ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

東日本大震災と医療問題:保育園・幼稚園除染活動に参加して

2011年08月28日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年8月18日) 「掘って埋める、その前に」 森田知宏 東京大学医学部6年生より

 8月13日南相馬市市役所で行われた学校の除染活動の打ち合わせと、幼稚園・保育園の線量測定への参加経験を報告する。除染活動打ち合わせには、桜井市長、教育委員会、東京大学児玉教授、南相馬市原町中央産婦人科高橋院長、亀田病院産婦人科の鈴木医師が参加しテレビ取材もあった。土壌処理の基本は汚染度をしっかりした構造の中に埋めることである。ホットスポットを決定してうめることは個人では出来ないので重機を持つ専門企業が必要である。場所としては防風林を作る予定地の地下はどうかなどが話し合われた。夏休み中にホットスポットの洗いだしと除染作業が進められるものと思われる。筆者は南相馬市立総合病院でホールボディカウンターの健康診断結果のデータ-ベース化を作ってきた。個人や生徒に線量計を持たす試みもあり、正確な線量測定マニュアルの啓蒙が緊急の課題である。

読書ノート 石橋克彦編 「原発を終らせる」 岩波新書

2011年08月28日 | 書評
原発安全神話は崩壊した、原発から脱却することは可能だ 第13回

9)「原発依存の地域社会」(その1) 伊藤久雄  東京自治研究センター 明星大学講師

 「原発依存の地域社会」というと、ちょっと微妙な問題に触れることになる。そこで「原発依存の地域社会」とは単に原発が立地する市町村だけをさすのではなく、原発の電力の恩恵を受けて豊かな生活を送ってきた大都市も含める。しかし原発は「過疎地域」に立地されてきた。東京のお台場あたりの臨海埋立地には決して原発は誘致されなかった。それはなぜか。首都東京には為政者(支配者)がいて、自分達は原発の事故の恐ろしさを十分知っていたからである。だから言葉を替え、手を替え、莫大な現金という麻薬を与えて、原発や核施設を過疎地に誘導したのである。送電ロスという代償を払ってまで、東電は遠い新潟や東北の地に原発を置いた。それを可能にしたのは地方の疲弊であり財政難であり、都市と地方の格差であった。過疎の定義はご丁寧に、人口減少率と財政力指数(収入と借金の比率)から「過疎地域自立促進特別措置法」に定められている。多くの原発立地市町村は原発のおかげで過疎地化を免れた。放っておけば間違いなく過疎地になっていた市町村が、辛うじて人口を支え雇用を守ることが出来たには、原発のおかげであるといわんばかりのやり方である。同じ福島県海岸通りの川俣町と原発のある大熊町の人口を較べると、1970年から2010年までの40年間に川俣町は22000人から15000人に減少し、大熊町は8000人から12000人に増加した。原発近くの飯館村や双葉町の人口は変化していない。町の総生産の内訳を見ると、原発のある双葉町と大熊町の電気事業収入は全収入の70%から80%を占め、第1次・第2次産業の比率は極めて小さい。産業構造がすっかり電力依存になってしまった。それに対して川俣町や飯館村の産業構造は第1次(農業漁業)・第2次産業(土木)の比率が40%ほどである。一人当たりの所得上位を見ると大熊町、双葉町、広野町、楢葉町、富岡町などの原発立地地域の所得が上位を占めている。市町村の歳入構成を見ると、原発のある双葉町や大熊町は国庫支出金と地方税収入が中心で、原発の恩恵を受けていない川俣町や飯館村は普通地方交付税中心となっている。財政力指数を見ると大熊町は1.5で歳入が歳出を大きく上回っている。川俣町や飯館村の指数は0.2-0.4であり歳入が極めて少ない。
(つづく)

文芸散歩 金 文京著 「漢文と東アジア」 岩波新書

2011年08月28日 | 書評
漢文文化圏である東アジア諸国の漢文訓読みの変遷と文化 第2回

 たとえば電車の切符を売る事を日本語では「券売」といい、中国語では「売券」という。中国語では動詞プラス目的語が正規の漢文規則である。日本語では「券を売る」というようにそれが逆になっている。そして中国人には通じない漢字の使い方がある。日本語で「改札口」というが、中国語では「検票口」となる。札と票は同じ意味だとして、「改」は「命が改まる(革命)」というように古い物を新しくするという意味である。日本語では「改」にあらためる(しらべる)という意味を持たせている。しらべるなら「検」であるが、日本語には訓読みを通じて別の意味が紛れ込んだといえる。連想ゲームのようなものだ。韓国語は日本語と殆ど同じ語順と文法を持ち、漢字発音をハングル文字で表記した文字である。漢字と助辞の関係は日本語に同じである。ベトナム語はまだ中国語に似た言語であるが、名詞の修飾語は名詞の後に来るそうである。猶早めに断っておかなければならないが、私は中国語、ハングル、ベトナム語その他の言語は全く知らない。漢文の訓読みを通じての教養しかない。比較言語学は全く素人であるので、ここでは他の言語に関する引用は最低限にして、日本語と漢文の関係だけを論じたい。東アジア文化圏ということで興味ある事項には言及するが、言語学的には何も知らないことを白状しておく。第1当事者は日本語、第2当事者は漢文、第3当事者は自信が持てないという構図である。「図書館」は実は日本語であるが、近代国家形成後の言葉であり、韓国、中国には存在しなかった言葉であるので、日本語がそのまま流通した。中国語も韓国語も日本語も発音は違うが、「図書館」を使用する。ベトナム語では「書院」という。このような時代文化背景を持つ日本製漢語の影響も多い。東アジアでは中国、韓国、日本、ベトナムが漢字文化圏であるが、現代では韓国とベトナムは漢字を全廃した。しかし文字としての漢字は使わないが、漢字に由来する言葉は依然として高い比率を占めている(60%以上ともいわれる)。今でも漢字を使用しているのは、中国と日本であるが、日本語では独自の略字による漢字と仮名の併用、中国でも略字体を使い、台湾のみが従来の複雑な字形の漢字を使用している。漢字の発音は、中国、韓国、日本で由来した地方・時代を反映して読み方はバラバラで、日本には音読み(呉音、漢音)のほかにさらに訓読みがある。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「豊 年」

2011年08月28日 | 漢詩・自由詩
採摘黄瓜田舎翁     黄瓜を採摘す 田舎の翁

今年豊作意何窮     今年豊作 意何ぞ窮らん

郊墟細細秋江雨     郊墟細細と 秋江の雨

村社蕭蕭残葉風     村社蕭蕭と 残葉の風


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(韻:一東 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)