高コスト、石油を多消費し、核兵器並みの危険性を持つ原発 第12回
3)原発は石油を節約するのか (2)
「原子力発電は石油にとってかわるものである」という説を検討しよう。一口に石油代替といっても次の3つの意味がある。①石油置き換え説、②原子力のエネルギー収支プラス説、③石油有効利用説:①、②でなくても、同一エネルギー生産方式を較べると原子力の方が石油節約的だ。という3つの説を順次打破してゆこう。①、②が否定されると③は成り立たないので、ここでは①、②だけを検討する。
1) 「石油置き換え説」
それが真であるためには次の3つの命題を同時に満たすことが必要である。命題1:今日の社会における石油使用分野のすべてを原子力がまかなうことが出来るだろうか。命題2:原子力利用技術が石油なしで実行可能だろうか。命題3:石油は自らを拡大生産が可能であるが、原子力は拡大生産ができるのか。増殖能を持つのか。
命題1は容易に棄却できる。石油はプラスチック原料に利用できるが核燃料は原発にしか利用できない。飛行機や自動車の燃料は石油が中心で核燃料を利用できないし、ハイブリッドのような補完も出来ない。発電以外の石油の用途に原発は利用できない。発電方式でも原発のエネルギー熱量は高々30%に過ぎない。命題2については、ウラン鉱石の採掘、精錬、濃縮、輸送、加工などの諸過程および発電所の建設や廃棄物保管のための石油利用は不可欠で、一部の電力は原発で代替できるが、大半は置き換えは不可能である。命題3については、命題2より核燃料1トンから発生する電力によって、1トンを上回る核燃料を石油なしで得ることは不可能である。露天掘りの石炭採掘では増殖率は50倍、石油については7倍とされている。こうして命題1-3は満たされないので1)の「石油置き換え説」は否定された。
2) 「エネルギー収支プラス説」
原発のために投入される石油の熱量に較べて、原発の産出する熱量のうち人間社会に有効なエンルギー量が多いときエネルギー収支はプラスであると云う。ところが原発建設からウラン採鉱・濃縮、廃棄物保管に至る全過程のデータを有するはずの原発推進部局が全データーを公開しない限り考察できないのだが、アメリカDOEの出力100万kWhのPWR型原発の例を想定したデータがある。0.2%のウラン235を含む天然ウラン鉱からスタートし、原発の耐用年数全期間の産出する電力は1600億kWh(137兆換算)、ここへ投入される石油エネルギーは36兆kcalである。したがってこの場合エネルギー収支はプラスとなり、投入に対する産出非は3.8である。そして上記の電力を得る火力発電で消費する石油は459兆kcalであるという。すると36÷459=0.08となり、原発は火力発電の13分の1程度の石油使用量であることになる
(つづく)
3)原発は石油を節約するのか (2)
「原子力発電は石油にとってかわるものである」という説を検討しよう。一口に石油代替といっても次の3つの意味がある。①石油置き換え説、②原子力のエネルギー収支プラス説、③石油有効利用説:①、②でなくても、同一エネルギー生産方式を較べると原子力の方が石油節約的だ。という3つの説を順次打破してゆこう。①、②が否定されると③は成り立たないので、ここでは①、②だけを検討する。
1) 「石油置き換え説」
それが真であるためには次の3つの命題を同時に満たすことが必要である。命題1:今日の社会における石油使用分野のすべてを原子力がまかなうことが出来るだろうか。命題2:原子力利用技術が石油なしで実行可能だろうか。命題3:石油は自らを拡大生産が可能であるが、原子力は拡大生産ができるのか。増殖能を持つのか。
命題1は容易に棄却できる。石油はプラスチック原料に利用できるが核燃料は原発にしか利用できない。飛行機や自動車の燃料は石油が中心で核燃料を利用できないし、ハイブリッドのような補完も出来ない。発電以外の石油の用途に原発は利用できない。発電方式でも原発のエネルギー熱量は高々30%に過ぎない。命題2については、ウラン鉱石の採掘、精錬、濃縮、輸送、加工などの諸過程および発電所の建設や廃棄物保管のための石油利用は不可欠で、一部の電力は原発で代替できるが、大半は置き換えは不可能である。命題3については、命題2より核燃料1トンから発生する電力によって、1トンを上回る核燃料を石油なしで得ることは不可能である。露天掘りの石炭採掘では増殖率は50倍、石油については7倍とされている。こうして命題1-3は満たされないので1)の「石油置き換え説」は否定された。
2) 「エネルギー収支プラス説」
原発のために投入される石油の熱量に較べて、原発の産出する熱量のうち人間社会に有効なエンルギー量が多いときエネルギー収支はプラスであると云う。ところが原発建設からウラン採鉱・濃縮、廃棄物保管に至る全過程のデータを有するはずの原発推進部局が全データーを公開しない限り考察できないのだが、アメリカDOEの出力100万kWhのPWR型原発の例を想定したデータがある。0.2%のウラン235を含む天然ウラン鉱からスタートし、原発の耐用年数全期間の産出する電力は1600億kWh(137兆換算)、ここへ投入される石油エネルギーは36兆kcalである。したがってこの場合エネルギー収支はプラスとなり、投入に対する産出非は3.8である。そして上記の電力を得る火力発電で消費する石油は459兆kcalであるという。すると36÷459=0.08となり、原発は火力発電の13分の1程度の石油使用量であることになる
(つづく)