前回「いつも愉快な」小西康晴さんによるPizzicato One名義での作品を取り上げたので、今回はかつての相棒である「いつもチャーミングな」野宮真貴さんの昨年リリースされたアルバムを紹介。「What The World Needs Now Is Love ~野宮真貴、渋谷系を歌う。~」とサブタイトルにあることからも分かるようにカバー曲集なのですが、実際に取り上げられている楽曲は90年代中盤のいわゆる「渋谷系」ソングのみではなく、その元ネタであるロジャー・ニコルスやバート・バカラックであったり、往年のシティポップスであったりとバラエティに富んでおり、単純に聴いていて気持ちいいポップスの名盤となっています。冒頭M-1は誰もが認めるP5時代の代表曲「東京は夜の七時」。過去にDVDでも映像作品がリリースされたBSフジでのP5ラストセッションに近い、パーカッションを効かせたジャズ風のアレンジとなっており、往年のファンならばこの一曲だけで引き込まれること必至かと思われます。M-6の「ドリーミング・デイ」は山下達郎がソロ本格始動前にナイアガラからリリースした作品のカバー、カジヒデキをゲストに迎えたM-10の「ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマー・ビューティー計画」はフリッパーズ・ギターのカバー。どちらもオリジナルの良い部分をうまく昇華した好カバーに仕上がっています。そして個人的に最も気に入っているのがM-9の「音楽のような風」。元々はEPOが1985年にリリースしたシングル曲(日本ビクタービデオテープDYNAREC CMソング)なのですが、ここではそれをロジャニコ(というか、それに影響を受けたピチカート全盛期)風のボサノバmeetsソフトロックなサウンドでアレンジしており、M-1同様P5ファン即死の展開となっています。正直ここ数年の野宮真貴さんの活動は琴線に触れることが少なく、あまり真剣に追ってはこなかったため、個人的には久々のヒットです。前回のPizzicato Oneと併せて、当時を懐かしみながら少しノスタルジックな気持ちで聴くのが正しい楽しみ方なのかもしれませんね。
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