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【不動産価格に照らせば米は引き続き真性インフレ下に…】米「不動産本位制」が暗示すること⑪

2023-11-03 20:02:37 | アメリカ
前回からの続き)

 先月31日に発表された8月の米ケース・シラー住宅価格指数は案の定?311.5と過去最高値を更新しました。対前月比でプラス0.4%、年初からの7か月で同6.4%、年換算では9.7%という危険なほどの急上昇です。にもかかわらず―――こうして不動産市場の過熱感が史上MAXに達しているというのに―――米FRBはこのたびの金融政策決定会合で利上げを見送りました(現行の政策金利誘導レンジ[5.25~5.5%]の据え置きを決定)。このあたり常識的には非常識の極致?ですが・・・本稿で綴ってきたことからすれば、まあ常識的ですね、アメリカはこうやって「不動産本位制」を極めていく以外にありませんから・・・

 ところで、利上げといえば・・・その効果か、かの国の直近(9月)の物価上昇率(CPI)は前年同月比3.7%プラスと、同月の長期金利4%台前半を下回りました。ということで実質金利(=名目金利―インフレ率)は久々のプラス圏浮上なので、アメリカはついに「真性インフレ」(同マイナス圏が永続する)状態から脱することができたような・・・

 ・・・って早合点しそう?ですが、それでも、かの国は引き続き「真性インフレ」下にあるとみるべきですよ。つまり・・・上記の不動産価格の上昇率に照らしたときの実質金利が相変わらずマイナス圏に深く沈んだまま、ということです。そのあたり上記の数値(年率)で計算すると、政策金利が5%を超える現局面でも、この不動産的な実質金利はマイナス5%を下回るほどの低さという、超~不動産インフレ状態、といえることが分かるわけです・・・

 先述のとおりアメリカは、2013年春以降の日銀の現行金融政策(円安誘導)の強力な後押し(というより突き放し)?によって「不動産本位制」に基づくマネーへの依存度をいっそう高めてきた結果、これまでの10年間で、その不動産価格をほぼ2倍に膨らませました(ケース・シラー値で2013年3月148.0→今年8月311.5)。この間の平均上昇率は年7.7%にもなりますが、他方で米長期金利がこれを上回ったことは一度もありません。となれば、金融(≒利ザヤ稼ぎ)の観点からは、アメリカでは預貯金(米国債投資)などよりも、不動産を買って持つことにずっと合理性がある・・・って住宅ローンを組んで(借金をして)でも、ということになります。そしてそうした環境が10年も続けば、不動産購入者(カネを借りる側)も金融機関(貸す側)も感覚がマヒし、上記価格は当然のように上がり続ける―――実質金利は同じく下がり続ける、つまり不動産インフレが永続する―――との前提でカネの貸し借り額を増やし続けてしまって、その前提が崩れる―――(実質)金利が上がる―――事態に誰も耐えられなくなってしまいました・・・

 繰り返しになりますが、ここまできた以上、もう米不動産価格が下がる(を下げる)ワケにはいきません。だからこそFRBは、上記の、この瞬間のキワドイ局面―――不動産価格急上昇&過去最高に到達―――でも利上げを見送らざるを得なくなった(同上昇のアタマを抑えることができなかった)、ということなのでしょう・・・

 なお、この10年間の不動産価格が年8%近い勢いで一貫して上がり続けてきた、ということは、かの国では、給料や賃金も同じくらいの率で上昇していかないと、住宅を持つこと・・・はもちろん借家をし続ける―――同じように上がっていく家賃を払い続ける―――ことさえも困難になります。が、年10%の所得アップを10年間以上も継続!みたいな恵まれた人はそうはいないはず。でなければ、たとえば、こちらの記事に書いたような「車中生活者」(≒持ち家どころか借家もできなくなって、やむなく自分の車を住まいにして暮らす人々)が増えはしないというものです。他方で「大家さん」(不動産所有者)もタイヘンでしょう・・・って、家賃が高すぎて払えない・借りることができない、となって未収金とか空き室とかが増えるだろうから。かといって家賃を下げたら、その分、収入が減って、今度は自分がローンの支払いに窮するし・・・

 といった具合で、アメリカの「不動産本位制」は、いまや、買う(借りる)側・売る(貸す)側の双方にとっても厳しい局面に至ったといえるでしょう。

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