新緑の季節

ヌルリと黒っぽかった塊が、湯気の立つお釜に放り込まれる。それを長いしゃもじで掻き回すと、みるみる色が変わっていった。
その緑のなんと鮮やかなことか。

今年も坂ノ下あたりの由比ヶ浜では、ワカメ漁が始まった。
ここは港がないので砂浜に船をあげて、いきなり煮る、洗う、干すという工程である。天気にもよるが、２～３日で干ワカメになるという。
茹で上がる時間を見計らったように、近所の人たちがやってきた。
「茹でたのはウチ用、干したのはいつも親類に送ってるのよ」
両手に袋を提げたおばあちゃんが言う。毎年この季節は浜で買い求めるのを楽しみにしているらしい。
ワカメ漁と作業、そして浜売り。これも鎌倉の風物詩である。