読書日記

いろいろな本のレビュー

「快傑ハリマオ」を追いかけて 二宮善宏 河出書房新社

2017-03-13 10:51:58 | Weblog
 ♪真っ赤な太陽燃えている 果てない南の大空に とどろきわたる雄たけびは 正しい者に味方する ハリマオ ハリマオ 僕らのハリマオ♪ご存じ「快傑ハリマオの唄」である。作詞・加藤省吾 作曲・小川寛興 歌・三橋美智也。この歌はカラオケでもよく歌われている。現に私の同僚は行くと必ずこれを歌う。メンバーは誰も還暦を過ぎていて、昭和30年代を懐かしむよすがとしてこれが出てくる。テレビの「快傑ハリマオ」は昭和30年の4月に放送が開始されて、翌年の6月に65回で放送を終了した。ハリマオを演じたのは勝木敏之で、白いターバンにサングラスのスタイル。これは少年たちを熱狂させた。この時期、月光仮面、少年ジェット、隠密剣士、ナショナルキッド等々、見るべきテレビ番組は多かった。大人たちにはプロレスや大相撲中継が人気だった。
 この放送が始まった当時、私は9歳の小学校三年生。週刊少年サンデーや少年マガジンが40円で、特にサンデー連載の横山光輝の「伊賀の影丸」が好きで発売日が待ち遠しかった。この懐かしい昭和30年代を象徴する「快傑ハリマオ」ゆかりの人物・会社等々をまとめたのが本書である。まず本の装丁が素晴らしい。黄色の地にハリマオがピストル片手に正面を向いて精悍な表情で迫る写真を配置。今にもピストルが火を噴きそうだ。
 第一章は、ハリマオのモデルについての解説、第二章は、製作者・小林利雄や監督を務めた田村正蔵や浅井清のエピソードなど。第三章は作曲者・小川寛興、作詞者・加藤省吾、歌手・三橋美智也について。三橋は民謡歌手出身で、その美声は人気の的であった。歌手・細川たかしの師匠でもあり、当時は「古城」が大ヒットしており、スーパースターだった。そして番組提供の森下ジンタンの「ジンタンの歌」=♪ジンジンジンタンジンタカタッタ♪と作曲者の三木鶏郎の話題。そして当時人気の四人の歌手グループのダークダックスの紹介。最後の第四章は主役・勝木敏之のその後を追っている。勝木は俳優としてはこのハリマオ一本で終わってしまい、その後、東京西五反田に居酒屋「蔵」を開店した。そして1966年に33歳で結婚したが、1983年に離婚した。その後の事跡は「今、どこで、どうしているのかわからない」と著者はいう。ターバンとサングラス姿同様、全体の相貌を明らかにしないところが「快傑ハリマオ」らしい。
 なにはともあれ私にとって56年前の興奮を再現させてくれた本書に感謝するしかない。二宮さんありがとう。