クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

乗り易い足は速くない・・・?その2

2015-09-21 13:47:12 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
これも随分昔のことですが。

オリジナルボックスでは会社創立当初から、競技車の製作を仕事としています。
自分で走らせていたマシンも内製、サスペンションセッティングもその頃からガツガツにやっていました。

そんな中、Gr-Cマシンのサスペンションセッティングをやって欲しいいと頼まれました。

ガレージで担当者に話を聞いたところ、一ヶ月ほど先に富士SWで行われるWEC(世界耐久選手権シリーズ)に出場する予定であること、
その時リザーブドライバーを入れて4人のドライバーが登録されるのだが、セッティングの好みが皆違うので困っている・・・

ジャッキスタンドに乗せられているシャシーを見せてもらい、色々と話を聞いているうちに、どうやら問題の元になっているのはタイヤであることに気がつきました。

以前はエイボンタイヤが標準装着されていたのが、今はダンロップタイヤ。
タイヤ外径が異なり、車高が高くなったのをメインスプリングのスプリングシートで調整していることです。

グランドエフェクトと言われるダウンフォースをボディー下部で効果的に得るためには、グランドクリアランスを優先する車高合わせをします。
しかしタイヤの外径違いで上がった車高を、車高調で下げただけでつじつまが合うかといえば否!

車高調を動かせば、車高と一緒にサスペンションアームの角度が変わり、静的なロールセンター高が移動したままになります。
これだとサスペンションが設計された当初のロールセンター高のポジションから外れてしまっているかもしれません。
(結果この時はそうなっていました)

その対策方法は、リヤーのロールセンター高さの修正、つまりサスペンションの取り付けポイントをダンロップタイヤの外径に合わせて正しい位置に変更することです。

かくしてレースウイークの練習日、サーキットから連絡があり、4人のドライバー全員からOKが出ました、セッティングはこのままでいけそうです・・・

決勝は残念ながらドライブシャフトのフランジボルトの緩み!というマイナートラブルでリタイヤでした。

「乗り易さ」は「純正」とか「ノーマル」といった言葉が持つ意味と同じで、正しいものであろうことはなんとなくわかります。

ところがこれらの言葉にくっついているもう一つのイメージが、手を入れていない…改造されていない…チューニングされていない…だから速くない、
こんな風にも思われているのではないでしょうか。

しかし目一杯のチューニングが、はなから施されている純レーシングカーの場合は乗り易さなくして良いセッティングとは言えません。

じゃあ改造された市販車は?