安倍首相が「一億総活躍社会を目指す」と宣言したのは、2015年9月の記者会見であった。
自民党総裁戦で無投票再選された会見で、「アベノミクスは第2ステージに移る」として、「一億総活躍プラン」の中身を「新3本の矢」に差し替えた。
アベノミクスの最初の3本の矢は、「超金融緩和によるダフレ脱却」であるが、3年たっても【ダフレからに離脱は見通しがたたず、経済の好循環は起こらない。】
景気テコ入れの公共工事のバラマキ政策は「工事費の高騰を招き」、全国での工事の遅れ、特に【東北地方の津波災害からの復興にブレーキ】をかけてしまった。
第3の矢の「経済成長戦略」は、未だに姿が見えず、研究段階にとどまる。
安倍内閣の2年9か月の成果は、お粗末の一言につきるが、野党のバラバラ状態に助けられて、内閣支持率は無風状態で維持している。
しかし、このまま「経済の好循環を期待」しているだけでは、国民から見放されるのは時間の問題である。
そこで、国民の誰もが期待する政策目標を広く集めて、それを「威勢の良いスローガン」に仕立てる事で、マインドの向上を図ろうとの作戦である。
野党が全く取り上げてこなかった「少子化対策」を前面に掲げて、「50年後の一億人の日本人口」を目標にしようと、高々と掲げた。
50年後の人口が8600万人に減ってしまうのを「少子化対策」を打ち出して挑戦しようというのである。
「アベノミクスの失敗」を表に出さずに、第2ステージに移るとの言い方も、安倍内閣ならではの「イメージコントロール作戦」の一環である。
「名目GDP目標600兆円」をかかげるなど、国民の目を幻惑する術を心得ている。
現在の500兆円のGDPを、毎年3%名目成長率を達成することで、2020年代の初めには達成できる計算だ。
経済界からは、ありえない数値目標だとの非難が多いが、物価上昇率目標が2%になれば、実質経済成長率は1%程度で実現可能になる。
現実的には、物価上昇率目標2%は黒田日銀総裁の公約であるが、2017年の後半以降に実現すると、粘り腰を見せている。
では、物価上昇率2%、経済成長率1%以上を継続的に実現できる「具体的政策」は何があるのだろうか。
それは、「積極的に人への投資」政策であり、今までの視野に入れなかった「働く人への給与配分を大幅に増加」させる政策である。
謳い文句としては「同一労働同一賃金」を言い出して、「一億総活躍プラン」で実行政策をうちだす姿勢でいる。
正社員よりも4割も実質賃金が低い「非正規雇用社員」の給与を政府の介入で「強制的に引き上げる制度」を実現すれば、企業の人件費負担が増加する。
この増加分は、価格に転嫁することで、物価上昇率の上昇に貢献する。(続)