庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

設計方針の変更が独断的に実行された本当の理由が不明確だ。

2016-11-03 | 環境問題

東京都の豊洲新市場への移転計画において、地下のモニタリング空間を新たにもりこむ必要性は、純然たる「土壌汚染対策に万全を期す」目的であった。

しかし、そのために、「技術会議」「専門家会議」での、「盛り土を建設計画の前提とする」提言を無視するのは、明らかに組織のルール違反である。

盛り土をした上で、地下にモニタリング空間を設けることは、設計方針として実行可能な提案であったはずである。

なぜ、最前線で建設計画の詳細を具体化する部課長クラスの提案が、正式の設計方針変更として、議論されなかったのであろうか。

今回の処分を検討する上で、この疑問を解明して都民に説明する責任がある。

 

ここで、当時の社会状況の変化を振り帰って、東京都の「豊洲市場設計方針会議」の場が、どのような環境の中で議論されたかを、推定して見てみよう。

東京都のトップの判断によって、【最も汚染物質が蓄積された「東京ガスの跡地」】に、汚染物質が出ることを厳重に管理しなければならない、市場を建設する。

このような理不尽な判断が安易に決定された用地に、専門家会議では、「盛り土をすることで汚染物質を抑制できる」と、甘い想定の方針が決められていた。

実務者の判断が入る余地はほとんどなく、そのままの建設方針に従って、いいなりに進めることもできたはずである。

しかし、部課長会議の技術者の信念では、【盛り土では汚染物質を防げない】と考えて、次善の対策を考える必要があった。

 

その時節に、東日本大震災が発生して、上司の命令通りに設計して建設された【福島第一原発が炉心溶融事故を起こした】。

原子力発電所の基本設計は、アメリカの原発企業の専門家が、方針を決めたとうりに設計され、建設作業は完全に実行されている。

福島原発の建設関係の技術者たちは、真面目に上層部の命令通りに設計し、工事は完璧に施行されたのだ。

しかし、建設地の環境条件は、「アメリカの原発企業」が想定した場所とは全く違って、太平洋の沿岸に面した「津波の襲来のリスク」がある用地であった。

真剣に検討すれば、もっと高台の位置に用地を移すか、「盛り土を高くして」、主要な設備関係は、津波時にも水没のリスクのない高い位置に建設ができた。

 

だが、当時の福島原発の建設関係者は、そんな心配をするよりも「上層部が決めた方針には改善提案もしない」で、組織のルールを守ったのである。

その結果は、日本全体に大きな損害と不信を生み出して、その後処理の膨大な年月と費用を浪費せざるを得ない。

上層部の判断が、甘い想定だと見えたら、たとえ組織上は下位の技術者であっても、毅然として「意見を具申する」のが、本来の技術専門家である。

そのように見ると、東京都の「部課長会議」は、正当な議論をしたのである。(続)