(前回からの続き)
米中関係は、とくにアメリカのジョー・バイデン政権の中国に対する姿勢が厳しいことから、今後はさらに悪化していくように思えます。が、前述のように、実はこの両国、貿易面はもちろん、とくに「ドル」(米国債)に象徴される通貨金融面において切っても切れない間柄にあるわけです。したがって、かりに、どちらか一国が相手に対して何らかの制裁的な措置を講じるとしても、肝心のココ(他外貨や金価格に対するドルの価値や米金利等)がダメージを受けてしまえば(ドル・米国債価格が下落し、米金利が急騰してしまえば)自分も大きく傷つきかねないので、結果として大したことはできない、となるはずです。
で、そのあたりを感じさせる直近の例が、22日、中国が新疆ウイグル自治区内の少数民族ウイグル族の人権を侵害しているとしてアメリカとEU、英国、そしてカナダが共同で発動した制裁です。これだけを見ると、米欧諸国は「人権」で中国を強くけん制してきたな、とも思えます・・・が、その中身は、同自治区公安幹部2名の在米資産の凍結等という、中国に猛省を促す・・・ことなんて絶対にできそうもないくらい軽~い(?)もの。思うに、アメリカ(と欧州等同盟国)は、上記のとおり「ドル」に影響が及ぶことのないようなアクションを慎重に選んだため、結果として、こうした弱気な(?)制裁になった、という次第なのでしょう(?)。
このほか、本稿一回目でご紹介の、中国包囲網を連想させる(?)日米豪印(クアッド:Quad)4か国の連携強化や、以前から米軍等が南シナ海で行っている「航行の自由作戦」なども、上記制裁と同様に実効性はない、つまり中国を本気で封じ込めようとする狙いもパワーもあるものではないといえるでしょう。ここで万一、中国に手を出したりしたら、たとえば(意図的・偶発的の違いによらず)米軍等が中国軍に砲撃等をしてしまったりしたら、その瞬間に「戦場」と化してしまうためです・・・って南シナ海とか台湾海峡が、ではなくNY金融市場が・・・
ちなみに、上記の様々なアクションを含めた米中対立に関する内外のメディア報道を概観する限り、上記の点―――「ドル」でしっかりと結びついている両国が決定的な対立関係に陥ることは考えにくい等―――に言及したものはまずありません(とくに、本邦大手メディア報道においては皆無といっていいでしょう)。これを伝えてしまったら、米中両国は深い相互依存の関係にあることが誰にも分ってしまい、米中が対立しているという構図そのものが雲散霧消してしまいますからね・・・
といったことから、米中対立・・・というか、いまのアメリカが中国を危険視するようになっていることの同国の本当の目的は、中国のこれ以上の増長を抑えること・・・とかではなく、そんな中国を抑えるために自分すなわちアメリカの力が引き続き必要だ、ということを日本やEUといった同盟国に分からせることで、その前提として米中の対立の図式をこうして(あたかも、あるかのように)見せている、と考えています。そしてこの点でのキーワードもまた、「ドル」・・・