ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 佐々木毅著 「政治の精神」 岩波新書

2010年01月31日 | 書評
政治を支える精神を、政治家、国民、政党の軸から読み解く 第8回

第1章 政治を考える視点 (5)

 政治的統合のメカニズムは歴史の中で変更と改革を受けて当然である。結社の自由の原則に基づいて団体や政党の活動が保障されなければならない。政党は権力獲得を追及することを目的にした集団である。したがって政党には独裁政権を目指すイデオロギー政党が存在することも必然であった。独裁政党は非競争的システムに陥りやすい。全体主義や共産主義政党で見てきた通りである。これにたいして競争的システムでは政治的自由が認められ、政党間競争が存在する。一党優位制(日本)、二党制(イギリス、アメリカ)、多党制(ドイツ、イタリアなど)とさまざまな程度の競争がある。この程度は選挙制度と深く関係している。小選挙区制は優位な党が決まりやすく、比例代表制は政権の帰趨が容易には決着しない。また議院制度も重要で、上院身分制の残存するイギリスから、選挙制度が同じで機能が区別しがたい日本の衆議院と参議院の二院制による議院内閣制度と、アメリカのように大統領制と議院が抑制的に作用しあう形式がある。政党は経済問題で利害が対立しやすいし、人種宗教でも意見の複数化の契機となる。国際関係の緊張や戦争で政治的統合はいとも簡単に破れるのである。

 政治の自由は権力に依存している。制度を守り改革する権力の発動がなければ政治は安定しない。政治権力は法を含めた制度の管理権を掌握しているので、政党は権力に命綱を握られているといえる。ルールを変えられたら一切の努力が無に帰すこともある。全能の権力は革命から生まれることはマキャヴェリの「君主論」でもあきらかであった。「権力は獲得することは難しいが、維持することは容易である」という。自分でルールを作れるからだ。そこで力による強制という「権力の魔性」の誘惑が存在する、テロと処罰が権力の最後のよりどころである。権力は制度だけでなく現実さえも変える力を持っている。「何でも実現できる」と考える誘惑が政治権力には付きまとう。政治権力はその及ぼす量的質的影響の大きさからしてその責任もまた極めて大きい。「権力を維持しようとすれば更に大きな権力を求める」とホッブスは洞察している。
(つづく)


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