高コスト、石油を多消費し、核兵器並みの危険性を持つ原発 第5回
1)原子力利用と原発 (4)
原発の炉心そのものが損傷する事故で最も恐れられていることは、
①炉心溶融メルトダウン、
②核暴走
③核爆発
原発のどこかで異常が起きると、まず自動あるいは手動で制御棒が炉心に挿入されウランの核分裂は停止することになっている。これを「炉停止」という。それでも炉心に存在する核燃料は崩壊熱を大量に出し続ける。そこで崩壊熱を除去する冷却水の循環に支障が生じると、炉心は加熱状態となって溶融を始める。これを「メルトダウン」という。その溶けた核燃料が炉底に貫入し突き抜けて地価に達し、地下水を爆発させるような火山活動に似た状況を「チャイナシンドローム」という。原発ではまだ起きたことは無いが、地下貯蔵の核燃料や廃棄物の場合にはありうるかもしれない。TMI事故では炉心の70-80%は溶融していたと考えられる。つぎに核暴走(ニュクリアーランナウエイ)とは、一旦停止したはずの核分裂連鎖反応が再開する事を「再臨界」という。これについては実用規模での事故はどこにも起きていない。原爆の爆発と同じ第3の事故「核爆発」はチェルノブイリ原発で起きた。旧ソ連、日本、IAEAなどの原発推進当局はこれを認めようとはしないが、理研の槌田淳氏は核爆発説を主張している。チェルノブイリ原発事故以来日本の原発は安全策を強化してきたが、それでもあわやという事故を繰り返している。1988年中部電力の浜岡原発第1号炉の再循環ポンプの電源が失われ、制御棒の挿入もコントロールを失った。約12時間をかけて修復したという。1989年東電の福島第2原発3号炉の循環ポンプの軸受けベアリング異常があって炉を停止して調べたところ、ベアリングが破損して破片や金属粉が1次冷却水まで入り込んでいた。炉心の冷却も不十分でメルトダウンすれすれの状態であったという。1991年関西電力の美浜原発2号炉で蒸気発生室の伝熱細管1本がぽっきり折れて(ギロチン切断)、放射能混りの1次冷却蒸気が2次側冷却水に吹きだす事故があった。蒸気発生器細管の穴あき事故は日常的に発生している。
これらの事故は炉心に絡む事故であるが、廃水や空気への漏出事故も恐ろしい。1981年日本電源の福井県敦賀原発の給水加熱期器のひび割れによる冷却水漏れコが(1974年まで遡る)が発見され、溶接修復した。福井県が敦賀原発の一般排水路を点検したところ、高濃度のコバルト60、マンガン54、セシウム137が検出された。これらは炉心の核分裂物質ではないが、中性子が配管に当たって発生する物質であるが、敦賀湾沿岸の漁業者に大打撃を与えた。1980年ごろから福島第1原発の周辺では海がコバルト60で汚染されいたが、小学校の校庭からも検出されたという。
(つづく)