(前回からの続き)
もちろん日本経済や財政にも大きな問題があることは事実です。経済成長率は高いとは言えないし、財政赤字は対GDP比で2倍に達しています。これだけを見れば、円も日本国債も危なそうに思えます。実際、これらの日本の問題点だけをことさら強調して危機を訴える議論も多いと感じます。
ですが、一国の財政や通貨のリスクの度合いは他国のそれらとの相対比較によって決まるものです。デフォルトの連鎖のような深刻な危機が今この瞬間にも発生しかねないガラス細工のようなユーロ諸国やアメリカと比べると、日本の金融システムはずっとしっかりしています(日本の金融機関はバブルの苦い教訓を生かして?危険なサブプライム債券等の取引にあまり手を出さなかったようですが、本当によかったと思います)。
さらに、経常収支が黒字を保っていること、政府が国内から低利で資金調達できる余裕があること(国民が潤沢な貯蓄を有していること)、そして何よりも、あらゆる分野で世界に冠たる産業分野を有していることなど、相対的・総合的な観点から見て、日本経済の安定度はまだまだ堅固であるといえるでしょう。こうしたことから、日本国債を大量に売却するメリットは見出せず、したがって、日本国債の暴落はほぼありえない、と思うのです。
では万一のことを想定してみましょう。
ヘッジファンドの売りなどをきっかけとして日本国債と円は暴落、長期金利が急騰、日本経済危うし-。これまで述べてきたように、こうした局面は非常に考えにくいですが、多少ムリでもそうなってしまったと仮定してみます。
そのときこそ、日本政府・日銀の出番となるでしょう。円を防衛するため、円買い・ドル売りオペレーションを展開するのです。日本政府には1兆ドルにも及ぶ巨額の外貨準備があります。そのほとんどがドル建てのようです。これらのドル(の一部)を売却して円を買い支えれば、相当な規模の円売りにも十分対抗できるでしょう。
いかがでしょうか。
弱いようで実はしぶとい。わが国にはそんなところがいろいろありますよね。日本国債もそのひとつと思っています。
(「意外にしぶとい日本国債」おわり)