ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

東日本大震災と医療問題:相馬市長より「リヤカー」

2011年08月26日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年8月15日)
相馬市長エッセー「リヤカー」 立谷秀清 メールマガジン8月8号より転載


 今から50年前の相馬の町の、リヤカーの物売りが往きかい、時間がゆっくり流れて笑顔と会話の絶えなかった少年時の思い出が語られる。そうして今の瓦礫とさら地の被災地の情景が交差する。集落のコミュニケーションの豊かさは、震災後の避難生活でも良く保たれ、避難所の生活を支えている。避難所を集落単位で指定し、気配りと励ましが維持できたからであろう。1500戸の仮設住宅でも集落の形を保ったままで移住してもらい、隣村の飯館村の164世帯もひとつのブロックで入居して、組長さんを選出している。相馬市民と同じサービスを提供している。問題は様々な市町村からの寄り合い世帯でブロックを組まざるを得ないことや、災害弱者、独居生活を余儀なくされている人々に対しての支援である。入居者全員への夕食の配給は年内は続けるつもりである。負担金なしで一般健診の受診を受けてもらいたい。買い物支援や孤独死防止への配慮が必要だ。そこで仮設住宅地域へリヤカーを曳いた訪問販売員を派遣している。販売員を雇用して、障害者への洗濯等の生活支援を兼ねている。

読書ノート 石橋克彦編 「原発を終らせる」 岩波新書

2011年08月26日 | 書評
原発安全神話は崩壊した、原発から脱却することは可能だ 第11回

8)「原子力安全規制を麻痺させた安全神話」(その1) 吉岡 斉 九州大学副学長 比較社会文化研究院教授 科学技術史

 筆者は今回の福島第1原発事故は基本的に人災であると考える。その理由として、①圧力容器破損にたいする準備とシュミレーションがなされておらず、安全審査をパスするための建前が支配して、対策がすべて泥縄式であった。②1999年にJOC臨界事故を教訓にして原子力災害特別措置法を制定して、原子力災害現地対策本部がオフサイトセンターに設けられるはずであったにもかかわらず、原子力災害現地対策本部は機能せず現場指揮はもっぱら首相官邸と経産省原子力安全保安院と東電の三者が進めた。中でも東電が主導権を握って東電の現地本部が司令部となっていた。操作ミス、情報隠しといった東電に都合のいい対策が先行して事故の規模を広げた。③今回の事故に対応するような原子力防災計画が立てられていなかった。半径30km以上の対策を実施すべき地域EPZ指定など全く一考だにされた形跡は無い。広域の住民避難・屋内退避・退去などの指示が遅れたばかりでなく、2転3転して住民は困惑した。想定外の事故ですべての責任が免罪されるなら、原子力防災計画は存在しないのも同然である。その根本原因は何かという反省に立つと、「原子炉などの施設が重大な損傷を受けて大量の放射性物質が外部へ漏れる事故が現実的に起こる確率は無限小でる」という思い込みを生んだのが、「原子力安全神話」であった。原発を推進するために「原子力安全神話」を流布させた当局にとって、原発に追加的安全審査や対策を求めることはもともとタブーであった。原子炉の安全性に不備があるというメッセージを社会に対して発信することはできないという「自縄自縛」のなせる技であった。これを可能にしたのが、経産省への原子力安全規制行政の集中独占体制の成立である。「国策民営」を原則とする原子力事業の安全規制行政は、1956年総理府に原子力委員会と科学技術庁が設置されたときに始まる。科学技術庁が原子力発電政策全体を総括し、通産省が商用原子力発電政策を担うという「二元体制」がスタートした。まがりなりにもチェックバランス体制が守られていたが、2001年の中央省庁再編により誕生した経産省は強い原子力行政の権限を獲得した。原子力委員会と原子力安全委員会は実働部隊を持たない内閣直属の審議会になり、経産省の外局に原子力安全・保安院が発足し、経産省が商用原子力の推進と規制の双方の実権を握ったのである。さらに原子力安全・保安院の下に原子力安全基盤機構JNESが2003年に設置された。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「始聞秋声」

2011年08月26日 | 漢詩・自由詩
蛩聲切切雨初晴     蛩聲切切 雨初めて晴れ

松韻悲悲月満城     松韻悲悲 月城に満つ

連雁南征秋水痩     連雁南に征き 秋水痩せ
 
簾葭深處暮涼生     簾葭深き處 暮涼生ず


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(韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)