この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『向日葵の咲かない夏』、『ラットマン』、読了。

2010-08-29 20:45:32 | 読書
 道尾秀介著、『向日葵の咲かない夏』『ラットマン』、読了。


 今が旬といわれている作家、道尾秀介の小説を続けて二作を続けて読んでみました。まぁブックオフでどちらも一冊百円だったからね。笑。

 まず先に読んだのが彼の出世作として知られる『向日葵の咲かない夏』。
 正直、、、あんまり感心しなかったかなぁ。
 作者が構築した大仕掛け自体には「ほぉ」と思わされたけど、それを成り立たせるためのお膳立て的な設定がどうにもこうにも受け入れがたいというか。

 例えば主人公ミチオのクラスメイトであるS君は犬を飼っていて、彼はその犬に(人間の)死体を見つけたら家まで咥えて持ち帰るように訓練しているんだけれど、どーゆー訓練をすれば犬がそんな複雑な行動を取るようになるっていうんじゃい!!っ言いたくなった。
 その犬は作中実際に小学四年生の死体を家に持ち帰るんだけど、小学校四年生っていったらまぁ体重が三十キロ前後あるよね?そんな重いものを持ち帰るってどんだけ大きな犬なんだよ、って話ですよ。子牛か?子牛並みの犬か?
 そのくせ、S君の家は電話が止められてしまうぐらい貧乏っていう設定だったりする。笑。
 電話が止められるぐらい貧乏だけど、子牛並みの犬を飼ってるってどーゆー経済状況だよ、って読んでて突っ込みをいれてしまった。
 この作品は生まれ変わりがあるという前提なんだけど、それ自体は受け入れられてもそれ以外の部分がまるで受け入れられなかった。


 これまでに道尾作品は『片目の猿』って小説も読んでて、それも正直イマイチで、『向日葵の咲かない夏』がイマニかイマサンぐらいだったので、もう道尾作品は読まなくていいかなぁと思っていたところに読んだのが『ラットマン』。
 これはよかったなぁ。
 とても『向日葵の咲かない夏』を書いたのと同じ人間が書いた作品とは(文章的にも作風的にも)思えない。笑。

 『向日葵~』が恐ろしく奇を衒った作品だったのに比べ、こちらのお話はごくごくオーソドックスで、でもだからこそ非常に読みやすかった。
 人の思い込みがもたらす悲劇がテーマの作品なんだけど、最終的に明かされる真相には救いと希望があって、読後感も○。

 ただ、『ラットマン』っていうタイトルと表紙は×かな。
 読み終わったら心理学の用語の「ラットマン」の意味が理解できてしっくりくるけど、読む前は(『向日葵~』を読み終わった直後だったこともあって)「ラットマン」という怪物が出てくるホラーかと思ったよ。
 まさかこんな爽やかなお話だとは。笑。

 続けて読んだ二作品で評価が極端に分かれたので、道尾秀介という作家に対する評価もまだ保留かな。
 他の作品も『ラットマン』寄りの作品だといいんだけれど。
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