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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

週末の読書

2016年06月19日 | Weblog

 週末は「日本人の9割が誤解している糖質制限」牧田善二著(ベスト新書)を読んでいた。山田悟先生、江部先生とちょっと違う観点で述べられていた。定年前に大学教授を辞めて開業されているのは、何か事情があったのだろうか。血糖を下げることだけ考えるのではなく、脳血管障害や心筋梗塞、癌の発症も配慮した治療をすべきというのは確かだ。

 「僕たちの居場所論」内田樹他著(角川新書)を読み返していた。内田樹先生は出不精で自宅の書斎で仕事をしているが、書斎は家族や門人(合気道)が通るところに作っている。名越康文先生(精神科医)は喫茶店派で、ほとんどの仕事を喫茶店でしているそうだ。内田先生は凱風館という住居兼の合気道道場をもっていて、平川克美先生は喫茶店主もしている。居心地のいい居場所とはという話だが、全体的には友人同士の知的無駄話で、読んでいてとても楽しい気持ちになる。自分は喫茶店派。

 週末に医学書を3冊購入。「胸部X線・CTの読み方やさしくやさしく教えます」中島啓著(羊土社)は研修医向けの本だが、画像でみる肺の基本構造がわかりやすく記載してある。研修医にお勧めだ。あとは「プライマリ・ケアでの女性の診かた」(羊土社)と「ヒラメキ診断推論」野口善令編(南江堂)もわかやすくて良さそうだ、後者は月末の旅行の時に新幹線内で読む予定で購入。旅のお供は「薄い医学書+新書か文庫」を定番にしている。

 気管支肺炎の高齢女性と好酸球性胃腸炎の50歳代男性が入院した。どちらも絶対入院というほどではなかったが、本人家族の希望もあって入院にした。内科の若い先生は、両側下腿紫斑・膝足関節炎・発熱の患者さんを入院させていた(ヘノッホーシェーンライン紫斑病?)

 コブクロの「流星」のCDを購入。「桜」に続いてこれも繰り返し聞いて覚えることにした。世代的に歌えるのはフォーク+ムード歌謡だけだが、最近の曲もちょっとだけ聴いている。

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今年はまず北陸へ

2016年06月18日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。昨日は内科当番で、当直医から2名の入院依頼の連絡がきていた。ひとりは施設入所中の89歳女性(認知症)で、突然意識消失して救急搬入された。頭部CT,頭部MRIと検査しているうちに意識が回復してきて、経過観察のため入院となった。今日は普段の状態に戻っていた。TIA疑いでということだったが、局所症状がないので、椎骨脳底動脈循環不全と表現すべきかももしれない。

 もう一人は88歳男性で、前日から発熱で近医を受診して感冒薬と解熱薬を処方されていたが、高熱で動けなくなって受診した。肺炎はないので、原因がはっきりしませんがということだった。尿路感染症としてセフトリアキソンを点滴してもらうことにした(尿培養と血液培養も出してくれていた)。今日確認すると尿混濁があり、昨日のCTで膀胱壁が肥厚していた。前立腺肥大もある。両側腎臓周囲の脂肪織が若干汚いかもしれない。前立腺による排尿障害を基にした尿路感染症でいいようだ。解熱してきて、食事摂取良好だった。

 昨夜の当直は、この2名の入院の他にも、76歳女性の脳出血(外側型。地域の基幹病院脳外科へ搬送)、心臓センターのある病院で大動脈解離にステントを挿入した86歳男性の背部痛(CTでは特に問題ないようだった)、36歳男性(外国人)の交通外傷(打撲程度ではある)、小児の発熱数人と盛りだくさんだった。外部からの応援の先生だが、寝られませんでしたと言っていた。お疲れ様でした。

 今日は、53歳男性が血便(新鮮血)で内科医院から直接救急搬送されてきた。朝から2回血便があり、医院を受診した時にも出て、一時血圧測定困難となり、冷汗の出現があったそうだ。点滴開始で血圧が110程度になったという。当院に搬入された時は、看護師さんと普通に話ができるくらいに回復していた。血液検査でHb13と若干下がっていた(点滴でもっと下がるだろう)。腹痛はなく、下痢しそうと思ってトイレに言ったら、血液そのものが出たという。大腸憩室出血かと思って、腹部造影CTを施行したが、憩室はなかった。S状結腸の一部が全周性に壁肥厚を呈していた。腹痛の先行はないが、虚血性腸炎なのだろうか。父親が大腸癌で亡くなっているが、これは癌には見えない。

 月末に夏休みをとる予定なので、旅行の計画(北陸)を立てていた。若い人のような動きまくる旅行は疲れるので、余裕のある計画にする。公務員の夏休みは正規には4日間で、有給休暇を1日足して5日にして、さらに土日を含めて1週間にしたりする。長く休むのも逆に調子が悪くなるので、最近は1回の旅行を2泊3日にして、これを2回とるようにしている。

 

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地域医療連携室から3例

2016年06月17日 | Weblog

 今日は地域医療連携室から3名の患者さんのことで、相談された。施設入所中の92歳女性は肺炎疑いでの紹介だった。今週の初めから発熱があり、嘱託医が尿路感染症として抗菌薬(セフトリアキソン)で治療していた。今日は高熱になり、酸素飽和度が低下して痰もからんでいた。これは普通に施設から救急搬入されて、両側誤嚥性肺炎(中下肺背側)で入院とした。

 もう2つは?な話だった。80歳代後半の男性が、悪性リンパ腫(低悪性度らしい)の治療のことで当院内科外来を受診していた。この方はがんセンター血液内科で診断を受けて、無治療で経過観察となった。なったが、その後から治療に対する意見を求めて、複数の病院を受診しているそうだ。専門医のいない当院に来てどうなるものでもない。外来で説明したのが女性医師(大学病院からの応援医師)だったが、診断治療について疑問があれば、もう一度がんセンターで話を聞くように勧めて、診療情報提供書と当院で撮影した胸腹部CT(患者さんの強い希望で施行)の結果を持たせた。今度は当院男性医師の意見を聞きたいと言っているという。セカンドオピニオンを求めたいなら、高次病院に求めるか、少なくとも同レベルの専門医のいる病院を受診するものと説明してもらうことにした。それでも当院を再度受診したいと希望される時は、外来で対応することにした。画像と血液検査の結果を見た。大動脈周囲のリンパ節が多数腫脹して一塊になっている。肝脾腫もある。汎血球現減少症を呈しているので、骨髄浸潤もあるのだろう。

 あとは開業医の先生から20歳代後半の女性で、過換気症候群で紹介とあった。今過換気で困っているわけではなかった。安定剤が処方されていた。当院でうまく対応できるか疑問はあるが、お断りするわけにもいかないので、来週の内科新患に来てもらうことにした。外来で話を聞いてみないとわからない。

 他の病院から腎不全で紹介された90歳代女性は、血液検査で顕微鏡的多発血管炎・急速進行性糸球体腎炎と判断された。腎臓内科の先生(大学病院からの応援医師)と相談して、認知症で体幹抑制をしていることもあり、腎センターのある病院への紹介は適応なしとなった(前の病院で紹介を提案されたが遠方ということで家族が拒否していた)。無難な治療で病勢を抑えて経過をみることになったが、次第に腎機能障害が進行して尿毒症となった。この週末中かと思われる。

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高橋雅士先生の講演~HRCTの読影

2016年06月16日 | Weblog

 昨日は呼吸器セミナーという集まりに出た。出席したのは、高名な放射線科医の高橋雅士先生の講演があったから。30分ちょっとと短い時間だったが、HRCTの解剖と読影の基本を話された。講演の最後に自著の宣伝をされたが、そのうち3冊は持っていて、もう2冊は購入検討中。

 その後、3病院の研修医が指導医と一緒に症例を発表した。症例は、マイコプラズマ肺炎、粟粒結核、IgG4関連肺疾患の3症例。

 マイコプラズマ肺炎の症例は、10代の患者さん・白血球数正常・身体所見に乏しいという臨床的な特徴があり、気管支壁肥厚と小葉中心性の粒状影・スリガラス陰影から浸潤影まであった。マイコプラズマは気道親和性(繊毛上皮細胞に付着)があり、気管支壁肥厚が比較的中枢側まで目立つのが特徴だという。また若年者では広範な浸潤影をきたすのが特徴だそうだ。

 粟粒結核の症例は、陳旧性胸膜炎の既往があり、数か月の経過で体重減少とるいそうがある。胸部CTで両側肺にびまん性に粒状影がランダムに分布していた(小葉中心性ではない)。3回の喀痰検査で結核菌PCR陽性。

 最後のIgG4関連肺疾患はまったくわからなかったが、高橋先生はあっさり診断して、発表した先生方が気づいていないIgG4関連腎臓病(多発性造影不良域)も指摘された。縦隔リンパ節が腫脹して、胸膜と葉間胸膜に結節が多発していた。間質性陰影の多発もあった。その病院では入院時から血清IgG4の上昇を確認していたので、最初から鑑別に挙げていたようだ。TBLBでIgG4陽性形質細胞が少し確認できたが、さらにVATSで確診していた。自己免疫性膵炎はなかった。

 HRCTの診かたを実演されたが、胸部X線も確認しながら、まず冠状断で肺全体をスクロールして全体像を見るそうだ。それから細かく診ていくという。著者の講演を聴くと、顔が思い浮かぶので本が読みやすくなっていい。

 当地域の基幹病院呼吸器科から、70歳代後半男性の転院依頼の連絡が来た。誤嚥性肺炎は治癒したが、食事摂取が進まずに退院のめどがつかないそうだ。当院内科の呼吸器疾患は9割以上が誤嚥性肺炎。

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酸関連疾患

2016年06月15日 | Weblog

 昨日は久しぶりに市医師会の講演会に行った。来月の講演会で座長を頼まれているので、講演会とそれに続く懇親会の雰囲気を確認するためでもある。「酸関連疾患」の講演だった。酸関連疾患とは、酸分泌抑制薬で改善する疾患(そのまんまだ)。従来は逆流性食道炎およびGERD、消化性潰瘍のことだが、新規に機能性ディスペプシアも含まれる。広い意味ではヘリコバクター・ピロリ感染症も含まれる。

 酸関連疾患は50年で様変わりした。その境は、世代でいうと団塊の世代(1964年の東京五輪(あるいは1966年の丙午あたり)で、消化性潰瘍から逆流性食道炎に変わった。その間に、H2ブロッカーの出現、ヘリコバクターピロリ菌の発見、PPIの出現、ピロリ除菌が次々に起こった。萎縮性胃炎は生理的な変化ではなくて、ピロリ菌の感染によるものとなった。

 PPIの副作用としては、長期間の強力な酸分泌抑制に関する懸念だ。高ガストリン血症の影響と悪性病変の発生は問題ないそうだ。胃ポリープ(特に胃底腺ポリープで過形成性ポリープもある)は起こるが、胃癌は起こらない。PPI内服で大腿骨頸部骨折、急性心筋梗塞、認知症がが起こりやすいというのは、それらの疾患を発症しやすい患者さん(高齢者)がPPIも内服していたということらしい。AMIになりやすい肥満者は胸やけでPPIを内服しているなど交絡因子を考えるべきだという。PPIは世界的に大量に処方されているので、その副作用に関する論文は、注目を引くので狙い撃ちにされるらしい。糖尿病ではインクレチン作用でHbA1cを下げる方に働くというのは驚いた。

 P-CABのタケキャブ(ボノプラザン)は効果発現が速く、1日目から胃内pHを上昇させる。PPIは3~4日目から効果が発現する。逆流性食道炎の治療効果では、ロサンゼルス分類A・BではPPIと同等だが、C・Dではタケキャブが良い。タケキャブを使用したピロリ除菌では90%と除菌率が高い。PPI抵抗性のGERDでは、弱酸逆流(PPIで抑えきれない)のタイプはタケキャブが効くが、逆流に関係ないタイプ(NERD)では効かないそうだ。

 PPIの第1世代(タケプロン・オメプラール)はもはや不要で、使用するのは第2世代(パリエット、ネキシウム)かタケキャブですということだった。確かに最近の処方はパリエットかネキシウムで、重症の逆流性食道炎に限ってタケキャブを処方している。ピロリ除菌は全例タケキャブを使用している。今月はボノプラザンを含む除菌のパックが発売される。ボノサップパック400・800(アモキシシリンとクラリスロマイシン)とボノピオンパック(アモキシシリンとメトロニダゾール)。武田薬品共催の会でした。

 懇親会では、整形外科の開業医の先生とお話した。関節リウマチの治療で禁忌がなければ当然MTXを使用して、生物学的製剤も結構使用しているそうだ。高額なので患者さんが同意してくれなくてという。この先生は高齢だが、学究肌で診断・検査をきちんとされる方だ。当院放射線科へ多数のMRI依頼をしてくれる。当地域のリウマチ診療についても全部把握されていた。

 

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緊急透析をお願いします~急性腎前性腎不全?

2016年06月14日 | Weblog

 腎臓内科の先生(大学病院からの応援医師)から入院依頼の連絡が来た。近くの病院の内科から、80歳男性が腎臓内科宛てに紹介されてきた。数日前から調子が悪かったというが、食事はしていた。昨夜から嘔吐がらあり、今朝下痢が2回あったそうだ。食欲もないので、かかりつけのそこの病院を受診した。血液検査で血清クレアチニンが6.0mg/dlと上昇していて、驚いたらしい。高血圧症と閉塞性動脈閉塞症で通院していて、左下肢切断(膝関節から下)の既往がある。ふだんの血清クレアチニンは1.0~1.2だった。浮腫はなく、酸素飽和度は正常域で胸部X線は異常なかった。紹介状には緊急透析を要しますとあったが、高カリウム血症もないので、それはない。

 腎臓内科の先生の話では、嘔吐下痢から急性腎前性腎不全をきたしているので、入院で補液をお願いしますということだった。数日前から嘔吐下痢が続いて相当な脱水症になっているかというと、そこまでではない。患者さんとは普通に会話ができて、看護師さんに冗談を言ったりしている。数日食欲は低下していて水分の摂り方は少なかったそうで、血液検査では血液濃縮の傾向はある。血清カリウムは2.8とむしろ低カリウムだった。嘔吐下痢による喪失を示唆するが、この方は降圧利尿薬を内服していて、ふだんも血清カリウムは2.8~3.0だったので何とも言えない。尿蛋白・尿潜血陽性で円柱は目立たない。

 発熱はなく、腹部は平坦・柔で圧痛はない。紹介先の病院で施行した腹部CT(単純)では、小腸壁が若干肥厚しているようではある。消化液貯留の程度も軽度だった。溶血はない。溶血性尿毒症症候群とは言えないか?腎臓内科の先生の言う通り、入院で点滴をして経過をみることにした。便培養・血液培養まで提出してくれていた。

 これまで急性腎前性腎不全で、どのくらい血清クレアチニンが上昇したか正確には覚えていないが、たぶん3くらいだと思う。ここまで上がったのは見たことがない。入院前にこっそりANCAやANAも提出しておいた。あわてて腎センターのある専門病院に送るようにならないでほしいが。

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プライマリ・ケア学会(その3)~リウマチ・ポケットエコー・診断エラー

2016年06月13日 | Weblog

 内科学会とのジョイントプログラムで高林克日己先生の「リウマチ診療の進歩」を聴いた。2010年のACR/EULARの関節リウマチ分類基準は4つの項目、すなわち1)腫脹なたは圧痛のある関節数 2)血清学的因子(RF・抗CCP抗体) 3)滑膜炎の持続期間(6週間未満か以上) 4)急性期反応物質(CRP・ESR)のうち、6点以上で関節リウマチと診断を確定する。関節数だけでは橙でも5点にしかならない、など良くできていると言われた。

 進行性・予後不良例は、1)抗CCP抗体が100以上 2)MRIで骨びらん 3)炎症性変化が強い(CRP・MMP-3)。最初の2年で一気に進行する(window of Opportunity)ため、治療は早ければ早いほど良い。診断したらすぐにDMARDs(メトトレキサートMTX)を使用して、3か月経過して改善すればMTXを継続し、改善しなければバイオ(生物学的製剤)を使用する。

 MTXはがRAのアンカドラッグで、禁忌がなければMTXで治療を開始する(MTXは葉酸代謝阻害薬で、大量に使用すれば抗癌剤)。妊婦・授乳時には使用できない、また高齢者には注意して使用する。8Cap・16mgまで使用できるが、多くの人はそこまでの量は副作用で無理。(今日の治療指針では通常は、3~4Cap/日から開始。副作用を確認して増量。ただし高齢者・軽度腎障害では2~3Cap/日から。) 24~48時間後にフォリアミンを併用する。葉酸を多く摂取(サプリメント・青汁・海藻類・サザエ)していると、効果がなくなってしまう。MTXの副作用は、1)間質性肺炎(MTX量と無関係) 2)口内炎・舌炎(フォリアミンで予防) 3)急激は白血球減少(高齢者・感冒に注意)。

 MTXで効果不十分な時は、生物学的製剤を使用する。TNF阻害薬として、レミケード(インフリキシマブ)・エンブレル(エタネルセプト)・ヒュミラ(アダリムマブ)。これらは、1)早期治療するほど効果が高い 2)骨が修復される 3)MTXと併用した方が効果が高い 4)改善すれば休止もできる。ただし、1)値段が高い(4万/月)2)重症の肺感染症をきたす 3)悪性腫瘍合併では使用できない 4)原因に対する根本的治療ではない。大阪大学で開発した、抗IL-6受容体のアクテムラ(トシリズマブ)が一番有効である。ただし、感染症併発が多く、CRPなど炎症反応が上昇しない・発熱がないなど感染症の発症に気づきにくいので、専門医が使用する。高齢者には不向き。

 症状がない(腫脹・圧痛)、炎症反応(CRP・ESR)が陰性化した場合は、休薬できる。しかし、休薬できるのは2/3で、そのうち1/2/が1年で再燃するので、休薬継続できるのは1/3だけになる。

 生物学的製剤が使用できない時は、MTXに古典的なDMARDs(リマチル・アザルフィジンEN)を併用する(DMARD3剤併用療法)。ステロイドはプレドニン3mg/日以下の少量にとどめる。NSAIDsはステロイドを併用で消化性潰瘍をきたす。

 検査は、MRIで骨びらんを見る。関節エコーはドップラーで血流シグナルの有無を見る。視診・触診でわからない病変を検出できる。治療はTreat to Target(T2T)で、臨床的寛解(症状を抑える)から構造的寛解(骨破壊を抑える)、機能的寛解(普通の生活かできる)をめざす。

 フォロ-中の注意は、1)腱断裂(早期手術) 2)単関節腫脹(穿刺排膿) 3)発熱(MTX中止) 4)呼吸困難(MTXで間質性肺炎、生物学的製剤でカリニ肺炎) 5)疼痛(炎症か変形・強直か) 6)手指の腫れ・炎症反応上昇(専門医へ) 7)終末期(NTM,るいそう)。

 ワークショップは、「ポケットエコー」と「診断エラー」に出た。ポケットエコーは看護師さんも使えるようにしようというもので、まずは膀胱エコーから始めるという話だった。ポケットエコー「MIRUCO」は16万円。

 診断エラーの要因は、単なる医師の疲れなどもあるが、患者に対する陰性感情(陽性感情も注意)、他者の得た病歴や診察への過度の依存(病名付きの申し送りをそのまま信じる、専門医が一度診ている)、早期閉鎖(病名を決めつけてしまう)、アンカリング効果・確証バイアス(一度病名をつけてしまうと、合わないことも合っていると思い込む)などがある。帰りに、徳田安春先生の「見逃してはならない疾患の除外ポイント The診断エラー学」医学書院を購入した。

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プライマリ・ケア学会(その2)~OC・LEP製剤

2016年06月13日 | Weblog

 プライマリ・ケア学会の続き。ワークショップ「明日から処方したくなるOC・LEP製剤」に出た。OC(Oral contraceptives 経口避妊薬)で、そのうち月経困難症の保険適応をとっている薬剤がLEP(Low dose Estrogen-Progestin 低用量エストロゲン-プロゲスチン)だ。いわゆる(低用量)ピル。

 あおもり女性ヘルスケア研究所の蓮尾豊先生が経口避妊薬(ピル)の話をされた。蓮尾先生はピル普及に尽力している(らしい)。ピルは、1)最も確実な避妊法 2)女性みずからが選択できる 3)多くの利点がある 4)少ない副作用、ということだ。ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類のホルモン剤で構成されている。卵胞ホルモンは1種類だけだが、黄体ホルモンは第1世代から第4世代まである。

 ピルは、1)女性ホルモンの分泌を調整して排卵を抑制する 2)子宮内膜を菲薄化して受精卵の着床を抑制する 3)頸管粘液を変化させて精子の子宮内進入を防ぐ、などの作用で確実な避妊効果を発揮する。

 基本的に、ピルを毎日1錠ずつ(実薬)21日間服用して、7日間休薬する(あるいは偽薬を服用する)と、消褪出血が起きる。大切な予定の時に月経がぶつかる時は、実薬の服用期間を延ばせば(21日以上の服薬)、月経を遅らせることができる。月経を早める場合は、14日間実薬を服用して休薬すれば消褪出血が起きる。ピルの最大のメリットは月経開始日を自由にコントロールできること。

 ピルの副効用として、月経困難症の改善・月経過多の改善・月経不順の改善・排卵痛の消失・月経前症候群の身体症状改善などがあり、子宮外妊娠の減少・子宮内膜症の抑制・子宮筋腫の発症予防がある。

 ピル処方の禁忌項目について、チェックシートを用いて確認する。副作用は、頻度は多いが内服継続で3か月以内に消失するものとして、1)不正性器出血(破綻出血) 2)頭痛/悪心(軽度なら継続、耐えられない時は月のピルに変更) 3)浮腫がある。

 頻度は低いが起こると重篤な副作用として、血栓症がある。1年以内に多いが特に1か月に起こる。ACHES(エイクス)すなわち、A:Abdominal pain(腸間膜血栓症) C:Chest pain(心筋梗塞・肺塞栓症) H:Headache(前兆を伴う頭痛) E:Eye disorders(視野障害、網膜血管の血栓) S:Severe Leg pain(下肢痛、深部静脈血栓症)をチェックする。リスクはOC非服用者の1~5人/年間/10000人に対して、OC服用者は3~9人とあまり問題にはならない

 定期フォローで行うのは問診(ACHES)・血圧測定・体重測定で、初期は1か月毎、以後は3か月毎に行う。また応用編として、緊急避妊の方法もあった(性交渉から72時間以内に婦人科を受診してノルレボを内服するなど)

 産婦人科医のいる総合病院の内科医なので、月経に関する問題で受診する患者を診ることはないし。実際に処方する機会はない。処方する医師を増やしたいという企画なので、そういう立場で参加するのは申し訳ない気がする。少なくとも、これまでの「ピルと言えば血栓症で危険」「ピルは特別な人が服用するもの」という認識(誤解)は払拭された。

 蓮尾豊先生によれば、産婦人科医でもピルの処方を快く思っていない医師が多いそうだ。受診した患者さんで、月経困難症の話が出た際には、低用量ピルの治療を勧めることはできる。まず当院の産婦人科医の先生方のピルに対する考えと処方に実態を確認してみよう。ファシリテーターの池田裕美枝先生と問診の取り方でちょっとだけ話をした(ミーハーですね)。

 お昼の学会ジョイントプログラムで、種部恭子先生の「思春期の性の現状と学校性教育」を聴いた。10代女性(もっと低年齢も含めて)の性の問題を詳しく教えてもらった。離婚した母親の再婚相手、父親、教員など大半は身近な男性が性交の相手になっているそうだ。またSNSで知り合った相手には携帯のやり取りで親しくなった気になっていて、初めて会った時の性交が多いそうだ、避妊の教育を受けていないので、望まない妊娠をして、どこに相談していいか迷っているうちに中絶のタイミングを逃してしまったりする。中学生や高校生で妊娠すると、高卒の学歴がとれずに学校をやめてしまうことになり、普通の就職ができずに風俗でしか働くことができないという。中学生の性教育(指導要領)で「性交」や「避妊」は使用できないそうで、日本の性教育は欧米に比べて相当に遅れている。迫力のある講演で圧倒された(種部先生はちょっと銀座のママ風)。

 このような講演を聴けるのが、プライマリ・ケア学会の面白いところだ。

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プライマリ・ケア学会~ユマニチュード

2016年06月12日 | Weblog

 昨日今日は東京浅草で開催されたプライマリ・ケア学会に参加した。昨日は東京医療センターの本田美和子先生の「優しさを伝えるケア技術・ユマニチュード」を聴いた。これを聴いただけでも行った甲斐はあった。満員立ち見大勢の大盛況だった。

 ユマニチュードの技術は「見て、触って、話す」だが、実際には認知症の患者さんを病院側の要求に従わせようとしているだけだという。「見る」は、認識できるように20cmくらいの正面から患者さんと目を合わせる。「触る」は指先でつまむように触るのではなく、手全体であるいは手から肘までで患者さんに優しく触れる。「話す」は病院側の視点でしてほしいことを指示するのではなく、患者さんにとって気持ちのいいこと、嬉しくなることをしていると、優しく語りかけながら作業を行う。記銘力障害で同じことを何度も訊いてきたり、機嫌が悪くなった時も、記憶していることに話題を変えたり、できることを褒めてあげれば、お互いが嬉しくなるようなコミュニケーションをとることができる。大声が上げて口腔ケアや入浴を拒否する患者さんが、ユマニチュードの技術によってケアを受け入れてADLが改善する様子を見ると、その変化にびっくりする。当院ではユマニチュードの導入はどうしているのだろうか。看護部長さんに訊いてみよう。

 

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デカドロンが効いた?~肝細胞癌

2016年06月11日 | Weblog

 3月に87歳女性が腹痛で入院した。右側腹部痛だったので、結腸憩室炎などを考えていたが、腹部CTで肝右葉に腫瘍があった。胃腸や膵臓に腫瘍はなく、AFP4万という値から肝細胞癌と判断された。B型・C型肝炎は陰性で、アルコール性でもなく、そもそも肝硬変はなかった。入院時は右側腹部に圧痛ありと判断していたが、どうも肝臓自体(腫瘍による肝腫大(肝被膜)による鈍痛らしい。疼痛自体はアセトアミノフェンの投与で軽快した。

 同居している息子夫婦にすれば、思いがけない癌の話になった。治療は厳しいので経過観察かと判断されるが、がんセンターにセカンドオピニオンを訊きにいきますかと問うと、行かなくてもいいと言われた。入院当初の痛みが軽快して食事もとれるので、退院してできるだけ自宅で過ごす方針とした。最初は2週間で、その後1か月おきの通院にしていた。先週家族が外来に来て、食欲が落ちてきて倦怠感もあり、次週の受診時にそのまま入院させたいと言われた。

 今週受診した時に、患者さんも入院に同意したので、入院とした。今回は単純CTだけ撮ったが、明らかに腫瘍が増大していた。食欲不振と倦怠感にステロイド(デカドロン)を使用してみたら、案外食欲が良くなった。することもないのでベットに寝ているが、トイレまで自分で歩行できる。ベットサイドに行くと、むくっと素早く起き上がる。これはもう1回外来に戻せるかもしれない。(3月のCTと今回のCT)

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