わが国は世界史の最先端にいると思います。
わが国の近・現代史の流れを振り返ると、将軍様を仰ぐ時代、開国そして富国強兵を図る時代、戦争による破滅と高度成長の時代、バブルに踊り、その後始末に苦労する時代、そして東日本大震災を経て新しい時代に向かう途上にある現在・・・となるでしょう。
世界を見渡すと、不思議なことに、多くの国々が、これまでわが国が過去に経験してきた時代をいま、この瞬間に後追いで辿っていることがわかります。たとえばアジア諸国などは高度成長時代(わが国の1960~70年代)、中国などは高度成長からバブル期に入った時代(同1980年代)、そしてアメリカやヨーロッパはバブル崩壊後の景気低迷に苦しむ時代(同「失われた10年」)、といったところでしょうか。
そのためわが国は、自分たちがすでに歩んできた道をいま歩む彼らの行く末をなんとなくイメージできます。きっと中国は、急速な経済成長の反作用として、激しい所得格差や環境破壊、バブル崩壊による混乱に直面する可能性が高いでしょう。アメリカやヨーロッパは、金融危機の深刻化と、それに対応する金融システムへの公的資金投入などが必要となり、財政赤字や資産デフレがさらに悪化して、長いリセッションに悩まされるのでしょう。
生活者の視点から見ても日本は世界の最前線にいます。
わたしたちの身の回りは安全で良質な製品・商品やサービスであふれています(しかもその多くがメード・イン・ジャパンか、日本企業のマネジメントのもとで諸外国で作られたものです)。よく、成長著しいアジア諸国に比べて日本は伸び悩んでいる、といった見方をされることがありますが、ある意味でそれは当然でしょう。日本人はすでにありとあらゆるモノやサービスを手に入れているのに対し、発展途上国の多くの人々はゼロからこれらを買い揃えていくわけですから。日本を訪れる中国人観光客の日本製の炊飯器を熱心に買い求めているうしろ姿に「いつか(日本人のように)優れたモノに囲まれた生活をしたい!」という、切なる願いが感じられます。彼らのゴールは、いまの日本人には当たり前のライフスタイルと言っていいでしょう。
(続く)