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木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

息子に生きがいを見出すしかなかった明治の母

2025年04月14日 | Weblog
近所のお寺の「桃の花まつり」に参加。お抹茶を頂く。その後住職のお話とコンサートを聞き、途中退席。午後はカルチャー講座へ。
「文学の体験」、森鴎外の「舞姫」。
津和野の藩医の息子だった森林太郎は家と郷土の期待を一身に背負い、東大の医学部からドイツに留学。そこで今でいうキャバレーのようなところで踊りを披露する女性エリスに出会い魅了される。エリスも東洋から来た留学青年に好感を持ち、二人は恋仲になる。ところが留学の先輩に忠告され、また国費で留学する身であるからエリスと別れ日本に帰国する。ここで話は終わるところだが、エリスは日本に林太郎を追ってくる。ここで林太郎の母が登場するのである。我が家の希望の星、林太郎の将来に異国の女性は邪魔である。郷里の先輩と相談してエリスを帰国させる。このことに関して林太郎は全く主体性を発揮しない。母親の言いなりである。その方が都合がいいからだ。かくしてはるばる日本に追ってきたエリスはドイツへ帰る。何という純粋な女性であり、それに引き換え日本のエリート青年の何という無責任ぶり。それに母親が一枚かんで、その後林太郎は母親言いなりに政府の高官の娘と結婚して一児をもうけるのだが、そりが合わなかったのか離婚。その後母は2度目の結婚を画策するのだが、林太郎はなかなか踏み切れない。すると母は男が一人でいてはダメだと考え、妾に相当する女性まで用意する。「息子ファースト」のそれを疑ってみようともしない今から見るととんでもない母だが、その後やはり高官の娘の美人だが離婚経験のある女性と結婚させる。この女性は林太郎の母を嫌ったが、さすがに今回は離婚ということにはならず、母は最初の妻の息子と共に林太郎とは離れて暮らす。この長男はその後の回想で「父はこの結婚の失敗がなければ軍医総監としての最高の出世を果たしだろうが、作家としては大成しなかっただろう」としている。母と息子の密着はろくなことにはならないが、森鴎外の母も今の時代なら自己実現をはかり、息子に生きがいを見出すしかない母にはならなかっただろう。
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