ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート R・Pファイマン著 「光と物質の不思議な理論ー私の量子電磁力学」(岩波現代文庫)

2015年04月20日 | 書評
光子と電子の相互作用を解き明かす量子電磁力学 第19回

3) 電子との相互作用 (その7)
⑦ 光の「誘導放出」と電子の「パウリの排他原理」

つぎに自然界の物質が多種多様になる秘密を光子と電子の性質から説明しましょう。2つの光子が別々のところに行くとしたら、最終矢印の長さは時空中の相対的位置関係でまちまちのあたいとなるいわゆる「干渉」が現れます。もし2つの光子が同じ点に行くとした事象を下図の左に示します。1および2の点から放出された光子が3に集まるとき、P(1→3)×P(2→3)もP(2→3)×P(1→3)は全く同じであり、これを加えると2倍の長さになる。その自乗は4倍となる。つまり光子は時空中で同じところに行きたがるという性質をもち(2個の光子間の干渉は常に正である)、これがレーザーの原理である。これはアインシュタインが「誘導放出」と呼ぶ現象で、量子論の確立過程で発見された。ところが電子の場合は偏極(スピン)があるため、下図の右の図に示すように、2本の矢印は引き算される。2個の電子が地空中で一つの点に行こうとすると偏極のため干渉は何時も負となり最終矢印の長さはゼロとなる。2個の電子が時空中で同じ位置を占めることを嫌う性質は「排他原理」と呼ばれる。物質自体の存在に欠かせない性質である。同じ場所を占めないということが哲学的な物質観の基礎となっている。そこからさまざまな化学的属性が現れる。電子には2つの偏極状態しかありません。例えばリチウムという原子は3個の陽子と光子を交換し合っているので、核の近くを占領した2個の電子に比べ、第3の電子はずっと核から離れた位置にあり交換する光子も少なくなり、核から離れやすく飛び出しやすくなります。これが金属の特性の電流を流しやすい性質になるだけでなく、結合性(反応性)に富んだ元素を作り出します。化学には化学の言葉があり、周期律表による整理、原子価などという近似的な理解が進みました。そして無数の物質や分子を生み出しています。

(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿