読書日記

いろいろな本のレビュー

教室内カースト 鈴木翔 光文社新書

2013-02-12 08:30:04 | Weblog
 教室を支配する「地位の差」をカーストと呼び、その実態を生徒・教師のインタビューを交えてまとめたもの。「カースト」はご存じの通りインドの身分制度で、階層間の壁は厚く、下位から上位への移転は不可能。教室内カーストも同じだという。上位にいる生徒は気が強く、傍若無人に喋るタイプで、下位の生徒はおとなしくて目立たないタイプだというが、これに関しては特に目新しい発見はない。ただ上位にいると学校生活が楽しく過ごせるという生徒の言葉が、社会のありようをそのまま反映していて興味深い。生物界においても食物連鎖の頂点に立つものは、襲われる心配がないので、餌をとる苦労はあるが悠々と生活できる。その精神的安定度は何よりも大きい。さすれば、下位の生徒はいついじめに遭うかびくびくしながら学校生活を送るという意味で、食物連鎖の下位にいる動物と同じだと言えよう。
 カースト上位は、文化祭・体育祭・遠足・修学旅行のクラス活動について主導権を握り、自分たちのやりたい方向にもっていこうとする。とにかく声が大きく気が強いので、そういう生徒が三四人固まれば、おとなしくてまじめな生徒は何も言えなくなる。このグループが勉強も部活もまじめにやる生徒ならまだしも、そうでない場合は、クラスをかき回すだけかき回してあとの責任を放棄するという場合も間々ある。その時はクラスが危機に陥る。担任として最も苦しい瞬間である。担任はこれらのグループをうまく利用してクラスの活性化を図ることは必要だが、彼等に迎合してはいけない。行きすぎた時は毅然とした態度で叱責することが大切。ところが、最近は生徒と教師の間が友達関係のようになっているので、これがいろんな意味でネックになっている。高校から中学、小学校へ行くに従ってその度合いは増加する。
 本書のインタビューで教師が、カースト上位の生徒は生きる力があって将来有望で下位の生徒はそれがなく、将来もだめだろうというようなことを言っているが、賛成できない。人間観察が一面的で、こういう教師が増えてくれば、学校のいじめ・差別問題はもっと深刻化するのではないかという危惧を覚える。