湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

レトルトな喫茶店

2007-08-27 23:54:19 | 本郷後楽園昼休み散歩


「あっ、大変だよ」
と、向かいに座っていたこの方が、食べていたカレーのお皿の中にビニールらしきものを発見した。
「ワッ、大変どころの騒ぎじゃないぞ。ほら!」
それを割り箸でつまみ上げてみるとお皿の大きさほどのラップで、どうやらご飯が包まれていたようなのだ。
「ご飯が固まっている感じだったんだよな」
つまり、看板メニューとなっている『ボリュームカレーライス』のライスは、チンしたものだったというわけ。
お店の名は伏せておこう。加賀屋にいく途中にあったレトロな喫茶店。
雰囲気は悪くはないのだが、昼どきというのに先客は一人。料理を待つ間に交わした「やっちゃいましたね」「だな」という会話が、見事に現実となった。
さすがにこれは言わないと、と僕は主張したのだが、心やさしきこの方は「いい」と言うのだ。
「だって、ほら」
アゴの指すほうを見れば、ウエイトレスの方だけでなく、カウンター内の調理担当の方も、かなりお年を召していらっしゃる。大目に見てあげようではないかと。なんと寛大な、なんと慈悲にあふれたふるまい。「教えるべきだ」といった自分が恥ずかしい。
でも、ちょっと待って。おや、僕が頼んだ『ナボリタン』の中にも、なにやら小さなビニール片が…。青いインクの文字も判別できるではないか。具はハムの小片が二切れしか入っていなかったのにだ。


じゃあ、とりあえずそのラップ、灰皿の上に置いといてみようということになった(笑)。
おばさまが、お水を注ぎに来たり、お皿を下げたり、コーヒーを置きにと何度もやってきた。その度に絶対に灰皿が視界に入っているはずだが、まったく気に止める様子はない。
なるほど!そーいうことか!
年をとれば目も悪くなる。悲しいけれど、それが現実。つまり、透明なものは目視できないのだ。僕たちもやがてこうなるのだから、やはり許そうではないか。遂に、僕らの意見はここに一致をみた。
こうなると、なにか高原の白樺の間を走り抜ける風のような、まことに清々しい気分だ。
あとは、このお店に訪れるすべての人が、僕たちのような心の持ち主であることを祈るばかりである。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿