庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

世界の最先端の研究成果は日本の地方から生まれた。

2012-10-21 | 経済問題
技術革新や新事業の芽は、本流や中央からは産まれない。
その理由を書いてきたが、そんなことは信用出来ないと思うのが大多数だ。
しかし、近年の最先端の医療技術の芽は、間違いなく地方の研究者の地道な努力と発想で産み出されたのだ。
今では、誰ひとりとして知らない人はいない「iPS細胞」の発見・発明は、京都大学の山中伸弥教授の業績であり、ノーベル賞を受賞した。
この技術の画期的な成果によって、医療分野での新産業の飛躍的拡大が起きる。

山中教授は、初めは整形外科医を目指す医師の道を選んだが、手術が不得意で外科医になることを断念して、基礎研究の分野に転進している。
医療研究の中央組織でもなく、まさに傍流を歩んできた研究者の一人にすぎなかった。
奈良県の大学で研究室を持って、わずか3人の助手と研究チームを作って、細々と地道な実験に取り組む、小さなグループにすぎなかった。
しかし、目標は大きなビジョンを持って、地味な研究と実験を続けたのである。

大きな転機は、地方の大学では研究予算は微々たる金額で、3人の助手と実験の費用を賄うことも出来なくなってしまった時である。
ここで、国が医療の基礎研究に予算をつけることになり、研究テーマを公募した機会に、山中教授は、「iPS細胞」の発見に向けての研究テーマを申請したのだが、公募の競争率は10倍以上の難関であった。
審査にあたった委員は、誰もが発想の大胆さを認めたが、成功する確率はゼロに近いと判断している。
それでも、山中教授の熱意とぶれない研究目標を評価して、たとえ失敗に終わるにしても、山中教授の研究グループの育成になる、として応募に合格させた。

もし、この審査で選考委員たちが、中央の有名大学や国立研究所の「本流部門の研究」を重視して、山中教授の応募を落選させていたら、ノーベル賞級の成果は生まれなかった。
選考委員たちが、本当の研究成果の芽を産みだすのは、独創的な着眼と、取組みの熱意を評価して、「傍流を偏見の目で見ない」人たちであったのが幸いした。

また、研究の成果は100の取組でも、成功するのは1か2くらいに、成功率は低いことが解っている人たちの目で選考したことも、重要である。
どこそこの政党が、研究のケの字も知らないで、「仕分け対象」にしたら・・・・?