイリヤと出会うまでの前日譚となる作品で、衛宮士郎と切嗣が謎の大爆発現場で美遊と出会うところから始まる。願望を叶える器"聖杯"としての美遊の力を利用して、この世に正義を実現したい切嗣。しかし美遊という個をその為の犠牲とすることに士郎は疑問を感じていた。やがて切嗣がこの世を去り、士郎と美遊は心を通わせていく。衛宮家から出ることのなかった美遊を、士郎は二人が初めて出会った現場に連れて行く。しかし、そこには美遊の力を使って世界を救済することを目論む陣営が待っていた。それは新たな聖杯戦争の始まりでもあった。

マスターがサーバントを召喚して戦わせるのではなく、魔法カードに宿されたサーバントの力をマスターが身につけて闘うスタイル。相変わらずのクソ野郎、慎二はアサシンの能力を身につけて気色悪いったらありゃしない。一方で士郎が力に目覚める場面は惚れ惚れするカッコよさ。そこからのバトルはあまりの駆け足だが、Fateシリーズの本筋をかじっていればまあ大丈夫。そしてクライマックスのギルガメッシュとの対決は最大の見せ場だ。「stay night」の陰惨なまでのハードな雰囲気を期待すると、ちょっとガッカリするかもしれないが、そもそも別のお話なので。そして、美遊の幸せを望む士郎が「イリヤ」本編につながる面々と美遊を、結果として引き合わせることになる。

個人的には「UBW」が好きなので、士郎の活躍は楽しめた。だんだん切嗣みたいに顔がやつれていくのは、ちょっと痛々しかったけれど、この勇姿は心に残る。




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プロミシング・ヤング・ウーマン

2022-03-08 | 映画(は行)


◼️「プロミシング・ヤング・ウーマン/Promising Young Woman」(2020年・アメリカ)

監督=エメラルド・フェンネル
主演=キャリー・マリガン アダム・ブロディ レイ・ニコルソン サム・リチャードソン

医学生時代の友人を理不尽な事件をきっかけに失ったキャシー。医大を中退後、昼間はコーヒーショップの店員をしている彼女。しかし、夜は泥酔した彼女をお持ち帰りしようとする男どもを、次々に懲らしめてその数を手帳に記録していた。彼女のこの行動の裏には、学生時代の事件とその関係者への深い恨みがあった。

一見犯罪映画、スリラー映画、時に恋愛映画のムードを見せておきながら、気づくと社会性のあるテーマを深く考えさせられている。なんて巧みな演出だろう。クライマックスの驚愕の展開。それがどんな結末につながるのかと思ったら、予想を超え、しかも痛快なラストシーン。いけ好かない女がラストにやたらカッコよくなる「アイ、トーニャ」や、スリラーみたいな追い詰め方で引き込んで、最後は女性の自立を考えさせる「スワロウ」にも通ずる。「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、性暴力の問題を扱いながらも、エンターテイメントとして申し分ない。奇跡的なバランスは見事としか表現する言葉が見つからない。

性暴力を扱っていながら、それをビジュアルとして見せないのもこの映画の特筆すべき点だと思う。レイプをめぐる70年代の裁判映画「リップスティック」や、ジョディ・フォスターがオスカーを獲得した「告発の行方」も一方的な性暴力を扱っている。女性が襲われる場面は痛々しいし、それを演じる側の精神的なストレスは、スクリーンのこっち側で想像するのをはるかに超えるものに違いない。しかし「プロミシング・ヤング・ウーマン」では、そうした野蛮な行為は、観客には音声で示される。それはどれだけ痛ましいもので、人を傷つけるものだったかを観る者に考えさせるのに大きな役割を果たしているし、ヒロインの言動を見ればその行為の愚かさは十分に伝わっている。





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劇場版 パタリロ !

2022-02-08 | 映画(は行)





◼️「劇場版パタリロ !」(2018年・日本)

監督=小林顕作
主演=加藤諒 青木玄徳 佐奈宏紀

えー、魔夜峰央作品の大ファンでございまして。「パタリロ !」「ラシャーヌ!」は白泉社文庫版で全巻揃えました。北九州市の漫画ミュージアムで開催された魔夜峰央展で、みーちゃん先生のサインもいただきました。テレビアニメは90年代にNHKがBSで放送してくれたので全話完走。僕が"殿下"と敬意を込めて呼ぶのはプリンス御大とパタリロ ・ド・マリネール8世以外にはおりませぬ。こんな父親のせいか、うちの子はMI6のスパイと言えばジェームズ・ボンドではなくジャック・バンコランと答えるのです(汗)。

なんでこんな前置きするかというと、自分の属性をはっきりさせるためww。この「劇場版パタリロ !」は、加藤諒主演の舞台劇を違った目線と演出で楽しみたい人か、「パタリロ !」上級者向けの作品に仕上がってしまっている。この映画で初めて「パタリロ !」の世界に触れるのはおすすめできない。いや無理。ディープすぎて無理。一般映画として同列で観るものじゃない。いやむしろフツーに映画と思って観ちゃダメ、絶対。

そもそも原作がBLギャグ漫画の先駆みたいなもので、それが舞台、実写映画になったから当然なのだが、とにかく男、男、男。怪しいライティングの下でバンコランがマライヒを押し倒し、タマネギ部隊は一列に並んで身をくねらせてシャワーを浴び、熱いベーゼが長い長い…。ビデオムービーみたいな映像のクリアさも手伝って、企画もののAV見てるんじゃないよね?…と我が身を疑う瞬間があったけど、クックロビン音頭のおかげで正気に帰れますw。単独の映画としてはとんでもハップンな出来だけど、オリジナルへの愛故に笑って見てられる。

魔夜峰央先生の登場、男色富豪役の西岡徳馬など驚きのゲスト陣。舞台も(コアなファン向けだろうけど)楽しいんだろうな。これを劇場映画にするなんて悪ノリです。でも原作も殿下の悪ノリ話なんでいいのかなっ。ビバ昭和!に笑い転げて、月影先生に悶絶。






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