プライマリ・ケア学会の続き。ワークショップ「明日から処方したくなるOC・LEP製剤」に出た。OC(Oral contraceptives 経口避妊薬)で、そのうち月経困難症の保険適応をとっている薬剤がLEP(Low dose Estrogen-Progestin 低用量エストロゲン-プロゲスチン)だ。いわゆる(低用量)ピル。
あおもり女性ヘルスケア研究所の蓮尾豊先生が経口避妊薬(ピル)の話をされた。蓮尾先生はピル普及に尽力している(らしい)。ピルは、1)最も確実な避妊法 2)女性みずからが選択できる 3)多くの利点がある 4)少ない副作用、ということだ。ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類のホルモン剤で構成されている。卵胞ホルモンは1種類だけだが、黄体ホルモンは第1世代から第4世代まである。
ピルは、1)女性ホルモンの分泌を調整して排卵を抑制する 2)子宮内膜を菲薄化して受精卵の着床を抑制する 3)頸管粘液を変化させて精子の子宮内進入を防ぐ、などの作用で確実な避妊効果を発揮する。
基本的に、ピルを毎日1錠ずつ(実薬)21日間服用して、7日間休薬する(あるいは偽薬を服用する)と、消褪出血が起きる。大切な予定の時に月経がぶつかる時は、実薬の服用期間を延ばせば(21日以上の服薬)、月経を遅らせることができる。月経を早める場合は、14日間実薬を服用して休薬すれば消褪出血が起きる。ピルの最大のメリットは月経開始日を自由にコントロールできること。
ピルの副効用として、月経困難症の改善・月経過多の改善・月経不順の改善・排卵痛の消失・月経前症候群の身体症状改善などがあり、子宮外妊娠の減少・子宮内膜症の抑制・子宮筋腫の発症予防がある。
ピル処方の禁忌項目について、チェックシートを用いて確認する。副作用は、頻度は多いが内服継続で3か月以内に消失するものとして、1)不正性器出血(破綻出血) 2)頭痛/悪心(軽度なら継続、耐えられない時は月のピルに変更) 3)浮腫がある。
頻度は低いが起こると重篤な副作用として、血栓症がある。1年以内に多いが特に1か月に起こる。ACHES(エイクス)すなわち、A:Abdominal pain(腸間膜血栓症) C:Chest pain(心筋梗塞・肺塞栓症) H:Headache(前兆を伴う頭痛) E:Eye disorders(視野障害、網膜血管の血栓) S:Severe Leg pain(下肢痛、深部静脈血栓症)をチェックする。リスクはOC非服用者の1~5人/年間/10000人に対して、OC服用者は3~9人とあまり問題にはならない
定期フォローで行うのは問診(ACHES)・血圧測定・体重測定で、初期は1か月毎、以後は3か月毎に行う。また応用編として、緊急避妊の方法もあった(性交渉から72時間以内に婦人科を受診してノルレボを内服するなど)
産婦人科医のいる総合病院の内科医なので、月経に関する問題で受診する患者を診ることはないし。実際に処方する機会はない。処方する医師を増やしたいという企画なので、そういう立場で参加するのは申し訳ない気がする。少なくとも、これまでの「ピルと言えば血栓症で危険」「ピルは特別な人が服用するもの」という認識(誤解)は払拭された。
蓮尾豊先生によれば、産婦人科医でもピルの処方を快く思っていない医師が多いそうだ。受診した患者さんで、月経困難症の話が出た際には、低用量ピルの治療を勧めることはできる。まず当院の産婦人科医の先生方のピルに対する考えと処方に実態を確認してみよう。ファシリテーターの池田裕美枝先生と問診の取り方でちょっとだけ話をした(ミーハーですね)。
お昼の学会ジョイントプログラムで、種部恭子先生の「思春期の性の現状と学校性教育」を聴いた。10代女性(もっと低年齢も含めて)の性の問題を詳しく教えてもらった。離婚した母親の再婚相手、父親、教員など大半は身近な男性が性交の相手になっているそうだ。またSNSで知り合った相手には携帯のやり取りで親しくなった気になっていて、初めて会った時の性交が多いそうだ、避妊の教育を受けていないので、望まない妊娠をして、どこに相談していいか迷っているうちに中絶のタイミングを逃してしまったりする。中学生や高校生で妊娠すると、高卒の学歴がとれずに学校をやめてしまうことになり、普通の就職ができずに風俗でしか働くことができないという。中学生の性教育(指導要領)で「性交」や「避妊」は使用できないそうで、日本の性教育は欧米に比べて相当に遅れている。迫力のある講演で圧倒された(種部先生はちょっと銀座のママ風)。
このような講演を聴けるのが、プライマリ・ケア学会の面白いところだ。