昨日は久しぶりに市医師会の講演会に行った。来月の講演会で座長を頼まれているので、講演会とそれに続く懇親会の雰囲気を確認するためでもある。「酸関連疾患」の講演だった。酸関連疾患とは、酸分泌抑制薬で改善する疾患(そのまんまだ)。従来は逆流性食道炎およびGERD、消化性潰瘍のことだが、新規に機能性ディスペプシアも含まれる。広い意味ではヘリコバクター・ピロリ感染症も含まれる。
酸関連疾患は50年で様変わりした。その境は、世代でいうと団塊の世代(1964年の東京五輪(あるいは1966年の丙午あたり)で、消化性潰瘍から逆流性食道炎に変わった。その間に、H2ブロッカーの出現、ヘリコバクターピロリ菌の発見、PPIの出現、ピロリ除菌が次々に起こった。萎縮性胃炎は生理的な変化ではなくて、ピロリ菌の感染によるものとなった。
PPIの副作用としては、長期間の強力な酸分泌抑制に関する懸念だ。高ガストリン血症の影響と悪性病変の発生は問題ないそうだ。胃ポリープ(特に胃底腺ポリープで過形成性ポリープもある)は起こるが、胃癌は起こらない。PPI内服で大腿骨頸部骨折、急性心筋梗塞、認知症がが起こりやすいというのは、それらの疾患を発症しやすい患者さん(高齢者)がPPIも内服していたということらしい。AMIになりやすい肥満者は胸やけでPPIを内服しているなど交絡因子を考えるべきだという。PPIは世界的に大量に処方されているので、その副作用に関する論文は、注目を引くので狙い撃ちにされるらしい。糖尿病ではインクレチン作用でHbA1cを下げる方に働くというのは驚いた。
P-CABのタケキャブ(ボノプラザン)は効果発現が速く、1日目から胃内pHを上昇させる。PPIは3~4日目から効果が発現する。逆流性食道炎の治療効果では、ロサンゼルス分類A・BではPPIと同等だが、C・Dではタケキャブが良い。タケキャブを使用したピロリ除菌では90%と除菌率が高い。PPI抵抗性のGERDでは、弱酸逆流(PPIで抑えきれない)のタイプはタケキャブが効くが、逆流に関係ないタイプ(NERD)では効かないそうだ。
PPIの第1世代(タケプロン・オメプラール)はもはや不要で、使用するのは第2世代(パリエット、ネキシウム)かタケキャブですということだった。確かに最近の処方はパリエットかネキシウムで、重症の逆流性食道炎に限ってタケキャブを処方している。ピロリ除菌は全例タケキャブを使用している。今月はボノプラザンを含む除菌のパックが発売される。ボノサップパック400・800(アモキシシリンとクラリスロマイシン)とボノピオンパック(アモキシシリンとメトロニダゾール)。武田薬品共催の会でした。
懇親会では、整形外科の開業医の先生とお話した。関節リウマチの治療で禁忌がなければ当然MTXを使用して、生物学的製剤も結構使用しているそうだ。高額なので患者さんが同意してくれなくてという。この先生は高齢だが、学究肌で診断・検査をきちんとされる方だ。当院放射線科へ多数のMRI依頼をしてくれる。当地域のリウマチ診療についても全部把握されていた。