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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「矢野流! 感染予防策の考え方」

2018年10月05日 | Weblog

 「矢野流! 感染予防策の考え方」矢野邦夫著(リーダムハウス刊)は、興味を引く具体例(秀逸)が豊富で、会話調の文章が気持ちよくてスイスイ読めてしまう。講演は聴いたことことがないが、きっと上手なのだろう。総論としてはこれで充分だと思う。

 1.標準予防策

 標準予防策は「スタンダード・プリコーション (Standard precaution)」の邦訳。標準と訳されているが、これは普通というゆるい意味ではない。標準予防策は「当然のこととして必ず実施すべき、しかも極めてレベルの高い感染予防策」。標準予防策の大原則は、

汗を除くすべての血液、体液、分泌液、排泄物、傷のある皮膚、粘膜には感染性の病原体が潜んでいるかもしれない!

 標準予防策は、手指衛生、個人防護具(手袋、マスク、ゴーグル、フェイスシールド、ガウン)の装着、汚れた患者ケア危惧の取り扱い、環境の維持管理、リネンの処理、患者配置、針およびその他の鋭利物の取り扱い、咳エチケット、安全な注射手技、腰椎処置におけるサージカルマスクの装着。

 2.手指衛生

 手指衛生は、石鹸と流水またはアルコール手指消毒薬で行う。基本はアルコール手指消毒

 ただし、1)手が視覚的に見て汚れているか蛋白性物質で汚染されている(アルコールの効果が減弱)、2)ノロウイルス(アルコールに抵抗性)、3)クロストリジウム・ディフィシル(芽胞はアルコールで死滅しない)では石鹸と流水で手洗い。石鹸と流水で手洗いしたあとにアルコール手指消毒はしない(手荒れで手に付着する細菌数が増える)。

 手指衛生の5つのタイミングは、1)患者に触れる前、2)清潔/無菌操作の前、3)体液暴露の危険性の後、4)患者に触れた後、5)患者周囲に触れた後(WHO「医療ケアにおける手指衛生ガイドライン」)。要は患者さんに触れる前と後、処置の前と後に手指衛生をする。

 3.個人防護具

 個人防護具(PEE:protective personal equipment)は手袋、ガウン、ゴーグル、フェイスシールド、マスク。手袋(患者さんごとに交換)・マスクは必ず行うが、ガウンなどは汚染される時に(選択して)装着する。

 マスクは、通常はサージカルマスクを使用するが、空気感染する疾患(結核、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)ではN95マスクを使用する。

 4.環境清掃

 医療従事者の手指が環境表面に触れて病原体が付き、その手指で眼・鼻・口の粘膜に擦れるとそこから病原体が内々に入って感染症を引き起こす。手指の高頻度接触表面(ドアノブなど)は重点的に清掃する(次亜塩素酸ナトリウム)。手指の低頻度接触表面(床、壁、窓のカーテン)は肉眼的に汚染した時の清掃で充分。ただし、ノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシル、多剤耐性菌では次亜塩素酸ナトリウムで消毒する

 5.感染経路別予防策

 標準予防策は、手袋・ガウン・ゴーグル・フェイスシールド・マスクを状況に応じて選択する。感染経路別予防策では、予防策別に装着すべき個人防護具が決められている。接触予防策ではガウンと手袋飛沫予防策ではサージカルマスク空気予防策ではN95マスクが必須になる。

 6.院内ラウンド

 観戦防止対策課さん算定条件に感染対策チームによる週1回程度の院内ラウンドが実施が義務付けられている。院内ラウンドは現地視察で、報告書では見えてこない現場の情報を目で見て把握する。

 7.耐性菌対策

 広域抗菌薬の使用制限は、耐性菌を発生させない・保菌者を発症させない。感染対策は耐性菌を蔓延させない。

 

矢野流!感染予防策の考え方―知識を現場に活かす思考のヒント

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