(前回からの続き)
先週末の米株式市場ではダウ平均が3万ドルを割り込んで年初来安値を更新しました。そして原油先物も23日、前日比で5.7%安の1バレル78.7ドルと、1月来の安値を付けました。その主因は・・・当然、米金利の先高観でしょう。米FRBが現在進めている利上げを今後も続けるだろう、という見方です。実際、米債券市場では金利が急上昇(米国債価格が急落)し、長期金利(10年物国債金利)が一時3.8%台と、12年ぶりの高水準に達しました(終値時点では3.687%)。といった感じで、各マーケットが金利の動向に非常に敏感になっている様子が窺えるわけです・・・
が、それはあくまでも名目金利上のこと。前述し、そして本質的に大事な米実質金利(=名目金利-インフレ率)は相変わらずマイナス圏に深~く水没したままです(長期金利上昇中の現局面でもマイナス4~5%と推測される)。にもかかわらず各マーケットが金利の上昇にこうして動揺していることこそ異常だといえるでしょう。そして、そんな動揺ぶりから見ても(本稿で書いている住宅ローンを抱えている層に代表される)米国民の多く&米金融システムが実質金利マイナス5%もの「高金利」に耐えられるわけがない・・・ためにFRBが利下げそして量的緩和へと回帰していくのは必至でしょう(?)。その結果は・・・実質マイナス金利のいっそうの沈降すなわち真性インフレ―――実質マイナス金利状態の定着・永続―――しかないでしょう。そのとき米社会、そして肝心のドルはいったいどうなる・・・って、真性インフレってことだから・・・いうまでもありませんが・・・
さしあたり、米不動産価格(全米住宅価格指数)とか住宅ローン金利の動向等はもっとも重要な指標でしょう。文字どおり(長期)金利がモロに影響を与えるところだからです。本稿前段では3か月も前の6月のデータを挙げましたが、その後、現在に至るまでにさらに金利が上がっているから、そろそろ住宅価格が前月比でついにマイナス!なんて結果が出てくる頃合いでしょう。それは・・・きっと当面の分界点になるはず。これを受けたマーケットの一斉売りで株やMBS(不動産担保証券)等のリスク資産価額がどこまで下がるのか、そして長期金利がどこまで上がるのか(そしてそして、お約束の?FRBの緩和回帰がいつになるのか)、注目したいところです・・・
ところで・・・アメリカがこれほど金利の上昇に脆弱になってしまったのは、まあ自身の借金体質に根本的な原因があるわけですが、何度も指摘したように、ソコにつけ込み、超低金利マネーを大量かつ延々と融通して結果として同国を資産・借金バブルの超~高みに押し上げた日銀の現行金融政策のおかげ(せい?)です(?)。そしてその本当に本当の目的は、かの国の実質金利マイナス圏の永続的な没入(水面上への浮上の不可能化)によって、ほぼ達成済みです。よって、もはやアメリカは俗にいう「ソフトランディング」(金利の上昇を最小限にとどめて資産価額の緩やかな上昇とインフレの鎮静化の両立を図ること?)も「ハードランディング」(金利急騰、資産デフレ深化、金融システムの崩壊等に目をつぶってでもバブル&インフレ退治を目指すこと?)もできないだろう、それはスカイダイバーが成層圏から「こうもり傘」一本で地上に向かってダ~イブ!・・・なんてできっこないのと同じこと・・・
なので、この先はオートマチック・・・的に真性インフレが激化していくばかりだから、アメリカはどうあがいても・・・ってことだから、あとはその成り行きを見守ることぐらいしかすることはない・・・はずなんですけれどね・・・?