「このバスは◯◯へ行きますか」
昨日のお昼近く、娘が駅のバスターミナルで先に並んでいたおばあさんに尋ねたのだそうだ。
「たぶん行くと思うけど・・・それよりあなたこんな時間にどうしたの?」
「これから就職試験なんです」
「えっ? 学生さんでしょ」
「はい」
どう見ても、バリバリの女子高生ルックである(笑)。
ただ、最近は就職といえば大卒が定着し、高卒で就職するイメージがおばあさんには浮かばなかったのかもしれない。
ウチの娘は高校を受験するときから既に「大学や専門学校には行かない」と宣言していて、だったら就職率のいい普通科以外だろうと商業高校を選択していたのだ。おかげでいくつも検定や資格を取り、授業でビジネスマナーまで身につけ、たぶんそこらの大学生よりすぐに社会に対応できるはずである。
「そう、高校生でねぇ、エライわねぇ」
何がエライのかわからないが、とりあえず理解はしてくれたようだ。
バスに乗り込む際、娘が運転手さんに◯◯に行くかどうか尋ねようとしたら、おばあさんに先を越されちゃったそう(笑)。
「停まるそうよ」
嬉しそうに教えてくれた。
さらに、走行中そのバス停の名がアナウンスされるや否や、ボタンまで押してくれた。もちろん、おばあさん自身が降りるのはまだ先だというのに。そして、振り向いて、さかんに「ここよ」と目配せしてくれる。
停車し出口に向かうと「頑張るのよ、落ち着いて!」と声をかけてくれたという。
「ありがとうございます」と答えた娘より、落ち着いていなかったのは、たぶんおばあさんの方。見えなくなるまで、バスの中からずっと手を振り続けていたという。しまいには乗客みんながこちらを見るので娘は一人で恥ずかしかったそうだ。
そんな思いもかけない体験が、緊張していた娘をリラックスさせてくれたことは確かである。受かったら、そのおばあさんのおかげだ。
見ず知らずの人を想う、こんな光景がまだあるんだ。
ちょっとおせっかいが過ぎるくらいの気持ちが、なんだか嬉しい。
写真は・・・雨が一休みしたら陽が差した。
この話を聞きながら、カミさんいきなり泣き始めました。
でも、言ってやったんです。
「あなたの20年後を見ているようだよ」と。
だから大丈夫。絶滅しません(笑)