円>ドル>ユーロ>新興国通貨
現状の円、ドル、ユーロの三大通貨と新興国通貨の強さ(安全度)を比較するとこのようになるでしょう。金融市況が「リスク・オン」となると、安全度の高いほうから低いほうへ、つまり左から右に、「リスク・オフ」となると逆に右から左にマネーが流れる傾向にあるようです。
このオン・オフの影響をもっとも大きく受けるのはブラジルやインド、韓国などの新興国の通貨です。(最近はとくにギリシャ情勢などのユーロ圏に関するニュースが多いですが、)何らかのニュースが伝わると、これら新興国通貨は大量に売買されて為替レートが大きく変動するため、各国は適切な為替管理や金融政策の舵取りに四苦八苦しているようです。
さて、通貨の強弱を測る指標のひとつに長期金利があります。3月時点の日欧米国の10年物国債金利を低い順に並べてみると次のようになっています。
日本0.99%、ドイツ1.80%、アメリカ1.98%、イギリス2.13%
こうしてみると、日本の金利が一番低いことがわかります。一見すると、マネーが金利の低いほうから高いほうに流れ、円/外貨は下落していきそうに感じられますが、実際はそうなるとは限りません。これはあくまで名目上の金利の比較に過ぎません。
それでは実質の金利はどうでしょうか。実質金利を計算するにはインフレ率を見る必要があります。2011年の各国のインフレ率は下記のとおりです。
日本-0.28%、ドイツ2.24%、アメリカ2.47%、イギリス4.51%
「実質金利=名目金利-インフレ率」で実質金利を求めると次のようになります。
日本1.27%、ドイツ-0.44%、アメリカ-0.49%、イギリス-2.38%
なんと、実質金利が「プラス」なのは日本だけで、欧米諸国は軒並み「マイナス」となっていることがわかります(長期金利は3/7時点の数値、インフレ率は2011年の数値で、両者に若干のタイムラグがあるため、正確な実質金利はさらに精査する必要がありますが、このトレンドに大きな変化はないでしょう)。
日本は超低金利(都市銀行の普通預金金利は0.020%!)などとよく言われますが、こうした実質金利の比較で見れば、日本は実は高金利といえそうです(とは言っても1%くらいですが・・・)。円高の本質的な理由のひとつが、この円の実質金利の高さにあるともいえるでしょう。
ある意味で「日本経済は、実質金利をプラスに保ちつつ、長い期間にわたって物価を安定的にコントロールしながら、着実に成長を続けている」という肯定的な見方をすることもできると思われます。わが国は、ノン・インフレ(緩やかなデフレ)でGDPを成長させてきていますから、たいしたものですね(実感は乏しいかもしれませんが・・・)。
(続く)