トランプ次期大統領は、来年の就任早々の政策を発表して、従来の民主党政権が優先してきた「グローバル化と貿易の自由化」を転換する。
一番のやり玉に挙げたのは、[TPP]はアメリカ国民の利益を損なう可能性があるから、離脱する方針に変える、と明言した。
これは新自由主義の経済理論で、30年以上も経済政策の主流を【アメリカ流の推しつけ的】な貿易交渉での、基本政策を転換する決意と受け取れる。
大統領候補の論戦を通じて、トランプ氏が主張してきたことを実行に移す、と公言したのであるから、「驚くには当たらない」発表である。
しかし、グローバル化が当然の流れとしてきた「マスメディアの報道」に洗脳されたエリート層には、革命でも起きたかのような驚きとなった。
トランプ氏が共和党の大統領候補に決定して、一番目の驚きが起きた。
本命であったヒラリークリントン氏を、予想通り当選と報じていた事前調査を覆して、次期大統領に当選して、二度目の驚きだ。
そして大統領に当選後では、本気でグローバル化に抵抗することはあるまいと予想した、「各国の政治家たち」の期待を裏切って、自由貿易を否定した。
貿易を二国間交渉に変更して、アメリカの利益を優先するとの言明に驚いた。
多国間の貿易協定を、二国間ごとの貿易協定に転換すると、どのような事態が予想されるのか、想像してみよう。
まずメキシコとの間では、国境線の警備問題で、【不法越境者の厳重な取り締まり】が、二国間の問題となっている。
メキシコ政府は【不法越境者の増加】を、内心では歓迎しているが、アメリカ側から要求されることで、防止策に協力しなければならなくなる。
ムゲに断ったり、怠慢な姿勢に終始すれば、対抗処置として【輸入品に懲罰的な関税をかけるか、輸入禁止する措置】を取ることが可能になる。
国境線に万里の長城を建設する「最終手段」をうちだす前に成果が出るだろう。
不法に越境して滞在している「メキシコ国籍の滞留者」を、本国に送り返す政策が実行可能になり、1000万人が送り返される可能性が起きる。
すると、どういう事態が起きるのか、トランプ大統領流のやり方で、低所得労働者を人手不足に持ち込むのであろう。
需要と供給の原則に従えば、底辺の低収入労働者賃金は上昇に転じて、トリクルダウンではない「押し上げ効果」で、低賃金の底上げが実現する。
大統領の支持率は大いに上昇するだろう。
低賃金のメリットを求めて、「メキシコに移転した製造業・自動車工場」などは、メキシコに製造拠点を構えたまま、高い関税を支払ってアメリカに輸出する。
それとも工場の改築をして、「製造拠点をアメリカ国内に戻す」経営判断をする。
どちらにしても、アメリカ国内にお金が戻ってくるので、政府は潤うのだ。(続)