(前回からの続き)
前回、「真性インフレ」―――実質金利(=名目金利-予想インフレ率)がマイナス圏に沈み、もはやゼロ以上に浮上しない状態―――とは、マネーとしての米ドルの価値・信認の転落が食い止められない事態、といったことを書きました。そのへんは、上述のアメリカの物価&サービス価格のほとんどが上昇一途な様子をみれば明らかですが、このドルに象徴的に関連するところでは・・・やはり原油価格・・・の象徴で、アメリカの生活において絶対に欠かせないガソリン価格の急騰ぶりが指摘できるでしょう。
12日のトムソンロイター記事によれば、11日、アメリカのガソリン価格が史上初めて1ガロン(約3.8リットル)当たり5ドルを超えました。ジョー・バイデン現政権は、戦略的な石油備蓄の放出や石油輸出国機構への増産要請など、あらゆる手を使ってその価格抑制に努めているが、需要が回復しているところにウクライナ危機が起こって原油の需給がひっ迫する懸念が高まった、などにより、同価格に上昇圧力が高まっている、との由です。
これ、まさに上記の反映といえますね。ようするにドル、すなわち本ブログでいう「石油交換券」の価値の下落が石油、なかでも第一に重要なガソリン価格の上昇として顕著に表れている、ということです。コロナ禍からの経済回復で?ロシア産原油の禁輸措置で?何度も書いていますが、違いますよ、それらは表向きの理由であって、真因は実質マイナス金利(ドル<モノ[≒エネルギー]の利回り)の存在、そして、これがけっして解消されることのない真性インフレという金融環境にあるのですから。
したがって、ガソリン・・・が象徴する石油の価格がドル建てで下がることは今後、まず見通せない、と覚悟しておくべきでしょう、アメリカ人ばかりか世界中の人々は。そのあたり上記ロイター記事によると、一部のエコノミストが、ガソリン価格がここまで上がると需要が減少する可能性がある、と指摘したとのことですが、どんだけ甘いんだ、と思わざるを得ませんね。車社会のアメリカでは、いくら値段が上がったからってガソリンの使用量を減らすことが困難なのはもちろん、このとおり同価格の上昇は、需要の増減などではなく真性インフレ(実質マイナス金利)のせいで、というべきですからね。これに照らせば、需要減で価格が下がるかも、なんて期待?、淡すぎでしょうに・・・
ガソリン価格の高騰は石油(エネルギー)価格の高騰と同義です。これらの全体としての燃料費の上昇は、光熱費や物流コスト等の上昇をもさらに促し、ただでさえ実質賃金の低下が続く米家計の生活水準をいっそう悪化させていくでしょう。これを食い止めることは・・・もう(って、とっくの昔から?)不可能だろう、と思っています。
(続く)