なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非結核性抗酸菌症疑いとしたが

2016年08月26日 | Weblog

 昨日施設からの紹介で65歳女性が内科新患を受診した。5年前に左小脳と延髄外側の脳梗塞を発症していた。何とか嚥下訓練で経口摂取できるようになり、施設に入所したのだった。最近食事摂取量が低下して、体重が減少していた。嚥下障害もあるが、食べ物をごみ箱に捨ててしまうなど拒食の傾向もあるそうだ。発熱があり、施設内で抗菌薬を投与したと紹介状に記載されていた。

 嚥下障害からの誤嚥性肺炎ならは、肺炎の治療をして、その後胃瘻造設という流れになる。ところがこの方はそう単純にはいかなかった。まず、胃瘻造設をご本人が拒否している。構語障害はあるが、ちゃんと会話はできて判断力もある。患者さん本人が断固として拒否した場合、勝手には処置できない。紹介状に現在の病状を診断してほしいとあったので、外来で一通り検査することにした。

 頭部CTでは以前の梗塞巣が描出された。細かく再発していると頭部MRIでないと評価できないが、神経症状として新規の症状はなかった(MRIはいったん保留とした)。胸部X線・CTで両側肺に気管支拡張症があり、中小の空洞形成と浸潤影があった。喀痰検査をしたいが、痰は出ないという。この肺病変をどう評価するか。

 副鼻腔炎の症状はないそうだ。以前の胸部X線はあるが(概ね異常なし)、CTはなかったので比較しにくい。気管支拡張症もあり、非結核性抗酸菌症を疑った。これは呼吸器科の専門医に診てもらった方がいい。施設では地域の基幹病院にも入所者を紹介してみてもらうこともあるそうだ。そこの呼吸器科で相談してもらうことにした。施設から紹介してもらうことにして、施設あてで検査所見を記載した返事を書いて、画像をCDに入れて添付した。

 今日改めて画像を見た。肺気腫があって気腫性変化に肺炎の浸潤影が重なると、このような陰影になるのかもしれない。非結核性抗酸菌症疑いは間違いだったか。それでも、これだけはっきりした不整な気管支拡張像があると、気腫+浸潤影だけではないとも思う。まあ専門医に診てもらうのがいいのだろう。

 後で思い出したが、この患者さんは当院で清掃の仕事をしていた。仕事中にめまいを訴えて、内科新患に回されて、新患担当の先生(大学病院から出張)が頭部CTを行った。明らかな病変はないとされて、処置室で点滴していた。私が申し送りを受けて診察すると、構語障害などの脳神経症状があったので、頭部MRIを行った。左小脳に拡散強調画像で脳梗塞を認めた(その日も薄く出ていたが、翌日には延髄外側の梗塞もはっきり描出された)。神経内科に治療を依頼して、入院となった。この方は独身で弟さんがキーパーソンだが、あまり関係は良くないらしい。入院後の経過を少し追ってみていたが、入院が長くなったので、その後どうなったかはみていなかった。

 肺気腫+誤嚥性肺炎と診断されれば、胃瘻造設を含めて当院に戻されると思われるが、頑なに胃瘻を拒否された時はどうしようか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする