宮本顕治『百合子追想』を読む
宮本顕治といっても若い人はご存知ないかもしれませんが、共産党のトップとして戦前から共産党をけん引してきた人。
作家宮本百合子の夫だった。宮本百合子の方は文庫本に名を連ねているのでしょうか。本屋をのぞかないのでわかりませんが、アマゾンにはあると思います。「貧しき人々の群れ」、「伸子」、「播州平野」などの作品がある。
宮本顕治とは戦前プロレタリア作家同盟で知り合った。私には物書き宮本顕治というイメージはあまりなかったのだけれど、戦前の「改造」という雑誌が募集した懸賞論文で「敗北の文学」という芥川龍之介を論じた評論で最優秀作品賞を受賞した文学青年でしたからさすがに文章の格調が高い。
戦後共産党も合法化され、百合子も引っ張りだこの活躍を始めるのですが、戦前非合法活動をしたというので、警察に引っ張られ、劣悪な留置生活ですっかり身体をこわしていて、1951年急死してしまった。
そんな妻の多分に誤解された人生を夫である顕治が解くという形です。
百合子は林芙美子や平林たい子。佐田稲子といった貧しい生活から這い上がった作家ではなく、父は建築家、中流家庭のお嬢さんから共産党員作家になったというので、世間からは一種やっかみを受けていた嫌いがあった。
二人が一緒になった時には妻は有名作家、年も10歳ぐらいうえで、今だったらワイドショーや週刊誌の格好のネタになったでしょう。
顕治によれば百合子は天性の明るさと前向きな心性の持ち主で、どちらかと言うと内向的な自分とは正反対だが、相性はよかったようで、話をしていていくらでも尽きないパートナーだったよう。
但しこれは表向きの話で、年の離れた忙しい妻は夫にかまっている時間がなく、百合子もこれは悩みだったよう。若い秘書役の女性と夫との関係を見て見ぬふりをするしかなかったよう。
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