ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月10日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第7回

序(7)


 本書は対談形式となっているが、対談というのは大概は周到に準備された編集者と打ち合わせを終えて、問題提出とまとめという司会者が居て、ある大御所を突っ込んで、結論をあぶりだすという目論みが存在している。各自が文章を持ち合ってきて編集するわけではなく、生身の人間を相手にするのだから、駆け引きはあるが激しい対立はなく、用意された結論に編集者が満足するという流れであるのはやむをえない。ここでは上野千鶴子氏が司会者(調理人)で、辻井喬氏が解剖の対象(俎板の鯉)である。漫才で言えば上野氏が「つっこみ」役で、辻井氏は「呆け」役を演じている。では上野氏が分類する時代区分に従って、本書を追ってゆこう。大きくは1950-1960年代、1970-1980年代、1990年代から今日の三時代に区分される。前の二区分は成功と拡大のサクセスストーリーで、何処の会社もそうであったろうから、西武グループの特徴はでているが、格別西武流通グループだけの成功の秘密と云う話にはならない。むしろダイエーの仲内功さんの流通革命の話のほうが魅力あるかもしれない。すると本書は第3の時代1990年以降の失敗のほうに主題があるように思える。その失敗の原因を辻井喬の経営者としての資質にするところが本書の醍醐味である。批判を甘んじて受ける辻井喬氏の摩訶不思議さに氏の文人たる所以をみるようだ。


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