日本人の食文化の代表であるウナギが絶滅危惧種に指定されて、保護の対象になった。
1994年頃から、中国が日本への輸出を狙って世界各地で[ウナギの稚魚]を大量に捕獲して養殖して育て、ほぼ全量を日本に輸出し始めた。
この低価格のウナギが日本中に広まって、輸入量は急増して年間13万トンに達したが、2000年時点から急速に稚魚の漁獲量が減少し始めた。
2008年に「ヨーロッパウナギ」が絶命危惧種となり、欧州連合は輸出をとめた。
ニホンウナギも同様に稚魚の漁獲減少が続いていたが、規制もなく捕り続けてきたために、ついに絶滅危惧種として保護すべき対象になった。
今は、インド洋に棲むウナギの稚魚を輸入して養殖をして、しのいでいる。
低価格路線に乗った大量消費が招いた【食文化の破壊】の象徴であった。
生態系の保全を無視した商業主義の行きつく先は、資源を絶命寸前に追い込むまで、市場での競争が進んでしまう。
この状態になるまで、消費の拡大を制限することが出来ないのが、現代の「市場原理優先主義」の大きな欠陥である。
これは「食文化やウナギの消費に限った話ではない」と肝に銘じるべきである。
新自自由主義の経済学者は、アメリカ流の掠奪型フロンティアの文化を、経済的にはもっともすぐれた制度だと盲信しているが、愚かなことである。
競争原理優先、自由取引市場優先、貿易自由化最優先、これらは【掠奪型資源消費の経済】であって、長続きしない制度であることは、明らかである。
1990年代からの貿易自由化の流れが、グローバル経済社会を礼賛して、低価格で海外から輸入することを、大歓迎してきた。
ウナギでいえば、一時的に低価格のうな丼をふんだんに食べることが出来たが、もはや、年に一度のうな丼も食べることが出来なくなる。
自民党の歴代政権、特に「安倍政権」は、経済成長優先主義で、自由貿易経済が将来の達成目標だと勘違いをしている。
大企業を優遇して利益を上げることが、日本経済を強くするに違いない、と盲信して、規制緩和と市場競争至上主義に囚われた政策に邁進している。
その悪影響はいたるところにひずみとして、社会・文化を劣化させているのだ。
ウナギの問題は小さいかもしれないが、これは、『豊かで健康的な社会』を作るとは逆行している典型的な具体例として、おおいに反省すべき課題である。