高コスト、石油を多消費し、核兵器並みの危険性を持つ原発 第14回
3)原発は石油を節約するのか (3)
仮定①,②,③,④をまとめて考察しよう。筆者が行なった試算の結果を示す。アメリカDOE(1976)の試算では30年間、稼働率61%の運転で発電量は1600億kWh(137.5兆kcal)となっているが、これは耐用年数20年稼働率45%に修正し、かつ定格運転ロス、自家消費と送電ロスを考慮して608億kWhに補正する。投入エネルギー量はDOEの試算では揚水発電建設・維持と廃炉処分エネルギーを無視しているが、これを考慮しかつ原発維持管理修理のエネルギー、輸送エネルギー、使用済み核燃料の長期保管を考慮すると、DOEの36兆kcalは補正されて81兆kcal(半減期のみ)、513兆kcal(10倍半減期)となる。もし608億kWhの電力を火力発電によって得るために投入されるべきエネルギーは160兆kcal(熱効率35%として)である。DOEの試算では生産電力エネルギー137兆kcalに対して投入エネルギーは36兆kcalと原発のエネルギー収支はプラスと主張されているが、筆者の計算では生産電力を補正すると608億kWh(52兆kcal)となり、投入エネルギーに使用済み核燃料処分を加味すると81兆kcalとなって、エネルギー収支はマイナスである。DOEの試算では投入エネルギーには頭の核燃料製造エネルギー30兆kcalに注目していただけのことで、お尻の最終処分エネルギーをほぼ無視していたことが特徴である。最後に「高速増殖炉」という言葉の意味がまぎらわしいので、高速増殖炉とは何かを考えてゆこう。敦賀原発「もんじゅ」においてただ1基が建設されたが、1995年のナトリウム爆発により運転は停止され、2010年運転が再開されたがすぐに事故を起こして再び停止中である。ほとんど運転経験がないまま老朽化が心配されている。文殊の知恵を借りてもなお人類はまだナトリウムという熱媒体を利用できないでいる。今天然ウラン1トンあると、核分裂を起こしうるウラン235は7Kgあり(993kgはプルトニウム238)、このウラン235が1Kgが核分裂をすると、プルトニウム238が1.1から1.4Kgのプルトニウム239という核分裂物質に変わる。このプルトニウムを核燃料とみると増殖率は1.1-1.4だといえる。しかしウラン238原子1個から生まれるウラン239原子は1個であり、天然ウランの潜在能力を高めるものではない。ようするに軽水炉の使用済み核燃料を再利用してプルトニウム239を回収することにある。核物質を産出しない日本で核物質が回収出来るということである。したがって政策的には青森県六ケ所村の再処理工場は、敦賀の「もんじゅ」と連動するということをいう。逆にいうと敦賀がこければ六ヶ所村の工場は不要となる。いまでも開店休業状態であるのはそのためである。
(つづく)
3)原発は石油を節約するのか (3)
仮定①,②,③,④をまとめて考察しよう。筆者が行なった試算の結果を示す。アメリカDOE(1976)の試算では30年間、稼働率61%の運転で発電量は1600億kWh(137.5兆kcal)となっているが、これは耐用年数20年稼働率45%に修正し、かつ定格運転ロス、自家消費と送電ロスを考慮して608億kWhに補正する。投入エネルギー量はDOEの試算では揚水発電建設・維持と廃炉処分エネルギーを無視しているが、これを考慮しかつ原発維持管理修理のエネルギー、輸送エネルギー、使用済み核燃料の長期保管を考慮すると、DOEの36兆kcalは補正されて81兆kcal(半減期のみ)、513兆kcal(10倍半減期)となる。もし608億kWhの電力を火力発電によって得るために投入されるべきエネルギーは160兆kcal(熱効率35%として)である。DOEの試算では生産電力エネルギー137兆kcalに対して投入エネルギーは36兆kcalと原発のエネルギー収支はプラスと主張されているが、筆者の計算では生産電力を補正すると608億kWh(52兆kcal)となり、投入エネルギーに使用済み核燃料処分を加味すると81兆kcalとなって、エネルギー収支はマイナスである。DOEの試算では投入エネルギーには頭の核燃料製造エネルギー30兆kcalに注目していただけのことで、お尻の最終処分エネルギーをほぼ無視していたことが特徴である。最後に「高速増殖炉」という言葉の意味がまぎらわしいので、高速増殖炉とは何かを考えてゆこう。敦賀原発「もんじゅ」においてただ1基が建設されたが、1995年のナトリウム爆発により運転は停止され、2010年運転が再開されたがすぐに事故を起こして再び停止中である。ほとんど運転経験がないまま老朽化が心配されている。文殊の知恵を借りてもなお人類はまだナトリウムという熱媒体を利用できないでいる。今天然ウラン1トンあると、核分裂を起こしうるウラン235は7Kgあり(993kgはプルトニウム238)、このウラン235が1Kgが核分裂をすると、プルトニウム238が1.1から1.4Kgのプルトニウム239という核分裂物質に変わる。このプルトニウムを核燃料とみると増殖率は1.1-1.4だといえる。しかしウラン238原子1個から生まれるウラン239原子は1個であり、天然ウランの潜在能力を高めるものではない。ようするに軽水炉の使用済み核燃料を再利用してプルトニウム239を回収することにある。核物質を産出しない日本で核物質が回収出来るということである。したがって政策的には青森県六ケ所村の再処理工場は、敦賀の「もんじゅ」と連動するということをいう。逆にいうと敦賀がこければ六ヶ所村の工場は不要となる。いまでも開店休業状態であるのはそのためである。
(つづく)