湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

鎌倉で再会

2011-11-22 23:00:12 | ぶらぶらミュージアム散歩


写真の女性、実はカウンター式のキッチンやユニットバスを最初にデザインしたフランス人である。しかもユニットバスは、日本滞在時に体験したお風呂がアイデアの元だったのだ。

彼女の名前はシャルロット・ペリアン。あのル・コルビジエの門下生である。現在 神奈川県立近代美術館鎌倉で特別展が開催されている。彼女の様々な作品を観たり体感できたりする素晴らしさもさることながら、実はここで開催されていることにこそがなんともステキ。だって、この建物は同じル・コルビュジエの門下生である坂倉準三氏の設計なのだから。
二人の才能を再びここで結びつけたこの特別展の企画者に拍手を送ろう。
と偉そうなことを語っておきながら、実はまだこの展覧会を見ていない(笑)。

半世紀後の横浜で

2011-08-14 20:38:19 | ぶらぶらミュージアム散歩


用事で横浜に出たついでに、横浜開港資料館で開催中の『横浜ノスタルジア 特別編 昭和30年頃の街角』(広瀬始親写真展)に足をのばした。
ちょうど横浜を舞台にしたアニメの公開に合わせたようで、「『コクリコ坂から』の時代を見る」というサブタイトルも付いている。半世紀前あたりの横浜の様子をモノクロ写真で追うことができて楽しい。米兵やアメ車が写っているものは、外国にしか見えずカッコよすぎる。一転、子供たちの風俗は田舎にしか見えない。そのギャップこそが、当時の横浜を物語っているのかもしれない。
中には、記憶がある風景も出てきて(一応僕も“浜っ子”の端くれ!)、思わず「懐かしーっ」とつぶやいてしまった(笑)。
わりと小規模な写真展ではあるが、会場自体がすでにノスタルジックな建物(昭和6年築の旧英国領事館)なので思いのほか楽しめる。
帰りに寄った玄関脇にある小さなカフェ『オ・ジャルダン・ドゥ・ペリー』は、たぶん使用人の住まいだったのではないか。そんな空間でコーヒーを飲めば、気分はますますタイムスリップしていくのである。


仕事でもぶらぶら美術館

2011-05-18 22:20:42 | ぶらぶらミュージアム散歩


今日は何の日か、ご存知ですか?
「国際博物館の日」です。
ということで、鎌倉の『近代美術館』も入場無料というウワサを聞きつけ、仕事を兼ねて…いや、あくまでも仕事として行くことにした(笑)。
実はここ、外から眺めることはあっても、入ったことがなかったのだ。
建物は、あのル・コルビュジエの門下生だった坂倉準三氏の設計。僕が生まれるずっと前から建っていたというのだから驚く。確かに年季が入っているが、そこここにモダンなデザインが感じられて素敵な雰囲気なのだ。
現在開催中の「開館60周年 ザベストコレクション 近代の洋画」は、日本近代の多くの画家たちの作品を楽しめる。湘南に関わる画家の作品も、しっかり。

鶴岡八幡宮の境内、蓮池(平家池)の畔なので、屋外スペースもなかなかよくて、ついのんびりしてしまうのだった。いや、もちろん気分だけですよ、し・し・仕事なんですから(笑)。


美術館側から池を見ると…巫女さんがコンデジで撮影中

ぶらぶらご一行様、馬入へ

2011-05-17 22:24:49 | ぶらぶらミュージアム散歩


さっき『ぶらぶら美術・博物館』を見ていたら、いきなり見慣れた馬入の景色が!
まさか、毎週楽しみにしている番組ご一行様がご近所の美術館にいらしていたとはね。なんだか嬉しくもあり、誇らしくもあり(笑)。
彼らの目的は「画家たちの二十歳の原点」展である。先日、僕も観てきたが、日記に書いたのはこちら(笑)。もちろん「二十歳の原点」も、かなり見応えがあった。若き日の作品のチカラ、そこに添えられた言葉にいちいちうなずき過ぎて、帰る頃には首が痛くなったほどだ(笑)。
昔の若い人たちはなんて真剣だったんだろと感心しながら観ていると、多くが若くして夭折。そうか、昔は平均寿命だって短かったから、みんな1日1日を大切に生きていたということか。自分の二十歳の頃を振り返ると、悲しいくらい恥ずかしくなるな。
特に、あの村山槐多。サイズは小さいが、その迫力に圧倒される。なにしろ凄まじく激しく生きて、その数年後には亡くなってしまうのだ。何年か前に『なんでも鑑定団』に登場して、ものすごい値がついただけのことはある。

さて、山田五郎教授も「よくこれだけ集めたなぁ」と感心していたけど、ホント楽しく観ることができる素敵な展覧会であることは確かだ。
お時間があれば、平塚競技場に訪れる際にぜひ。
おっと、僕が観たころは震災の影響で届いていない作品があったけど、その後どうなったかな?

写真は、その平塚市立美術館のロビーで。「二十歳の原点」展では自画像が多かったけれど、これは自分ではありませんのであしからず(笑)。


あの日、美術館の床に置いて撮った(笑)チケット。よく見たら、協賛に「日本テレビ放送網」とありました。なるほど!

美食家をB食家が観る

2011-04-26 19:48:21 | ぶらぶらミュージアム散歩


陶磁器のことはよくわからないが、平塚市美術館で『北大路魯山人展』が始まったので足を運んだ。
ホントはすでに開催されている『画家たちの二十歳の原点』と一緒に観ることができるというので(笑)。入場料は、前者が200円、後者が800円だが、インターネット割引券(または携帯画面提示)を使うと両者が700円で鑑賞できるのが嬉しい。

魯山人展は始まったばかりということもあってか、なかなかの混雑ぶり。特に、年輩のご夫婦連れなどが多い。
123点が並んでいるらしいが、バラエティにも富みなかなか見応えがある。
ただ僕の目を引いたのは魯山人の作品そのものではなく、壁面に貼られたパネル写真だ。実際に展示されている器に料理が盛りつけられているもの。これが、実にうまそうなのだ(笑)。
器だけを観ていても僕にはその良さが理解できなかったが、料理が載ったとたんにその良さは200%理解できた(笑)。油揚げを裏返して焼いたものとか、ナスの煮浸し1本とか、蕗の煮ものといったシンプルな料理なのに、なんと美しいことか。いや器が素晴らしいのか、料理が素晴らしいのかはよくわからない。でも、これこそが魯山人なのではないかと妙にナットクである。

美術館らしく観たいナ

2010-12-10 18:49:58 | ぶらぶらミュージアム散歩


茅ヶ崎市美術館で『開高健とトリスな時代~「人間」らしくやりたいナ』を観てきた。
なんでも開高健生誕80周年ということで、終の棲みかとなった茅ヶ崎では開高健記念館をはじめいろいろやっているらしい。

「トリスな時代」と銘打った美術館の展示では、壽屋(現サントリー)時代の一連の広告を中心に観ることができて楽しい。あのアンクルトリスのテレビC Mはもちろん、ご自身が出演されたサントリーのテレビC Mもじっくり鑑賞できる。「角」から「オールド」そして「ローヤル」と出世魚のように商品も変わっていってたんですね。
必ず封のリボンを切るところから始まる「ローヤル」のシリーズは、僕もよく覚えている。そういえば、最近のサントリーのC Mも最初にポーンという音とともにサントリーのロゴが出てから始まるなぁ。

また、株式会社サン・アドとして独立する際の「年功、序列、名声、学閥、酒閥もいっさい無視」という宣言に基づいて朝日新聞に打った求人広告も展示されていて興味深い。

というわけでとてもいい展示だったのだが、困ったのは美術館関係者の方々。
1階でも地下でも、訪れた関係者と美術館のスタッフとで普通の声量で会話が続く。笑い声も響く。思わず「ここ、美術館ですよね」と言いたくなった。
だって、まるで町のギャラリーでの個展とか、公民館での趣味の展示会のよう。お客さんがいないのならともかく、僕以外にも数名が観ているのにね。
300円とリーズナブルだから仕方がないのかな。個人的にはあと200円出すから、静かに鑑賞させてほしい(笑)。
コンパクトながらとても素敵な箱なのに、残念でならない。

おじいさんの記憶

2010-09-25 20:56:58 | ぶらぶらミュージアム散歩


先日用事で横浜に出たついでに、日本新聞博物館に寄って『かながわの記憶 報道写真でたどる戦後史』展を観てきた。愛読紙である神奈川新聞の創業120周年記念の企画展だ。同名の写真集を書店で見て、ぜひにと思っていたのである。

同じ戦後の報道写真であっても、全国区のものは目にする機会も多い。しかし、神奈川メインはなかなかお目にかかれないので、ひかれたのだ。より身近に、ニュースを、歴史を感じることができるはず。
実際、年代順に県内を中心にしたニュースが並び、楽しく観ることができた。しかも、ここが歴史ある建物の中という点も価値がある。

ただ困ったことが一つあった。企画展のフロアに足を踏み入れた途端、奥からイビキが聞こえてきたのだ。
おいおい、わざわざ入館料500円を払って寝ている輩がいるのか…、いったいどんな人物なんだろうと思いつつ足を進めていくと、なんとそのイビキの主は係員のおじいさんであった。奥の角、暗い所で椅子に腰掛け、頭を垂れている。

近くまで進んで咳払いをすると、イビキは止まり顔を上げた。あぁ、よかった。これで安心(笑)。
ところが、直後に再びイビキが始まったぞ。あれ、こちらの存在に気づいたはずなのになぁ。
こっちも面白くなってきて、わざわざ音を立ててみたりする。
すると、また顔を上げる。だが、すぐまた寝る。
眠くて眠くて、わしゃもうどーにもならんでのう…顔にはそう書いてあった。こりゃ笑える。
そしてこのおじいさん、遂には足を組んで、腕も組んで、下を向いて、完全に寝る体制に入ってしまったのである(笑)。
もちろんイビキは、持ち場のローテーションが替わるまで、しばらく続いていた。

見たところ、シルバー人材センターあたりからの派遣のようだ。まあ、いいんですけどね、平日と言うこともあってそれほどお客さんもいないし。
ただイビキはねぇ。けっこう強烈なので、気になって気になって、なにもかも全部もっていかれる(笑)。
かながわの記憶は、イビキの記憶として刻まれることになってしまった。

上の写真は、新聞博物館内の喫茶店。ネーミングも雰囲気もなかなか。


こちらはエントランス。素晴らしいシンメトリーだ。

山形戦はドローかぁ。僕がバスツアーで参加すると全敗なので、行かないでよかったと改めて思う(笑)。

美術館で朝食を

2010-07-07 15:34:04 | ぶらぶらミュージアム散歩


9時半前、無料送迎バスは佐倉の田舎風景に佇む『川村記念美術館』入口に到着。
入場券を購入してから、まずは併設のレストランへ。庭園に突き出た長細いホールの特等席に案内される。
見渡す限りの緑、水鳥たちが遊ぶ池、その畔に建つ美術館、そして空が飛び込んできた。こんなパノラマを味わいながらの朝食が、なんと800円でいただける。しかも、コーヒー付き。



ほかに客もなく、さわやかな朝の時間をゆったりと贅沢に満喫した。おっさん二人というのが、ちょいと寂しい。というか、こんなに素敵なロケーションだから、逆にちょいとキモい(笑)。

なぜこんな贅沢な、採算度外視みたいなレストランが成立しているのかというと、それはこの美術館自体が企業メセナであるから。実は、DIC株式会社という、印刷・出版・広告関係者なら誰もが知っている日本最大のインク会社が運営しているのだ。森の向こうに同社の研究所棟が見えている。朝、駅前から乗った無料送迎バスの乗客のほとんどは、ここの研究員のようだ。

こんな背景を押さえつつ、いよいよ美術館に足を踏み入れると、公共の美術館では味わえない贅沢な感動に出会うことになる。

DIC一族の超贅沢なコレクションを堪能したり、ちょっと難解な現代アートに首をかしげだり(笑)。
1Fの最後は、マーク・ロスコの連作を“感じる”ために作られた展示室だ。長細い8角形の部屋に、観覧者は手前のスリットから入り込む。ほの暗い照明の下、ほぼ黒と赤系だけで構成される大きな作品が8つ、それぞれの壁に掲げられている。いろいろな場所に移動しながら“感じて”みる。中央に置かれた部屋と同形のソファにも腰を下ろして“感じて”みる。
あくまでも静かなのだが、グイグイと迫ってくる荘厳で不思議な力に圧倒される空間だ。こんな展示、観たことない。

さて、なんだかわからない感動を胸に、再びスリットから退室すると、矢印は2Fへと向けられていた。円柱を中心に左右にRを描く階段がある(あとでわかったのだが、ここはエレベーターを使ってはいけない。しかも絶対に左側を上っていきたい)。
先ほどの暗さに慣れた目に、白い壁が清々しい。いや、白なのだろうが何故か水色に映っている。そして踊り場から、次の作品が徐々に目に飛び込んできた。最初は、赤と白と水色の国旗のような印象。
しかし、それはまだ入口の大きさに切り取られたものに過ぎなかった。部屋に入ると巨大なスペースが出現、僕たちは正面の壁に赤と両端のわずかな白のみで彩られた、たった1つの大きな作品と向き合うことになる。バーネット・ニューマン作「アンナの光」だ。
部屋の両側はスリガラス張りだ。外の深い緑が差し込み、壁を水色から薄い緑に染めている。さっきの暗い部屋から、一気に色鮮やかな空間に放り出され、しばし立ち尽くすしかなかった。
この展示室も、この作品のためだけにしつらえられているのだ。なんという演出。作家も作品についてもよく知らないし、まったくわからない(笑)。だが、今たしかにアートの素晴らしさを五感で浴びていたのだ。

本当に驚いた。興奮した。立ち尽くしたあと、今度は広い部屋をあちこち移動したっぷり味わい、我慢できずに係の女の子に声をかけちゃったり(笑)。
さらに1Fまで戻り一旦あの暗い部屋で目を慣らし、また階段をゆっくり上り感動の再確認までやった。少し増えてきた観覧者たちに、息づかいの荒いおっさん二人がどう映ったのだろう(笑)。



それにしても、こんな美術館が千葉の佐倉の郊外にあろうとは。いや、こんな場所だからこそ実現したプランなのかもしれない。あたりの田園風景は季節によって表情も変わるはずだし、リピートしたくなる。いやぁ、実に贅沢な時間を過ごせる感動の美術館だった。


ぜいたくついでに、もうひとつ。屏風など日本画の展示室の隅にある地味な障子戸を開けると、奥にこぢんまりとした喫茶スペースがある。ここでも一服の絵のような庭を眺めながら一休みできる。抹茶と和菓子、または紅茶とクッキーが選べて、どちらも800円。


事業仕分け博物館

2010-07-06 18:31:07 | ぶらぶらミュージアム散歩


「廃止!」
どこまでも広く重厚な館内に、蓮舫さんの鋭い声が響き渡りそうだ。

この方と共に佐倉の街にある『国立歴史民族博物館』を訪れた。
今回のプチ旅は「ぶらぶら美術博物館」勝手に地方編である(笑)。
実はろくに調べもせず入ったのだが、しょっぱなから驚愕の連続である。これまでに見たことのないような広大なスペースなのに、それが狭いと感じてしまうほどの展示物数に圧倒される(ただしその多くはレプリカ)。
さすが国立! と思う一方で、あきれかえる(笑)。
原始・古代から現代まで日本の歴史を時系列で見ていくことができるのだが、とにかく展示物が多くて一つ一つ見ていたら1週間ぐらいかかるボリュームなのだ。当然僕たちは駆け足&ショートカットで進む。それでも、僕の大好きな「昭和」あたりに辿りついた時には、すでにグロッキー状態であった(笑)。


振り返ってみると、ジオラマの多さも気になる。どの時代にも、とにかく精巧かつ巨大なジオラマが次々と登場する。いったいいくらかかったのか。紹介文と共に、ぜひ制作費用を掲示してもらいたい。そうすれば、より価値が高まり、スルーせずにありがたく見ることができるだろう(笑)。
そんなジオラマも現代に近づくにつれ姿を潜め、今度は原寸大の家屋などが登場してくる。そして、大トリを飾るのが、なぜかゴジラだ。これは、着ぐるみの原寸大(笑)。
ゴジラの叫びと炎で、「廃止」の声を掻き消してしまおうというのか。
内容よりも、そのぜいたくさに驚かれるとんでもない事業という意味では、間違いなく一見の価値がある。


歴史から入る美術館

2010-07-05 19:20:05 | ぶらぶらミュージアム散歩


京成佐倉駅から南に伸びる坂を上っていくと、先はT字路の横棒に突き当たる。
その正面に、決して大きくはないけれど重厚な構えでひときわ存在感を示しているのが旧川崎銀行の佐倉支店だ。大正7年の建物。
現在は、後方に建つ佐倉市立美術館のエントランスとして活用されている。
見事に修復され、内装も美しい。高い天井を見上げていると首が痛くなった(笑)。逆に、2階部分の回廊から見下ろしてみたらどうだろうか。黒ぶちの丸いメガネをかけ、白い開襟シャツにサスペンダーをした銀行員たちが忙しそうに働いている、そんな大正から昭和の映像が思い浮かぶ。ただし、回廊への階段も廊下もないようで残念。



ここでプチ歴史を鑑賞し奥へ進むと、美術館の本館に続く。
チケット、チケット…と思って受付の方に聞くと、無料だというではないか。この時点ですでに素晴らしいものを観て触って感じているのに、だ。
本館の1階には、ちょっとおしゃれなカフェもある。歴史的建造物をうまく使ったり、入場無料だったり、カフェでのんびりできたり…スゴイぞ、佐倉市!
2階、3階の展示スペースも、大き過ぎず小さ過ぎずのちょうどいいサイズだ。田舎町のイメージ(失礼!)には似つかわしくない、センスのいい贅沢なミュージアムといえるのではないだろうか。
エントランスでライヴなどをやってもカッコイイかもしれない(すでにやっているかな?)
佐倉市民は幸せだ。