なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

意識障害?

2022年02月18日 | Weblog

 水曜日の当直の時に、救急隊から意識障害の52歳女性の搬入依頼が来た。バイタルはまったく問題ないが、開眼しない反応しないという。

 現在は隣の県の在住だが、当地で母親の病状が悪化して来ていたそうだ。亡くなって、葬儀の最中だった。

 救急隊は最初に地域の基幹病院に意識障害として搬入依頼をしたが、バイタル安定と精神科通院を伝えると、受け入れてもらえなかった。意識障害だけだと受けたかもしれないが、精神科通院でひっかかったのだろう。

 救急隊も精神的なものと判断しているような話ぶりだった。精神科の診療内容が分からないが、意識障害の鑑別を要するので、来てもらうことにした。

 搬入されると、確かに痛み刺激でもまったく反応がなかった。開眼させようとすると、案外簡単に簡単に眼瞼を開くことができた。ぎゅっと閉眼して抵抗するかと思ったが、そうではなかった(転換性障害でみられる)。

 

 それ以外のバイタルはまったく正常なので、付き添ってきた夫に話を聞いた。母親は他の病院に大腸癌術後・肝転移・肺転移で入院していた。先週金曜日に危篤と連絡があり、実家に来ていた。母親は土曜日に亡くなって、実家にとどまってそのまま葬儀に参加した。

 夫の隣で椅子にすわっていたが、ぐったりとしているのに夫が気づき、倒れないようにそのままの姿勢でささえたそうだ(正しくは横臥させた方がよい)。呼びかけても反応がないので、横臥させた。少し様子をみたが、変わらなかった。姉妹からも促されて救急要請をしたという。

 新型コロナのワクチン接種の時にも同様の症状があり、これまで数回同じようなことはあったそうだ。夫は特に慌てている様子はない。これまで興奮することが時々あるが、理解不能な話をすることはないという。

 

 そのまま様子をみるのもないので、痛み刺激で反応をみた。胸骨刺激は手指が痛くなるので、爪をボールペンで刺激することにした(横に充ててその上から押す)。

 それでも反応がなかった。薬物中毒の可能性があるかとも思ったが、長く刺激していると顔をしかめて薄く目を開けてきた。さらに刺激を続けると、はっきり開眼した。話しかけると返答できる。非けいれん性のてんかんでもないようだ。

 

 精神科に通院している病名を訊くと、うつ病と答えた。統合失調症ではないという。精神科には30歳代から通院している。薬手帳を見ると、抗精神薬のセロクエル150mg/日と長時間作用の安定剤と睡眠薬だった。抗うつ薬は入っていない。うつ病の処方らしくはない。

 話しぶりはおとなしく、明らかな境界性パーソナリティ障害らしくはないが、短時間の接触ではわからない。精神科ではどう診断されているのだろう。

 母親の死亡がショックだったとは言っていた。それは確かだろう。しかし心気症的な人としても、セロクエルをこの量出すだろうか。

 血液尿検査と頭部CT・胸部X線・心電図と一通り検査したが、異常はなかった。本人と夫には脳血管障害や身体的な疾患は否定的で、精神的なものだろうとだけ伝えた。その後1時間経過をみたが、特に変わりないので帰宅とした。

 

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