1969年にバンド活動を停止したHorace Silverが、70~72年に吹き込んだThe United States Of Mind(人心連合)シリーズの2作目にあたるのが本作。1952~77年までの25年間に及び、Blue Noteの顔役として同レーベルに在籍していた彼ですが、Blue MitchellとJunior Cookの2人をフロントに据えたクインテットを解散した64年以降の楽曲に関しては、やっぱり生粋のジャズ・ファンからは評価が低いというのが本音です。しかしながら、レア・グルーヴ・ムーヴメント以降にヒップホップ世代から再評価されたのは、むしろ逆にソウル・ジャズ風の手触りを感じるこの辺りの彼の楽曲郡。特に本作などはその筆頭的存在でしょう。声が低すぎて全く女性とは思えないSalome Beyと、その兄Andy Beyの2人をヴォーカリストに迎えた作品で、全曲ヴォーカル入りの編成となっています。4 HeroがカヴァーしたA-3のWon't You Open Up Your Sensesはメロウな展開が魅力のワルツ・ジャズ、それから小林径さんのフェイバリットでもあるA-5のSoul Searchin'は良い意味でどこか土臭いソウル・ジャズで、いずれもレア・グルーヴ的人気が高い曲ですね。今の気分に合うのはA-4のI Had A Little Talk。アルバム中で最も踊れる楽曲で、アフロ・キューバン調のビートに乗る渋いヴォーカルが印象的な好曲です。最近ダブルジャケで再発が出たので、まだ知らない人はこれを機にお試ししてみてはいかがでしょう。ちなみにジャケットはMuroさんネタですね。
D.M.R.渋谷店のニュージャズ・コーナーから久々に買ってきたのは、イタリアの新人ピアノ・トリオWhy Waitによるデビュー10インチ。Idea 6によるMetropoliがスマッシュヒットしたPaolo Scotti主催Deja Vuレーベルからの新譜です。タイトルにもなっているA-1のAmalgamは、イギリスのコメディアン兼ピアニストDudley Mooreによる名曲のカヴァー。原曲はクラブ・ジャズ・クラシックスとして知られる超絶技巧の高速ボッサ・ジャズで、僕も昔から大好きなナンバーだったりします。以前Nicola ConteがこのAmalgamをモチーフにしたリミックス作品を手がけたことがありますが、このWhy Waitによるヴァージョンも基本的にはそれに近い雰囲気。いわゆるNu Jazz風な作品と言うことが出来るでしょう。最近ひそかに話題となっているIndigo Jam Unitにも近いところがありますね。良い意味で硬質なベースとドラムのアンサンブルが印象的で、どことなくDieter ReithのWives And Loversを高速化したような曲に仕上がっています。一方、オリジナル曲となるB-1のVoid Aheadは若干テンポゆったりめな変拍子によるサンバ・ジャズ。個人的にはこちらの方が少し落ち着いた感じがして好みです。それにしてもこのDeja Vuというレーベルは、明らかに日本のクラブ・ジャズ・マーケットを狙い撃ちしていますね。まぁ日本人の僕としては大いに結構なのですが、ここまで徹底してやるならば、いっそもうGino MarinacciのIdea辺りをガツーンと再発してもらいたいもの。Paoloならば出来そうな気がするんですけれど…やっぱり難しいのかなぁ?