この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

夜は短し、歩けよ乙女。

2008-01-24 23:56:05 | 読書
 言葉は様々な側面を持ち、言葉を飾る形容詞もそれと同じ数だけあります。
 正しい言葉、正しくない言葉、綺麗な言葉、汚い言葉、柔らかい言葉、硬い言葉、尖った言葉、丸い言葉、重い言葉、軽い言葉etc。
 重い言葉?
 そうです、言葉には重みがあります。
 例えば連続殺人鬼が「人を殺してはいけません」なんていっても説得力ゼロですよね。お前が言うな、ってツッコミたくなるだけですし。
 つまり、言葉の重みとは、その言葉が説得力を持つか否か、ということです。

 その他に気持ちのいい言葉、気持ちのよくない言葉というものがあります。
 この場合気持ちいいといっても卑猥という意味ではありませんよ。笑。
 読んでいて、また目で追っていて、気持ちのよくなる言葉のことです。いわば読み心地のいい言葉。
 過去名文と呼ばれた文章はすべて気持ちのよい言葉で綴られているといっても過言ではありません。
 天賦の才によるものかもしれないですし、血の滲むような修行の成果なのかもしれません。ともかくそうそうお目に掛かれるものではありません。
 読んでいるだけで気持ちがよくなるのですからこれ以上お手軽な合法ドラッグはないですよ。

 久しぶりに読んでいて楽しい!と思える本に出会えました。その本のタイトルは『夜は短し、恋せよ乙女』
(森見登美彦著)。
 最初の一ページ目の最初の数行を一読したときは小細工を弄した、中身のない文章なのかなと思いましたが、とんでもない、確かな筆力に裏打ちされた精緻で洗練された文章なのだということが読んでいくうちにわかります。何て気持ちのいい、楽しい文章であるのか。
 お話自体は他愛のないものです。
 何しろどうしようもなく情けない男が一目惚れした後輩の女の子に何とか近づこうとするだけの話なのですから。
 しかしその他愛のないお話をこうも風呂敷を広げてしまう(そして畳む)作者の奇想にはただただ脱帽するしかありません。
 久しぶりに図書館で借りた本を手元に置いておきたいと思いました(もちろんガメるわけではないですよ。ガメるってわかりますかね?)。
 森見登美彦というドラッグにしばらくはまりそうです。
コメント (6)
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